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鬼人の旅路 これは君を探す物語  作者: 直江真
第三章 ヒガリヤ 剣舞祭編
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第108話 土蜘蛛の暴食

「……何を言っている?」


「オレ様もそろそろお遊びはおしまいにしようと言う事だァ…」


 土蜘蛛が呟いた言葉に理解ができなかったユージーンが聞き返す。すると、土蜘蛛は顔を上げずにある一点を見つめたまま歪んだ顔で笑う。


 その薄気味の悪さにユージーン達が汗を流していると土蜘蛛の目線の先、戦いで破片が散らばっている舞台上に何かがいる事にようやく気付いた。


「オーホッホッホ!今更気付いても遅いですねェ!!私達は此処で一旦お暇とさせて頂きます。またお会い致しましょう?」


 そこには拳程の小さな水の塊がゆらゆらと揺れて喋っている。

 その口調は先程までゼニス達と対峙して倒した筈のスライムの魔族、ハビョウだった。


 まさかの人物にユージーンやゼニス達が驚き、目を見開いていた。


「何故、テメェが、此処にいやがるっ!!」


「僕の技で消し飛んだ筈だ。どうして生きている…?」


「オーホッホッホ!貴方の技が当たる時、私の核ごと身体を分裂させて離れた所に逃したんですヨォッ!!!ざぁんね〜んでしたねェ!!!」


 倒したとばかり思っていた悔しそうな顔をする彼らをハビョウは嘲笑う。


 魔物の頃にあったスライムの特性を活かして危機を脱出したがハビョウもただでは済んでいない。


 急いで身体を分裂させた今のハビョウの力は最初の頃よりも著しく落ちいている。

 土蜘蛛の方も消耗が激しい様子から撤退を選択した様だ。


 意外にも状況を見極め、引き際を誤らない。最弱と呼ばれ続けた魔物は恐ろしく冷静だった。


(オーホッホッホ、魔王様からの命は絶対ですが…此処は撤退がいいでしょう。聖女についてはまた後日、伺うと致しましょう。精々、いつ襲われるかも分からない毎日に怯えればいい。必ずこの私がこの手で仕留めてあげましょう)


「オホッ、聖女はゆっくりと活かしたまま食べてあげますから。……あぁ、一体彼女はどんな味がするんでしょうねェ」


 ハビョウは想像する。自分の中で苦しみ、生きたまま身体を食べられる聖女の絶望した顔を思い浮かべただけで堪らない。

 残虐な想像に笑いが止まらないハビョウは水の身体をくねらせる。


 その様子に苛立ちを募らせたゼニスが吠えようとした時、ハビョウのすぐ近くにいた土蜘蛛が深いため息を吐いた。


「ハァ…………。だりぃ、折角調子がノッて来た所だったのによォ。雑魚に負けた奴がいきなりしゃしゃり出てくんなよなァ」


 片膝をついたまま、耳をほじる土蜘蛛に対してハビョウも思った所があるのか反論する。

 それをまた怠そうに土蜘蛛は聞いた。


「土蜘蛛ォ!貴方はいいから黙って私を連れて離れればいいんですよォッ!!それに私が雑魚ォ?私は魔王様から選ばれた存在です。いい加減、その臭い口を閉じなさい」


「へっ、お前見苦しいぜェ。あの雑魚共に負けた癖にオレ様に命令とかバカじゃねェの?まっいいか…今から喰われるお前に何を言われても関係ねェからな」


「はぁ?ワタクシを喰う…?何を言って……」


「逃げるなよ。大人しくオレ様の糧となれ」


 ヒョイっとハビョウの核である魔石を掴んだ土蜘蛛は未だに此方を警戒するレティシア達を見てある事実を告げた。


「オレ様のスキルがどういうものかお前達に言ってなかったよなァ?今から特別に教えてやんよ。オレ様のスキル"暴食"って奴を…」


「まさかっ、貴方っ!?そんな勝手な事をして魔王様に知られたらタダではすみませんよ。今すぐおやめなさいっ!!」


 叫ぶハビョウを無視して土蜘蛛は話を続ける。


「オレ様はなァ、仲間から()()()()と恐れられているんだぜェ。何故だと思う…?」


 土蜘蛛は拳サイズになっているハビョウを己の真っ赤な舌の上に乗せる。ハビョウが逃げない様に器用に舌で魔石を巻く。


「………っ、"疾風(アクセル)"ッ!」


 突然の仲間割れという異常な光景に目を奪われていたレティシアだったが、すぐに我に帰ると土蜘蛛へ短剣を構えて突進した。


 何か取り返しのつかない事が起きそうな嫌な予感がすると全身の毛が逆立つ。必死に足を動かして腕を伸ばす。


「アァ…やめ、ヤメロ、ヤメロォオオ!!」


「"魔石喰い(ませきぐい)"」


 ーーーガリッ、ガリッ、ゴリンッ、ブチュン。


 そんな簡素な音が鳴ると共にあれだけ叫んでいたハビョウの声が消える。ハビョウの魔石を喰った土蜘蛛にレティシアが短剣を振るう。


 …が、遅かった。


 短剣は土蜘蛛の身体に向かっていき、そのまま素通りしたのだ。

 肉を斬った感触はない。まるで手応えがなかった事に疑問を覚え、顔を上げたレティシアは驚いた。


(手応えがない…?そんなバカな…)


 レティシアが振るった剣はちゃんと土蜘蛛へと軌道を描いている。

 土蜘蛛の身体に刃が触れた瞬間、自分の身体を水に変化させて彼女の攻撃を避けたのだ。


 目の前で起こったありえない事に驚き、僅かに固まったレティシアへ土蜘蛛が拳を向ける。


「ーーーウィンドブレスッ!!」


 首を横に全力で傾けて拳をギリギリ交わした彼女は風魔法を発動して土蜘蛛から距離を取った。


 レティシアの元に駆け付け、彼女を守る様に前に立ったユージーンとゼニスは各々構えを取って土蜘蛛の動向を探る。


「これがオレ様の力、"暴食(ぼうしょく)"だ。魔石を喰うと元になった魔物の力を一時的に扱える様になる。最高に最低な力だろぅ?」


 土蜘蛛の腕が2本生えてくる。水の身体を手に入れた事でトキに切り飛ばされた腕を自分で修復したのだ。

 これで最初の頃と同じ腕の本数になってしまった。


 4本の腕を持つ土蜘蛛に苦戦を強いられた経験を持つレティシア達に緊張が走る。

 腕の感覚を確かめる様に肩を回していた土蜘蛛は唐突に動くのをやめた。



「さて遊びは終わり、此処からは本気(マジ)本気(マジ)だ」

ハビョウ

折角、敵を騙して出て来たのに土蜘蛛の暴食によって喰らわれてしまった。

無力な魔物であった頃と比べ、遥かに強い力を手に入れてしまったばかりに相手を見下す傾向が強い。


土蜘蛛

暴食という魔石を身体に取り込むと一時的にだが、その魔石の元になった魔物の力を使える様になる。

魔力が底をつき、トキとの戦いで体力まで持ってかれたが魔石を喰らってかなり余裕を取り戻した。

意外とスライムの身体は便利で気に入った。



最後まで読んでくださりありがとうございます。


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モチベーションにもなりますので、感想等もよかったら聞かせて下さい!誤字脱字も教えて頂けたら幸いです!


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