LOST METAシリーズ「LOST METAVERSE≪失堕の箱庭≫」設定・用語集(魔導篇)
■魔導関連
意力
万物がそれぞれ有する「思う力」。思念や意志そのものが事象を動かす(変化させる)力である。自我、または自己の存在そのものとも言える。意力が消耗すると、自己の実在性および内と外との区別が曖昧になり、人としての儀礼伝送を喪失する。遂には、自ら他者を認識することはできなくなり、反対に人々の認識からも外れてしまう。
魔導士は意力を消耗しながら魔導を行うため、魔素を吸収することで意力の消耗を補う必要がある。ゲーム版では、要するにMPのことを指す。
儀礼伝送
万物と対話するために、相互が歩み寄る手順を定めた儀礼的な様式のことであり、コミュニケーションチャネルでもある。人が魔導を行う際には、詠唱(身振り手振り舞踊)、呪文(発話発声発音)といった人間にとって自己の身体を用いて実践可能な儀礼伝送をもって実践される。儀礼伝送を通じて、魔導回路から導き出した形而を意力に乗せて送受信することで、魔術が具現化する。儀礼伝送は、魔導士自身が研究と実践を通じて、経験的に身につけるものであるため、自身と一体にして不可分である。
ゲーム版の文脈では、戦闘で習得するスキルのようなものである。エネミーは、同一種なら儀礼伝送は共通であり、種がことなっていても目が合致していると、儀礼伝送の解析が進みやすい。言語における語族のイメージに近いものがある。
導脈
魔導の行使によって具現化される一連の行為の様態。魔法の「個性」または「揺れ」のこと。同一の魔導行使であっても、術者や個別の施行によって実現されるさまが異なるのは、この導脈の差による。魔導装具により、他者と共通の導脈を獲得したり、補正したりすることが可能である。
形而
万物は人の思念、即ち意力が定義するという概念であり思想、または哲学。儀礼伝送が自然言語であった場合、それは即ち「言霊」ということもできる。万物のみならず、意力をもオブジェクトとして捉えると、形而は意力に対して特定の意味付けを行う付加情報であると言い換えられる。魔導士とは、形而により一定の方向や制約を加えた自己の形而を、自分自身から切り離し、万物の存在に影響を与えることができる者と定義できる。
形而の設計は、魔導士が魔導士たる基本技能であり、設計の工夫を行い、独自の魔導を体現することが即ち魔導研究である。
魔導回路
魔導の実行プロセスを記録した、いわば魔術の実行手順書。二次元平面に記述されるとともに深度にも意味付け可能であるため、情報量は膨大なものがある。新らたに発見、実践法が解明された魔術は、この魔導回路に固定した状態で流通する。継承の螺旋の外壁もまた、この魔導回路であることが観測から分かってはいるが、その内容については解明されていない。魔術を記録したものではなく、不知のものからのメッセージ、あるいは失われた歴史の記録であるという説もある。
構造体
万物のうち、安定してそこに存在するタイプの一群のこと。失堕の箱庭世界の人類は、万物をそれぞれのあるがままに捉える(実存ではなく「実在主義」を取る)ため、構成要素という概念はない。よって有機物、無機物といった、炭素の含有に注目した分別の概念も存在しない。人間その他の生命体も構造体も、ただ物質が混ざり合ってそこに存在するというだけの事象に過ぎない。
物理系の魔導は、形而による事象への介入より、すでに安定して存在している構造体の様態の観測を重視する。儀礼伝送を通じて形而と意力を送り、構造体と対話することは精神系同様に重要だが、それは事実改変を目的としたものではなく、構造体に保存されている意力— —「記憶」を読み出すことを目的とする。空中浮遊荘園の航行に必要な「記憶」というエネルギーを取り出すのも物理系魔導によるものである。
変異体
万物のうち、常態と異なる容態を持つタイプの一群のこと。イレギュラーであるため、その存在は希少。(少なくとも現在の)人類によって製造不可能な忘却の秘術の残滓と考えられているオーバーテクノロジーの産物。
同位体
魔導世界で単に同位体といえば、魔導同位体のことを指す。科学文明のキーワードを継承しているが、本来意味するところの元素の中性子数に注目した区分ではない。魔導文脈の用法では、たとえば、「魔素は意力の同位体である」のように使用される。
客体
漠然と対象を指す抽象概念。存在と同義だが、知覚しているかしていないかは問わない。知覚していれば実在であるが、知覚していないからといって、虚構であるとは限らない。文脈により何を指しているか異なる場合がある。特にに空間にそのまま存在する物体を指して客体と呼称することが多いが、文脈によって形質を捉えて具体的に修飾し、より明確にしなければならないこともある(例:移動体 / 動的 / 静的オブジェクト)
魔結晶
継承の螺旋由来の緋色の光を帯びた黒色の半透明結晶体。人類と魔結晶間の儀礼伝送の発見により、漂流しているにすぎなかった空中浮遊荘園の自律航行が(制約はあるにせよ)可能となり、大航海時代さながら、人類同士の交易が飛躍的に増大した。魔導文明には、材料工学的な見地からの研究の概念は存在しないため、その構成要素は謎だが、魔導史考証学的には、生物由来の化石の一種ではないかと推測されている。
ゲーム的には「燃料」が格納されている「ドラム缶」(またはコンテナ)。量的に管理する魔素をパッケージングして、客体として流通しやすくするためのレトリックにすぎない。
魔素
魔導を駆動するために必要な「記憶」のエネルギー。根源的には万物に内在する意力に由来し、魔結晶内に定着、保存することで安定する。魔導士が自己の消耗した意力を回復するのに用いるほか、あらゆる魔導装置を駆動する原動力として活用されている。
ゲーム的には「燃料」の役割を果たす、一般的なゲームにおけるMP回復ポーションに相当する消耗品アイテムの液体に相当し、その容器が魔結晶。さまざまな魔導装置を駆動させるために必要なリソースである。
純粋魔導装具
はじまりから、それらはあるがままに存在していたとされる魔導装具。性能が劣化することも、損耗することもない。所有するものが少なく希少だとしても、魔導文明社会に実際に現物が存在するのだから、実在を疑う余地はなく、富と名声の証として、またその価値の高さから、有力領主を中心に収集されている。
純粋魔導装具を所有していることは、一端の荘園領主の証であり、家門のステータスの象徴でもある。