表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
谷中愛ものがたり  作者: 悠鬼由宇
1/8

第一章

東京 台東区 谷中。


上野寛永寺をはじめとする寺社仏閣に囲まれた江戸時代から続く寺町。その歴史のもたらす雰囲気は今も脈々と受け継がれ、訪れる者の心を虜にしてきている。本郷台と上野台の谷間に位置している事から、その名がついたと言われている…


二〇二二年 六月

「おう、モモちゃん、おはよう。これから学校かい? バイトかい? あー、その格好はバイトだな?」

車一台分がやっと通れそうな程の狭さの谷中銀座通り。両側には昔からの商店、飲食店、最近出来たカフェ、スイーツ屋が立ち並び、過去と現在とが渾然としていながら不思議な調和を醸し出している。

四つ角にある代々続く肉屋の若旦那が、竹岡百葉に威勢の良い声を掛けてくる。

「おはようございます、朝からとっても暑いですね、そうです、今日はこれからアルバイトです。」

恨めしそうに今日も暑くなりそうな空を眺めながら、スーツ姿の百葉が応える。

「本当に梅雨明けしたのかい、参ったなもう。おお、熱中症に気をつけてな! それと羊ちゃんによお、アレはやっぱ無理だって言っといてくんねえかなあ?」

百葉はぎくりとして、

「アレ、とは?」

若旦那は目に涙を溜め、

「今の唐揚げを値段はそのままでよお、大山地鶏の肉使えって… 絶対無理って言っといてくれや、頼むよ、あと変な口コミや保健所への通報も、勘弁してくれ… 頼むよ… マジで…」

「わ、分かりました。すぐに対応しますから。ね、大丈夫だから、ね…」

半べその若旦那を宥めつつ百葉はペコリと頭を下げ、急いで四つ角を右に曲がり駅に向かう。


あ、水筒を忘れちゃった、私としたことが… 仕方なく雑貨屋に入り、常温のペットボトルの麦茶を一つ購入する。

「はい、いつもありがとね。それにしても、早いもんだねえ、モモちゃんは大学卒業かい?」

「はい、どーも。いえいえ、まだ四年生ですよ。と言うことは、谷中にやって来てもう三年経ったんですねー。早いですよねえ。」

雑貨屋のお婆さんは目を丸くして、

「もうそんなになるんかい。で。アンタ、司法試験に合格したって、ホントかい?」

「いえいえ、短答式試験に合格しただけで、正式な合格発表は九月なんです。」

「? 大したもんだよ。さすが羊ちゃんのお姉さんだよ。うん。」

「えええ、そっち? 姉ではないんですが。」

「へへ、そうだったねえ。羊ちゃんはもう四年生になるのかい?」

「そうです。今年十歳になるんですよ。」

お婆さんは目を細め、

「そうかい。こないだあの子の勧めでこれ入れたらさ。売り上げ三割増しさ。」

ああ、スマホで電子決済できるシステム。

「来年は青色申告を手伝ってくれるってよ。あ、気をつけて行っといで。」

「…あはは。い、行ってきまーす。」


そっか。私、谷中に来てもう三年経つんだな。J R日暮里駅への道一杯に広がる階段を昇りながら、百葉はしばし暑さを忘れて三年前のことを思い出そうとした矢先。

「百葉ちゃん、お久しぶり。暑いわねえ。」

市川さんだ。今日も元気そうで何より。

「珠代ちゃんに聞いたわ、司法試験合格、おめでとう!」

百葉は嬉しそうに、

「ありがとうございます。でも、短答式試験に合格しただけで。正式な合格発表は九月なんですよ。野田先生お元気ですか?」

「元気よお、百葉ちゃんのこと自慢の教え子だって。」

「そうですか。ああそうだ、お宅新築されたんですよね?」

「そうよお、去年の末にやっとね。でも、あれから三年? あの時は本当にごめんなさいね、珠代ちゃんの紹介で折角あなたに下宿してもらおうとしてたのに…」

「私が引っ越そうとしたその日ですものね、火事で全焼しちゃったの…」

市川さんは済まなそうな表情で、

「ウチも大変だったけど。あなたも、ねえ、住む所いきなり無くなっちゃって。それでー」

百葉は含み笑いしながら、

「偶然知り合った千葉家にお世話になって…」

「そうそう、羊ちゃんはもう中学生かい?」

「いえ、まだ小四です。」

市川さんは吹き出しながら、

「あの子ね。うちの新築工事の時、しょっちゅう見にきては親方と口論していたそうよ。なんでも設計図と二ミリずれが見られるとか、注文された材質とは違うのではないか、とか。」

「…ははっ あ、私行かなきゃです、旦那さんによろしく!」

慌てて駆け出すも、狙った電車をタッチの差で逃してしまう。


毎日、これだ。

谷中に来てから、そして馴染んでからと言うもの。家から駅までの所領時間が全く読めないのである! 誰とも会わなければ七分なのに、今日は三十二分もかかってしまった…

恐るべし谷中。

そして、恐るべし、羊ちゃん…

私がこれまで会った中で最も頭が良い女の子だ。IQは150を超えているに違いない。三年前に初めて会った時の衝撃は忘れられない。まだ保育園を卒園したばかりなのに、迷子になった私を助けてくれたり火事で家を無くした私を救ってくれたり。

町の人気者で大変なコミュニケーション能力を有し、多少大人を見下す癖は見られるものの、困っている人を見過ごせずなんでも誰でも助けちゃうんだから。

それより何より。

血は繋がっていないのに、私と羊ちゃんは瓜二つなのだ! それも、羊ちゃんが大きくなるにつれ益々…

そんな彼女を実の娘? 妹? と思い私は慕っている。恐らく彼女も同様に慕ってくれている。

五歳で両親を亡くし、天涯孤独の私に三年前に出来た家族。

谷中に来て出来た家族。

そして、もう一人。

羊ちゃんのお父さん、千葉龍也さん…

最近心の中では『タツヤさん』と呼んでいるのだが、じ……

ああーー

ちょっとー

電車、待ってーーーーーーー


ホームで白昼夢に浸っていた百葉は、またしても電車を逃してしまい。その絶叫はホームに響き渡るのであった。


     *     *     *     *     *     *


台東区立 谷中台小学校 四年一組。


キーン コーン カーン コーン

「それでは社会の授業を始めます。日直の千葉さん、さっき算数の授業で使ったこの黒板、消してくださいね。」

千葉羊はサッと手を挙げる。副校長の柏先生は額にジンワリと汗を感じつつ、

「千葉さん。何でしょう?」

羊は席からスッと立ち上がる。クラスの皆の目は期待で爛々と輝く。

「柏副校長。私が去年から具申している案件について。学校側は今どの様な対応をなされているのでしょうか。議論の進捗状況をお教えください。」

柏先生は背中に冷たい汗を感じる。

「今、教育委員会から区議会に送られ… そして… 」

「成る程。それならば次回の区議会で上手く行けば予算が捻出されるのですね。承知しました。早く当校にも設置していただきたいですね、電子黒板。ああ、柏副校長、それに付随する問題として挙げられております、タブレットの配布についてですが、」

柏先生はこめかみに一筋の汗が流れ落ちる。

「ええ、電子黒板と同時に、確か…」

「都内でも渋谷区をはじめとする小中学校に既に行き渡っているのです。何故台東区には行き渡らないのでしょう。これこそ正に教育格差と言わざるを得ません。そもそも、台東区におきまして……」

キーン コーン カーン コーン

「…… よって、V R技術を利用した理科の実験の可能性を教育委員会に具申していただきたいと思います。よろしいでしょうか、柏副校長?」

教卓にうずくまりながら、柏先生は。

「…まんまと羊ちゃんにしてやられたわ。もう給食の時間じゃない。」

クラス全員がニヤリと笑いガッツポーズをとる。

「では今日、羊ちゃんが延々と話したことをノート三ページ分、書いて来てください。宿題です。明日までに!」

クラス全員がずっこけ、低い呻き声が教室を満たす。

ハンケチで汗を拭いつつ柏先生はニヤリと笑い、

「さあ。給食の時間ですよ。当番の人は手袋を忘れずにね。当番は誰? ああ、日直の千葉さんね。」

がっくりと首を落とし拳を握りしめ奥歯をギリギリと噛み締める羊。

今日も、返り討ちにあった。だがこのままでは済ませない。いつか見返してやる、いつの日か……


「やるな、カッシー。さすが副校長…」

山田修斗が悔しげに牛乳を啜る。

「さすがスマイリングアサシン。恐るべし。」

汪凛凛がコッペパンをちぎりながら悔しげに呟く。

「それにしても、ウララーはいつ学校に戻ってくるん? まだ入院してるの?」

修斗が羊に問うと、渋い顔の羊は首を振り、

「一昨日退院したって。だから来週の頭からは来んじゃね? って父が言っとった。」

「なんて言う病気だっけ?」

「虫垂炎。フツー痛くてあそこまで我慢できねーんだって。ったく、ど根性熱血オンナめ。」

修斗は笑いながら、

「さすがウララー、不死身のウララー。で、何、虫垂炎って? あー、早く学校来ないかなー。」

すると周りの机からも、

「それなー、早く松戸先生、来ないかなあー」

「あのオッパイ、早く見たいなあー」

頭が叩かれる音が二、三響く。誰かが羊に、

「それより、羊パパが先生を病院に送って行ったって、ホント?」

羊がその子を睨み付ける。その子はヒッと声を上げ硬直する。聞いてはならない事をつい口にしてしまったその子はガタガタと全身を震わせ、涙ぐみ始める。

教室が急に静まり返り、皆がゴクリと唾を飲み込む。

羊は大きな溜め息を吐きながら、

「救急車の手配と病院の手配をしただけだ、と思う。それに、」

物音一つ聞こえない。

「ウララーが病院にパンイチで運ばれた、なんてことは断じて、ない。」

男子が低く唸り声を立てる。女子は思い切り眉を顰める。

「もっと言えば。ウララーは手術に際し、下のお髭を全て剃られた、なんてことは絶対無かったらしい。間違いない。」

全員がオオオオオ、と唸り声を上げる。あの松戸麗先生が… 綺麗で元気で面倒見の良い先生が…ツルツルに剃られてしまうなんて… 想像しただけで興奮する男子と絶望する女子達。

「これで、ウララーはお嫁に行けなくなった。おい男子の誰か、早く成人してもらってやるんだ。いいな?」

数名の男子が唾を飲み込みながら頷く。俺が早く大人になってあの人を… 人生の指針を羊に示された彼らは、大いなる決意と夢と希望に大きく胸を膨らませた。


っぶねー。

ったくクソ親父! 危うくバレるとこだったじゃん!

アンタがウララーの誘いにまんまと乗っかって家に連れ込まれまして。いざ彼女が事に及ぼうとしたその瞬間、ウララーが激痛に耐えかね失神し父が蘇生処置をしつつ救急に連絡、知り合いの勤める病院に運ばれ緊急手術…

これが真実なんて言えないし。マジで女に対してワキの甘い父親だ。羊は静かに首を振る。

私の実の両親が亡くなって五年。私を独身のまま引き取って同じく五年。

防衛省陸上自衛隊本部に勤務しつつ親友夫婦の忘れ形見である自分を育ててくれていることには素直に感謝しかない。

だが。

我が家に、ももっちがいるというのに、もう同居して三年が経つ最高品質J Dがいるというのに、娘の担任に押し倒されそうになるなんて…

甘い。甘過ぎる。

忘れかけていた怒りが羊の胸に湧き上がり、今夜どんな言葉責めで父をいたぶろうか舌舐めずりする羊なのである。


それにしても。

一体、あのクソ親父とももっちは、どーなっているのか…

もう三年も同居しているというのに、そしてお互いに意識しているのは明白なのに。

娘から見て、二人はとってもとってもお似合いである。

今年三十三になる中肉中背、然しながら鍛え抜かれた鋼の筋肉を纏わせる父。幼くして両親と離れ養護施設で育ち高卒後に自衛官に。紆余曲折を経て現在市ヶ谷の陸自本部勤務。

ももっちは現在大学四年生、父と同じく養護施設で育ち、三年前東京大学文化一類すなわち法学部に合格。今月司法試験の短答式試験に合格、九月の本試験発表を待っている、才色兼備のスーパーガール。

父にとっては更に更に、ももっちは昔父が好きだった女性=私の産みの母に瓜二つ。

一体何が不満なのか、去年聞いてみたら、

「不満な、んて、あるわ、けないだ、ろう。」

それでは逆に、ももっちに父の何が不満なのか聞いてみると、

「不、満なん、てあるわ、けないじゃ、ん。」

アホか、アンタら。

とっととくっ付いて弟か妹欲しいのですが、割と真剣に。


放課後。

羊の住まうマンションで修斗と凛凛が今日出された宿題を無事に終える。

凛凛がリビングをフラッと歩み、写真立てを覗き込む。

「これって、ももっちじゃないんだよね?」

「そー。産みの母と産みの父… ん? ちょっと変か? まいっか。とりま、五年前死んだ私の実の両親。」

「そっか。うわ、お父さん、羊パパと全然似てない。」

「似てたら怖いわ。」

「タイプが全然違うー こっちのお父さんはガリ勉っぽい。」

修斗も立ち上がり、写真立てを覗き込む。

「お母さんは、ももっちソックリな。ウケるー。」

「たしか、このお父さんと羊パパが親友だったんだっけ?」

羊は勉強道具を片付けながら、

「そ。私が生まれる前からの親友。ちなみに、私が産まれる瞬間に立ち会ったらしい、このお父さんの代役で。」

「「え…? マジで?」」

「なーんか、変わった夫婦だったみたい。でも、優しくていい親だったみたい。」

凛凛が頷きつつ、

「でも。羊パパもいいパパじゃん。イケメンじゃないけどカッコよくて。真央ママと花梨ママは羊パパ狙いらしいよー」

羊は首を振りつつ吐き捨てるように、

「アホくさ。ダメダメ、こんな根性なし親父。それより、二人とも夕飯食ってくだろ? もーすぐももっち帰ってくるからー」

「やった!」

「おかずなあに?」

羊はニヤリと笑い、

「激辛四川風麻婆豆腐。明日のうんこ、ヒリヒリだぜい!」

二人は首を振り、

「「帰りまーす。じゃーねー」」


     *     *     *     *     *     *


市ヶ谷 防衛省。


「そうか。参院選の後なんだな、分かった。引き続き監視を頼む。それより千葉、羊ちゃんってもうすぐ中学生か?」

千葉龍也一等陸尉は首を振り、

「いえ、まだ小四ですよ。」

龍也の上司である香取一等陸佐はちょっと驚いて、

「あれえ、まだそんなもんか? ってことは、あの事件からまだ五年しか経ってないのか。そんなもんかなあ。」

龍也の部下である船橋絵梨花二等陸尉は、

「その事件ってえー、外務省のエリートだった市原拓海とお、人民武装隊の特殊部隊『聶隠娘』の王神美のお、悲しい悲しいお話ですよねえー。その二人があ同じ日に殺されてえー千葉っちがあ二人の娘を引き取ったあーのお話ですよねえー」

龍也は絵梨花の頭を叩きながら、あの日の爆音を思い出す。

深夜、王神美シェンメイと娘の羊が暮らすマンションに四名の中国人工作員が侵入、シェンメイの命を奪おうとするものの、特殊工作員のシェンメイと元陸上自衛隊特殊部隊に所属していた龍也が返り討ちにする。だが、最後の一人が息絶える前に手榴弾のピンを引いた。

手榴弾はあと五秒で爆発する−シェンメイとその刹那、目が合う−

 羊を頼む

 …わかった

 おい、クイロン。

 なんだシェンメイ

 大好きだったぞ

 ああ。俺もだ

龍也は寝室のドアを閉め、自分も布団を被りながら布団虫状態の羊に覆い被さる。羊の寝息が龍也の耳に木霊する。目をきつく閉じる。シェンメイとの思い出が走馬灯のように龍也の脳裏を駆け巡る−

初めて唇を重ねた時。

初めて身体を……

衝撃音がマンションを揺らす。リビングルームと、転がっている男達と、そしてシェンメイが崩壊する音が街中に響き渡るー


「いたあーい。あんまり頭叩かないでくださいよお、感じちゃうじゃあないですかあ、セクハラで訴えますよおー。」

拳を握りしめ、脳天に振り下ろす。

「いって… マジじゃないすか… それよりい、浦安大病院に入院したあ松戸麗は退院したんですよねえー、もう大丈夫なんですかあー」

何故お前が知っている! 龍也はキッとなって絵梨花を睨む。

「ええー、それは内緒ですうー、千葉っちのスマホの通信記録を探ったりしてないですうー」

してるじゃねえか! 龍也は更に頭を殴打する。

全くこの部下は… 何一つ隠し事が出来ない…

絵梨花は東京理科大卒のI T熟練者であり、かつては伝説のハッカーだったらしい。龍也の部署のみならず、この数年で部隊において必要不可欠な存在となりつつある。


羊の担任である松戸先生から連絡があったのは十日ほど前であろうか。仕事帰りにスマホが鳴り応答すると、羊のことでどうしても相談したいことがあると言う。政治家も絡んだ大ごとになりそうなので、内々に処理をする相談を、との事であった。

松戸先生の住む荒川区のアパートに向かうと、薄着姿の先生が龍也を出迎えたのでこれはマズイと思い退去しようとするも、急に腹が痛いと言い出した。

何故か上半身裸になった先生がベッドに寝転び、腹をさすって欲しいと言うので仕方なく指示に従う。その内下着一枚になった先生がこれも脱がせ下腹部全体を摩れと無謀な事を言い出すので、それは出来ないと言うと急に手を掴まれ下着の下に手を持っていかれ龍也は硬直する。

このままではヤバい、マズイと思いつつ徐々に松戸先生の思惑通りの展開となってしまい、部屋の電気が消灯し龍也が全裸になった瞬間。先生が尋常ではない悲鳴を上げ、失神してしまった。慌てた龍也は救急に連絡し、同時に幼馴染の看護師である香世に連絡、状況を伝えるとすぐに病院に連れてこいとのこと。救急車が到着し救急隊員にその旨伝えるとそのまま龍也と共に救急車は浦安大病院に向かった。

診断の結果、急性虫垂炎、即手術しないと生命に関わるとのこと。

その後手術は成功、松戸先生は病棟に移された。

「ほんっとアンタは昔から変なことに巻き込まれるよね、お祓い行った方がいいよ。」

深夜の病院の屋上でタバコを吹かしながら香世が言う。

浦安の夜景をぼんやりと眺めながら、龍也は一回頷く。

「全く。幾つになってもアンタのことほっとけないよ。」

「いや、ほっとけよ。」

「あのさ、いい加減身を固めたら? 私みたいに。」

香世は二年前、八歳年下の新米ドクターと入籍している。昨年男の子を出産し、竜也と名付けたらしい。

「香世に言われたくねーよ。てか、息子に俺と同じ名前付けるのやめろ。」

龍也と香世は同じ養護施設で育った。香世は母となるまで、龍也に秘めた想いを抱き続けていた。一方龍也は、血の繋がらない姉としか認識していなかった。

「あの子は? ほら、同居してる百葉ちゃん?」

龍也は大きく深呼吸することで溜息を誤魔化していた。


三年前に出会った時より。

日毎に彼女はシェンメイに似てくるんだよ。俺がこの世で唯一愛した女、王神美ことシェンメイに。

初めて会った時は息が止まるかと思ったわ。殺された筈のシェンメイが少し若くなって目の前に立っているのだから。住み家に困っていて、あの羊が引き取ると言い張るものだからつい自宅に住まわせてしまった。

以来。

毎朝、毎日。

彼女はシェンメイに成っていく。

ガリガリだった体の線も少しずつ女らしさを増してきて、平野だった胸は丘陵になり。小さかった臀部も女性らしさを蓄えてきて。

最近では朝見るとシェンメイにしか思えなくなっている。

この三年間、何度抱きしめようとしただろう、何度口付けようとしただろう。だが、龍也にはそれが出来ない、何故なら。

分からなかったから、俺はシェンメイに似ている彼女が好きなのか、それとも

竹岡百葉自身が好きなのか。

その答えが出ない限り、俺は彼女と結ばれてはならない。

「はーー。めんどくさ。取り敢えずさ、ヤっちゃいなよ。それで決めれば?」

香世に話した俺が馬鹿だった、そう観念し龍也は自宅に帰った。


朝方静かに玄関を開け、シャワーを浴び、部屋着に着替える。

「おはようございます、松戸先生大丈夫でしたか?」

まだ五時なのに、百葉が起き出してコーヒーを淹れてくれている。

「なんとか手術は成功。一週間くらい入院だってさ。全く人騒がせな人だよ。」

百葉はクスッと笑い、

「でも助かってよかったです。早く良くなるといいなあ。」

南向きの窓から差し込む朝日に照らされた百葉が光り輝いて見える。天から降りてきた天女にも見える。あまりの神々しさ、尊さに目が開けていられない。ああ、なんて美し……

テーブルに突っ伏して龍也は寝てしまう。百葉はその寝顔をうっとりと幸せそうに眺める。

龍也のスマホに立て続けにラインの着信音が鳴る。

百葉はその寝顔をギラギラと般若の表情で眺める……


     *     *     *     *     *     *


百葉がJ R上野駅で降りると既に九時を過ぎている。また今日も遅刻じゃん…

六月下旬だと言うのに、既に気象庁は梅雨明け宣言を出している。連日三十度越えの猛暑に百葉はうんざりしている。

空には雲一つなく、間違いなく真夏の空だ。上野駅の喧騒はそんな暑さを更に際立たせ、すれ違う人々もげっそりした表情である。

この四月から、百葉は上野に新しく出来た小さな法律事務所でアルバイトをしている。大学のゼミの富津教授の紹介で、法律事務員として週に三回ほどお手伝いをしている。

「おはようございます、遅くなり申し訳ありません…」

中年女性のパラリーガルがテーブルを拭きながら、

「おはよう、竹岡さん。今日も早いわね。感心、感心。」

いやいやいや。九分も遅刻してしまいまして申し訳なく… という言葉を飲み込み、彼女の掃除を早速手伝う。

築三十年過ぎの古いビルの四階にあり、壁も扉もボロボロ。エアコンだけは四月のオープン時に新品を設置したが、トイレや給湯器は備え付けの古いままであり、とても令和のお洒落な法律事務所とは程遠い。

「それにしても、流石東大生ね。去年の予備試験を一発合格、先月の本試験短答式試験を合格なんて。九月の合格発表が楽しみね。」

パラリーガルの旭が溜息混じりに呟く。

「私なんて、七年連続で不合格で。もう心が折れちゃって。まあ、このパラリーガルも中々やりがいあるからいいのだけれど。」

パラリーガルとは、弁護士の諸業務を補佐する人々の総称であり、事務員とはその業務内容が異なる。特別な資格は不要であり、将来司法試験合格を目指す人々が就くことが多い。

「旭さん、先生は?」

「先生って、どっちの?」

百葉がアルバイトをしている『しまだ法律事務所』には二名の弁護士が存在する。一人はこの事務所の代表である島田真琴、もう一人は真琴の大学の後輩である東金士郎。

「島田先生です。今日、御徒町飯店の田村さんと十時にお会いする予定でして。」

旭は頷きながら、

「ああ、事業継続支援金の相談ね。あそこもよく頑張っているわよねえ。しぶとい。」

百葉は苦笑いしながら、

「どこも大変ですよ。この世の中、いつまで続くんだろうなあ。」


「おはようございます。今日も一日よろしくお願いします。ところで竹岡さん田村さんの書類は十全十美かしら? 東金先生は人形町の高梨氏と接見よね、旭さん冷たいお茶を淹れてくださるかしら。」

事務所の扉がバタンと開くと同時に、所長の島田真琴が入ってくる。この人の脳内は一体どうなっているのだろう、常に二つ三つのことを同時に処理してしまう能力に、百葉は当初唖然としたものだった。

背はやや低くぽっちゃり体型だが整った顔立ちはすれ違う男性の十人に七人は振り返るだろう。今日は紺のスーツをピシッと着こなし、この古ぼけた事務所には不釣り合いな存在に戸惑う百葉である。

百葉のゼミの富津教授とは先輩後輩の仲であり、教授の方が先輩にも関わらず、

「あの人には頭が上がらないのです、竹岡さん是非手伝ってあげてください。」

いつか教授との関係を詳らかにしてみたいと思う百葉である。

歳のころは四十過ぎ。正確には四十二歳、独身。十八歳になる長男がおり、内縁の夫がなんと甲府刑務所に殺人罪で服役中である。

その話を歓迎会で打ち明けられた時。この事務所は、この所長は大丈夫だろうかと逃げ腰になったが、実務を通して島田所長の能力を知り、今では百葉の目指すべき人物像となっている。

徹底的に弱者の味方である。国選弁護人も厭わず引き受け、お金に困った人達の無料相談も随時行なっている。


書類は全て整っています、と返答しようとした瞬間。電話が鳴り旭が対応する。

「はい。はい。ちょっとお待ちくださいね。先生、田村さんからです。」

数分のやりとりの後。

「そんな訳で、我々がお店に行く事になったわ。竹岡さん準備をしてちょうだい。御徒町まではどの位かかるかしら?」

「歩いて十分です。」

「あら、そう。では九時四十八分にここを出ますから。露払いは頼むわよ竹岡さん。」

この先生は徹底した方向音痴であり、誰かが付いていないと、とんでもない所へ行ってしまう。自宅からこの事務所までも、当初は高校三年生の息子が付き添っていた程だ。

「翔くんはそろそろ期末試験ですか?」

「そうみたいね。」

「来年は、ウチの大学を?」

真琴は首を振り、

「京大に行きたいそうよ。京大生になるべく百折不撓で頑張っているみたいだけれど。そうだ、今度少し勉強見てやってくれるかしら。論文が弱いみたいなの。」

「ははは… 天下の開聖生に教えることなんてありませんって…」

そう、真琴の息子の翔は日本有数の進学校に通っているスーパーエリート高校生なのだ。恐らく明日受験しても難なく東大に合格してしまうのでは?

「いいえ。過ちは易き所になりて必ず仕る事に候、よ。」

百葉は頷きながら、

「鞠も難き所を蹴出してのち易く思へば必ず落つと侍るやらん、即ち油断大敵、って事ですね。」

真琴はニッコリと笑いながら、

「貴女。ウチの翔の側女に来ない?」

「側女かよ… 正室じゃなくて…」

旭が叫ぶ。

「お二方、既に九時五十二分ですよおー」


御徒町飯店はJ R御徒町駅から昭和通りを渡ってすぐのところにある創業四十年の古い中華料理店だ。昭和通りから一本裏通りの飲食街にあり、本格四川料理を提供するこの店は数年前から激辛ブームに乗り大繁盛していた。のだが、コロナ禍に見舞われこの二年間は資金繰りに苦労していた。

田村と言う女性オーナーも含め、中国人がスタッフ、コックを占めている。真琴の作った資料によると、田村は日本人に帰化する前は趙姫と言う名前であった。

今日初めて百葉は田村にあったのだが、その出立ちに度肝を抜かされる。

小太りで愛嬌のある顔立ちは良いのだが。見た目は五十歳過ぎだが実際の年齢は四十一歳、老け過ぎなのでは? そして蛍光ピンクと紫の柄のワンピースをダブダブに着こなしている。見るからに毒々しい。

「田村さん。こちらは私の手伝いをする竹岡です。」

百葉が引き攣った笑顔で挨拶をする。

田村は何故かポカンとした顔で百葉をジッと眺め、小さく首を振った後、

「あんた日本人か? 知り合いの上海人にそっくりなんだよ。」

「你确定吗?(本当ですか?」)

第二外国語で学んだ中国語で返答すると、田村は仰け反って大袈裟に驚きながら、早口で意味が分からない中国語を口にする。

百葉が真琴の方を見ると、真琴はお手上げだわ、と視線だけを天井に向けたのだった。


「と言うことは、もう支援金の申請は不要である、と?」

真琴が意外そうな口調で問うと、

「そうなんだよ。その話はこれでおしまいなのさ。それよりね先生、ちょっと相談をあるんだ。」

「なんでしょう。なんでもおっしゃってくださいな。お力になれれば良いのですが。」

真琴が優しい笑顔で応える。

「この話はワタシと先生とで秘密だよ。誰にも言わないよ?」

勿論です、真琴が頷く。百葉も頷く。

「先生の知り合いでさ、キノコの育てられる農家、いないかな?」

はあ? キノコ? 

真琴は一瞬呆然とするも、すぐに眉を顰めて考えるが該当する知り合いはおらず。視線を百葉に振るが、大学生の女子にそんな知り合いはいるはずもなく。

「急にどうしたのですか? もしお急ぎなら全力で探しますが。」

田村の視線が鋭くなる。

「いいや。信用できる農家がいい。口が固いが良い。もしいたら、紹介して欲しい、手数料いくらだい?」

キノコ農家の仲介料? 開業して三ヶ月の事務所にはハードルの高い価格設定であり…

取り敢えず、それとなく当たってみるのでまた連絡する、と言って真琴と百葉は飯店を出た。


「竹岡さん。農学部に知り合いは?」

「すみません。今から作りましょうか?」

「いいわ。帰ってから東金先生にも当たってみましょう。」

「はあ。それにしてもキノコ農家って? 一体なんなのでしょうね?」

「さあ。全く意味不明かつ曖昧模糊ね。」

「支援金の申請は不要と言うことは、そのキノコ栽培か何かで資金繰りするのでしょうか? 店の運転資金には困っているようですし。」

「そうね、キノコってそんなに儲かるのかしら。」

「全く分かりません。それにしても弁護士事務所ってこんなお仕事もこなすんですね。」

「普通しないわよ。ウチはまだ立ち上げて三ヶ月だから顧客集めの為に仕方なくやっているの。」

「そうですか。でも顧客は相当いるのでは?」

「…資金力のある顧客集め、よ。」

「ああ、成る程。」

「ところで事務所はまだかしら?」

「えっと、あれ… 秋葉原… あれー」

そんな百葉も、右と左を間違えてしまう級の方向音痴なのである。


     *     *     *     *     *     *


龍也は定時に仕事を切り上げ、晩飯を奢れとしつこい船橋絵梨花を振り切り、総武線と山手線を利用して帰宅した。

J R日暮里駅から谷中銀座へ向かう御殿坂は、コロナ前は外国人観光客で溢れかえっていたのだが、この二年間はめっきり人の群れが無くなっている。しかしながらこの春以降、少しずつ訪れる人々は増えて来て、今も大勢の日本人観光客とすれ違っている。

六時近くになっても蒸し暑さは変わらず、それでも地形的に坂道が多い、即ち凹凸の多い土地故に涼しげな風が常に流れており、都心よりは遥かに心地良いと龍也は感じている。

築六年のマンションのエントランスを潜り、エレベーターで四階に昇り部屋のタッチキーを解除する。

「おかえりなさーい。」

「お父さん、おかえりー」

二人の声が同時に龍也の耳に届く。この瞬間が堪らない。養護施設で育った龍也にとって家族が帰宅を出迎えてくれた記憶は無く。

「ただいま。」

噛み締めながらポツリと応える。

羊がリビングから叫ぶように、

「BA5がそろそろ出て来てるからー すぐにお風呂入ってよー」

分かった、と叫び返すと百葉がやってきて、満面の笑顔で

「お疲れ様でした、鞄預かりますね。」

やや疲れ気味の龍也は百葉の笑顔を見て一瞬で生気が戻り、

「ありがと。」

と言って鞄を渡す。その際に指と指が少し触れ、

………

二人は真っ赤になりその場に硬直する。

リビングから硬化した二人を眺めている羊は、一人心の中で燃え上がる。

「いけ! どっちか、そのまま押し倒せ! 剥ぎ取れ、むしり取れ!」


龍也が風呂から上がると、すっかり夕食の準備は整っている。今夜のおかずはスズキのバター焼き、揚げ出し豆腐、ほうれん草の胡麻和え、味噌汁。

「へえー、このスズキはスーパーで買ったの?」

「今日はアルバイトで上野に行っていましたので、アメ横で買いました。」

「アメ横はすごい人だったろう?」

「そうですね、最近グッと人が増えた気がします。」

羊は大きな溜め息を吐きながら味噌汁を音を立てて飲む。

「何だよ?」

「何?」

味噌汁をゴクリと飲み込んで、

「あのさ。三年経つよね? 固い! 二人とも固すぎる! ったくスパイファミリーかっつーの。仮面夫婦かっつーの!」

あ、失言。夫婦って言っちゃった… あららら…

羊の失言により、龍也と百葉は顔面石化かつ赤化状態となり、天使が食卓を何往復も宙を舞う有様となってしまう。

その静寂を引き戻す程の人間力が不足した龍也と百葉は救いを求めるが如く羊に視線を送る。

「ハアー。それで? 父さん仕事は? また船橋絵梨花に絡まれてるんじゃないの?」

百葉が箸を落とす。あっちゃー、また失言。二人の前で父のオンナ関係は禁物だっつーの。

「…そんな、こと、はな、い。仕事も順調だ。」

箸を拾う百葉の顔が真っ白だ。やば。

「で? ももっちは? バ先どーよ?」

ば先? ばさき? 馬咲? 戸惑う二人に、

「バイト先! こないだ教えたじゃん!」

なんで小四がそんな言葉知ってるのよ、とは口に出せず百葉は気を取り直し、

「そうそう、今日おかしな依頼を受けたんです。あ、これ守秘義務なので、そこはー」

羊は顔色が変わり、嬉々として

「おっけ、おっけ。誰にも言わねーし。で? 何々?」

最近、羊の言葉遣いがドン底に落ちている… 龍也は少し暗い表情で注意しようかどうか躊躇していると、話は進んでいく…


「キノコ栽培? へえーーーーー」

案の定、羊が食い付いてくる。

「キノコの人工栽培って十七世紀のフランスでマッシュルームを人工栽培したのが初めだったんだよ。種菌を廃温床に植え付けて子実体の発生を促進するやり方ね。日本の江戸時代のシイタケ栽培はそれとは違って種菌を接種するやり方でなく……」

羊のキノコ栽培講座は意外に面白く、二人はのめり込むように聞き入ったものだった。

「……よって粗利益率を考えるならばエノキダケやブナシメジがお勧めかな。生シイタケは相当コスパが悪いのでお勧めしないかも。ちなみに私は白マイタケが大好きだよん。」

百葉は食器を洗いながらクスリと笑う。龍也は食後のお茶を啜りながら、

「それにしても、よくそんなこと知っているな。」

「当然でしょ、薄給の父を将来支えねばならないんだから。」

百葉は皿をシンクに落っことし、龍也はお茶を吹き出してしまう。

「羊ちゃん… 大丈夫よ、私秋には絶対司法試験合格して、立派な弁護士になるからー」

羊はゆっくりと首を振り、

「AI普及により今後無くなるであろう職業。それはー?」

「ええええ? マジで?」

「そうマジで。ったくももっちは浅はかなんだから。司法試験なんかにやめてブナシメジ栽培研修に行った方が儲かるっつーの。」

百葉は割と真剣に落ち込む。

「父さんも。ドローン普及して無人兵器が増えてくんだから。ロボット歩兵ももうすぐ実用化されるんじゃなくて? だから防衛省辞めてももっちと二人でエノキダケ農家目指しなよ、千葉の山奥でさ。」

龍也は、ももっちと二人で、に激しく動揺してしまい、だが即座にマインドリセットし、百葉と二人で種菌を刷毛で塗る様を想像し、ニヤケ顔になる。

谷中イチのコミュニケーション能力を誇る羊は、アーニャ・フォージャーに匹敵する程に父の心が読めてしまい、呆れると共にこれもまた良し、と近い将来の弟乃至妹を思い浮かべ阿呆ヅラを晒すのである。

そんな父娘をほっこりとした様子で眺める百葉なのである。


「千葉さん、キノコ農家にお知り合いなんていませんよね?」

食後のルイボスティーを啜りながら百葉が問うと、

「キノコ農家… ちょっと待って、アビーに聞いてみるわ。」

アビーとは龍也が養護施設でお世話になった保護司だ。高卒で自衛官になるために施設を出てからも色々と相談に乗ってもらっている。数年前には幼い羊を引き取る際にじっくりと話を聞き、父子家庭の良き相談役として今でも懇意にしているのだ。

「そっか。いねーか、キノコ農家になった卒園生は。うん、分かった。サンキュ… え? 元気だよ、上手くやってるって、ええ? バカ、知らねーよ、まだだよ、ウッセーな。じゃあな!」

電話を切る龍也に、

「父さん、口悪いね、昔の不良みたい。もうアラサーなんだから言葉遣い考え直した方がいいよ、マジで。」

「お、お、お前に!」

呼吸困難になる龍也。

「ありがとうございます。わざわざ調べてくださって。私、大学で農学部の人を探して聞いてみます。」

羊は目をキラリとさせ、

「ほおー。それは楽しみだわー。農学部のイケメン東大生。地方の田舎の大農家の御曹司を希望しまーす、それでももっちがそこに嫁げば、一生米と野菜にはこまらn… いったー、こら父さん、暴力はいけませんよ、ぜったい!」

龍也が不機嫌そうに新聞の夕刊を読み始める。

「だ、大丈夫ですって。ももっちがそんな素敵な農学部生に声なんてかけられませんって。だって四年生になるのに男子生徒の友人ゼロなのですから。いやーそれにしてもももっちのコミュ力の低さには引くわー、未だにラインのフレンド、全員女性ってウケるわ、あ、父さんは男性にカウントしとくか。」


百葉は食器の片付けを終え、

「羊ちゃん、そろそろ中学受験に備えて塾とか考えない? 私の同級生の子達はみんな小四くらいから進学塾に行っていたって。」

ご機嫌だった羊は父同様不機嫌な面持ちとなる。

「えーーー、受験? いーわ私は。だってウチビンボーだし。」

龍也が夕刊を落っことす。

「そ、それくらいの蓄えはあるわ! 真剣に考えてみなさい。公立の中学行ったら、また三年前の悲劇の繰り返しだぜ。」

三年前。谷中台小学校の一年生になった羊は、既に掛け算割り算を駆使し普通に新聞を読み社会情勢を父や百葉と語り合える頭脳だったが故、授業の余りの程度の低さに学級崩壊を引き起こしてしまう程のストレスを抱えたものだった。

羊は気難しい表情で、

「まあ、うん、考えておくわ。」

と珍しく言葉少なく俯く。

百葉と龍也は顔を見合わせ、さてどうしたものかとそれぞれに考えるのであった。


     *     *     *     *     *     *


翌朝。

龍也と羊を見送り、一通りの家事を終え、百葉は二限目の授業に出席すべくマンションを出る。

朝から雲一つない快晴で、気温は既に三十度に達している。周りに高い建物がないので、直射日光が残酷なほどに谷中の路地を照りつける中、少し緊張気味の百葉は駅とは反対方向に歩き出す。

谷中銀座を通らないので、知り合いに捕まることはなく三叉路を通り過ぎる。ふと左手の谷中霊園を眺めると、既に多くの墓参する人々が見受けられる。この霊園は明治時代以来の多くの有名人が眠っており、そのお墓を目当ての観光客らしき人々もゆるりと歩いている。

カヤバ珈琲の角をを右折して、都道三一九号線、通称言問通りに入る。この辺りも高い建物はなく道の両側には寺社が連なっており、昔ながらの風情を残しているので歩いていて楽しい。

根津一丁目の交差点を渡ると、東京大学の本郷キャンパスが近づいてくる。左手に工学部キャンパスが見えてくる。工学部には知り合いが一人もいないな、百葉は少し寂しい気持ちとなる。


入学以来、千葉家に居候している百葉は大学のサークル活動や部活動に参加することはなく、授業が終わるとすぐに帰宅し、夕飯の支度や家事に勤しんでいる。

休日も羊と出かけることが多く、大学内に友人と呼べるほどの存在は殆どいない。

龍也からは、もっと積極的に友人を作っていくべきだとアドバイスを受けるが、友人を作っても結局一緒に過ごせる時間が少ないので、半ば諦めているのが現状だ。

だが。

四年生になり、初めて。百葉は知り合いを作らねばならない。

二限の授業を終えた後。弁当を片手に百葉は農学部キャンパスに向かう。法学部のキャンパスからは工学部を通り抜け、言問通りにかかる歩道橋を渡ればすぐであり、さすがの百葉も迷うことなく辿り着く。

昼休み時間帯なので、多くの学生が歩いている。同じ農学部生でも出来れば四年生か大学院生がいいと思い物色すると、丁度そんな感じの五名ほどの集団が三号館前に屯していたので早速声をかける。

意外に緊張することもなく、百葉は普通な感じで、

「あの、農学部の生徒さんですよね?」

「「「「「………」」」」」

何故か五人組の男子生徒は集団で無言となる。そして目が大きく見開かれ、口は半ば開いたまま変な呻き声をあげている。

「あの、つかぬことを伺いますが、皆さんの中でキノコの栽培に関して研究されている方はいらっしゃいませんか?」

もはや五人組はパニック状態となり、何故か頭を小さく何度も下げつつスイマセン、と何度も呟きながら百葉の前から去って行った。

いきなり本題をぶつけたのが不味かったのか、そう思い百葉は別の集団を探し出す。


「おい… 誰だよ、今の子…」

「絶対、モニタリングだろ! 俺らにドッキリを仕掛けようという…」

「アイドル? タレント?」

「新人なのか? おい牧原、聞いてこいよ」

「おま、お前行けよ、何ブるってんだよ、」

「無理無理無理… まあ、東大生では無いな。あんな可愛い子がこの大学にいる訳がない。」

「だな。」

「だな。」

「そして二度と俺たちに声をかけることも、無い…」

「だ、な…」

「だ・な…」

百葉を遠くから振り返り、己らの意気地なしを呪う五人組なのである。


「あの、農学部の生徒さんですよね?」

「ヒッ」

「あのー、農学部の…」

「ああっ」

「あのお、農学…」

「うわあーーー」

気が付くと百葉の周囲には誰一人居なくなっている。大勢の学生は散り散りになり、それでも何名かは遠巻きに百葉を眺めている構図が実にシュールな青春群像を描き出している。

時計を見ると三限目が近付いている。百葉は知り合い作りを断念し、法学部キャンパスに戻って行った。


「おい。後を追うんだ。」

「無理だ。通報されよう。」

「誰かドローンを持っていないのか?」

「よし。追跡に成功したものに一万円を進呈しよう、誰ぞ?」

皆は虚しく首を振る。

「さ、三限目だ。」

「だね。」

「だね。」

「行く、か。」

東大農学部キャンパスの炎天下のパニックは徐々に収束していった。


「何それ、バカウケるー、きゃはははは」

羊は百葉の話に腹を抱えて大爆笑だ。

「ももっちを超越したコミュ障軍団! 逆に会ってみたいわ。明日一緒に行こうよ。」

「学校あるでしょ」

「いや。社会科見学だと届けるから大丈夫。」

「な筈ないでしょ。松戸先生に叱られるの私なんだよ。」

「けっ 根性なし。」

「は、ハアー? なんで私が根性無しなのよ、今日死ぬほど根性出したよ。出したのに… まさかこんなに嫌われるとは… ねえ羊ちゃん、何がいけなかったのかなあ、服装? 言葉? 髪型?」

「ズバリ、顔だね。顔!」

「ええええ… そんなにダメな顔なの私… ショックだよ…」

「その男を見下したような表情が全然ダメ! ツンデレ感がパないし。まずメガネ外そうか、そんでもっと口角をあげて、ニコッと笑う、ああ、そうそうそんな感じ。イイねえ、パシャっ ほら。こんな風な笑顔ならさ、みんなもっと近づいてくると思うよ。」

羊が撮った写メを拝見しながら百葉は真剣に頷く。

「あと、話し方。これまたツンデレなんだよなあ。もっと女の子っぽくさ、あのおー、すみませーん、わたしいー、キノコに詳しい方をー、探しているんですうー。さ、やってみて!」

百葉は脇汗を感じながら、

「あ、あのおー、すみませーん、わたくしー、キノコに詳しい方を、探しているのでえーす…」

羊は強ばった顔で、

「良い! 大変よろしゅうございます。その言葉がけなら間違いなし! 明日はきっと大勢の農学生と懇親できるに違いなし! 頑張れももっち… 」

「うん、わかった。やってみるよ。あ、夕ご飯作るねー」

キッチンに駆け込む百葉に背を向け、腹筋を抑え爆笑する羊なのである。


翌日。

二限目を終え、農学部キャンパスに意気揚々と向かう。羊のアドバイスに従いメガネではなく使い捨てコンタクトレンズにした。今日こそは絶対に知り合いを作らねば。午後は授業がないので事務所にアルバイトである、それまでに絶対…

だが。

「あのおー、わたしいー…」

「ひいーーー」

「あのおー、すみませーん、わたs…」

「ああああーーー」

「あのおー、」

「ムリムリムリ」

昨日より惨劇であった。

どうしよう。こんなことでは私、立派な弁護士にはなれないかも。知らない人に声をかけることさえちゃんと出来ないなんて…

割と真剣にショックを受け思い悩んでいるとー

「あ、あの…」

百葉はハッと顔を上げ、相手の顔を見る。あ、この人、昨日最初に声を掛けた五人組の…

「女優さんですか? タレントさんですか?」

「はあ?」

「これって、モニタリングでしょ? カメラとか何処にあるんですか?」

もう一人の学生が辺りをキョロキョロしながら問う。

「モニタリング?」

「これ、ドッキリでしょ? 新人女優が東大生に声をかけて反応を楽しむって奴。」

百葉は唖然とし、大きく首を何度も振りながら、

「ち、違うんです! 私、法学部四年の竹岡です。ただの学生です。本当です!」

五人組は百葉を取り囲み、そんな筈は無い、と言い張る。仕方なく百葉は学生証を示し彼らはようやく百葉が同学生であることを認識し、

「マジか…」

「こんな美少女が東大に…」

「ありえん。これはきっと異世界転生された…」

「いや、タイムリープに違いない、五十年後の世界から…」

「それにしても、法学部がこんな上玉を隠していたとは…」

五人組の更に外側に大きな輪ができ、気が付くと百葉は何十名もの農学生に取り囲まれている。


「…と言う訳なんです。どなたか、キノコ栽培に精通している方はいらっしゃいませんか? 若しくは知り合いにいらっしゃいませんか?」

百葉の口から出た精通を初精の意と捉えた学生多数が真っ赤な顔でしゃがみ込む。

そんな中で、真顔の学生が、

「キノコは菌類だから、大学院の森林科学研究室とかじゃないか?」

「ああ、森林植物学専攻室、とかね。」

「それなら、俺のゼミの先輩で院に行った人に聞いてみようか?」

一人のちょっとイケメン風な男子が、

「あ、俺その専攻室だけど。」

おおおお、とどよめきの声がキャンパスを満たす。

「同級生にいるよ、キノコにメッチャ詳しい奴。」

何人がはハッとして、

「あの、それって…」

「その人って、紀野さんですか?」

「ああ、キノコくんか。」

半数の生徒が笑い出す。

「ダメだよ、ちゃんとさんを付けないと。」

「それな! キノコくんさん、な。」

「あの人はキノコだわ。うん、間違いない。」

「キャンパス内のキノコ、チョー観察してた人な、いたいた。」

「そうそう、身体デカいのにその辺でうずくまって、ずっとキノコ観察しt… って、ほら、あそこにいるじゃん」

その男子が指差す彼方に。

塀にしゃがみ込んでいる男子が、いる。

イケメン風が頷きながら、

「そうそう。アイツがこの大学一の、いや日本一のキノコ博士、紀野だよ。」

百葉は軽くガッツポーズをする。


「おーい紀野。お前にお客さんだよ。」

イケメン風院生の横山が百葉に紀野を紹介してくれる。

返事、なし。

「おーい。紀野?」

動作、なし。

「あ。ツキヨタケ発見。」

「何処!」

その大柄な巨体からは想像できない素早さでこちらを振り向く。

肩までの長いボサボサの髪、黒縁の度の強い眼鏡。無精髭に覆われた男が横山を見上げる。

「こちら、法学部の竹岡さん。お前に話があるってさ。」

メガネ越しの鋭い目が百葉を捉える。暫くじっと百葉を眺め、まずツキヨタケではないことを認識しがっかりした表情となる。人間の若い女子だと分かり軽い動揺した目となり、百葉の顔形をしっかりと脳が認知した瞬間。

紀野の顔は赤く染まり、持っていたピンセットを地面に落とす。言葉は何も出ず、小さな呻き声が漏れるのみである。

「あの、初めまして。私、竹岡百葉と申します。実はちょっとキノコの栽培について伺いたいことがあるのですが。」

紀野の黒目が反転し、白眼となる。やがて呼吸は静かに止まり、胸の鼓動も程なく停止し…


     *     *     *     *     *     *


「心肺停止からホントにA E Dで蘇生したの? ちょっと信じられないわあ。」

呆れ顔のパラリーガル、旭真知がお茶を啜りながら呟く。

「近くの学部にあったんですよ。それでなんとか蘇生して… ああ、ビックリしました…」

島田所長は書類を眺めながら、

「それで? そのキノコ博士から何か聞き出せたのかしら?」

百葉はかぶりをふり、

「残念ながらそんな状態ではなかったので。一応連絡先は教えてもらいました。」

「そう。正に人間万事塞翁が馬、ね。兎に角彼に東京近辺のキノコ栽培農家に心当たりないか聞き出しておいて頂戴。」

「『淮南子』もビックリですね。承知しました。後でメッセージ入れてみます。」

「それと。これから田村さんからの要請で面会に行きます。貴女も同行して頂戴。」

「分かりました。キノコの話でしょうかね?」

「焦眉の急でなければ良いのだけれど。それと貴女、今日迷子になったら馘ですので。」

「…緊褌一番で同行させていただきます…」

どの口が言うのかしら。真知はプッと吹き出すのであった。


開店が五時からと言うことであり、島田真琴と百葉は四時過ぎに御徒町飯店の暖簾をくぐった。

「先生、急にお呼び出してすまないね。」

「構いませんわ。それでお話って?」

オーナーの田村は冷たい烏龍茶を二つ用意しテーブルの上に乱暴に置く。

「こないだの話、どうなった? いい農家を見つかったのかい?」

真琴が百葉をチラリと見る。百葉は軽く頷き、

「大学の農学部院生に話を通す予定となっています。ただもう少し詳しいお話を伺わないとこちらも話を進められません。」

田村はさもありなんと頷きながら、

「そうかい。それじゃあ少し話をしておこうかね。私の中国の実家の話を知っているかい?」

二人はかぶりをふる。

「私はね、中国の四川省のチェンドゥーで生まれ育ったんだよ。」

「…成都、ですね。」

「ああ、日本語ではそう言うね。その実家からさ、こんな物を送られてきたのだよ。」

田村はそう言うと立ち上がり、厨房の奥に入っていった。そして、タッパーを抱えて戻ってきた。

「この店の貧乏になった事を父に話したらさ、これを送ってきたのさ。大変貴重なキノコなので大切に育てれば大金になるってね。それでさ。」

田村がタッパーを机の上に置き、

「これを大事に育てて増やして欲しいんだよ。これはね、『リンチー』って言うのさ。父が実家で大事に育てていたのを思い出すよ。」

二人は意味が分からず、紙にリンチーを漢字で書いてもらう。

「霊芝、ですか。所長、ご存じですか?」

「マンネンタケ、と呼ばれる漢方薬の素材、ね。でもね田村さん、今日本でも霊芝は多く栽培されているからそれ程お金になるとは思えないのだけれど。」

田村は大きく首を振り、

「これはね、そんな普通の霊芝でもないんだってよ。父が四川省の山奥で見つけ出した、新種のリンチーなのだってよ。金芝って言うらしい。だからお金になるよ。絶対。」

「そうなのですか。ちなみにこの霊芝は何に効くのですか?」

田村の目が気味悪く鈍く光る。

「これはね、父が言うにね、コロナに良く効くのだそうだよ。」

二人は仰天してタッパーを見つめる。

「これを煎じて飲むね、コロナなんて一発で治るんだってよ。母の従兄弟のガンをすぐに治ったらしいよ。どうだい、大したキノコだろう。」

「それが… 本当ならば…」

「大変な価値の… キノコではないかと…」

「だろう? だから、守秘義務さ。いいかい、絶対みんなで分からないように育てるんだよ。それで大きくなったら私を教えるんだ。売り捌くのは私に任せな。アンタらには上がりの二割、いや三割あげるからさ。」


店を出た後、二人は立ち止まり暫し呆然とする。

「貴女、霊芝ってそれ程の価値があるのかしら?」

「えーと、ふむ。霊芝には黒芝、青芝、白芝などがあるみたいです。六角霊芝と言う種類の国産の霊芝のティーバッグだと… 二十五パックで二万円!」

真琴の目の色が金色に変わる。

「これがもし新種の金芝でしたら、一体どれ程の価値が…」

ゴクリと唾を飲み込む音がする。百葉は事の大きさに身体が震え出すのを感じる。

「その大学院生に… 名前は何さんだったかしら?」

「紀野さん、です。」

「そう。紀野さんにすぐに連絡を取りなさい。そして明日にでも事務所に来てもらいなさい。報酬は時給換算で三千円と伝えなさい。」

ええええっ 私の三倍なのですが…

「貴女に霊芝程の価値があるならば相応に払いますが何か?」

「いえ… 事務所に戻ったら早速メッセージを送ります。」

「そうね、善は急げ、よ。但し、急功近利は駄目だからね。」

「私には… 倒懸之急としか思えません…」

「そうね、短兵急接の念は禁じ得ないわね。ところで貴女。」

「なんでしょう所長。」

「私の事務所は日本橋にあったのかしら?」

「あ。」

江戸橋を渡りながら百葉の背中に冷たい汗が流れ落ちた。


必ず近日中に紀野さんを事務所に連れて来るのなら、との条件付きでクビを逃れた百葉は事務所の自分のデスクにて早速メッセージを送る。

『先程は大変失礼いたしました。法学部法学科四年生の竹岡百葉です。その後お加減は如何でしょうか。実は紀野さんに折言ってご相談がございます。ご研究がお忙しいとは存じますが、近日中にお時間を作っていただけないでしょうか。私は上野にあるしまだ法律事務所でアルバイトをしておりまして、ある案件で紀野さんのお力添えが必要なのです。お忙しい中大変恐縮ですが、ご返信をお待ち申し上げます。』

紀野さんは蘇生後東大病院に運ばれ、今も入院しているだろう。だが横山さんの話ではすぐに退院できる容体らしい。

きっと明日か明後日には返信が来るだろう、もし来なければ来週にでも研究室を訪ねよう。そう決めて、時計を見ると五時を過ぎている。

「それではお先に失礼いたします。」

「お疲れ様―、次は明後日だっけ?」

「はい。」

「彼から連絡があったら、すぐに私に知らせなさい。いいわね?」

百葉は苦笑いしながら、

「分かりました。クビがかかっていますので。絶対に。」

そう言って扉を出ようとした時。

プルッ プルッ プルッ

百葉のスマホが着信を告げた。


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ