5話:新生活
あの苛立つ対面から数週間後。
母は純白ドレスに包まれ晴れて社長婦人となった。
結婚式は馬鹿な位盛大だった。
お客は何百人と呼ばれお偉いさんばかり。
テレビで見たことのある有名人も何人か見かけた。
私は新郎側の親族席に座っていた。
何故かって?お母さんの親族はいないから。
まぁ本当は居るらしいけど……来るはずがない。
お母さんはお父さんと駆け落ちして結婚したらしく。
その時に縁を切ったって話。
一人可哀想だと言うのでこちらで座っているというわけだ。
見知らない大人に囲まれて
おいしい料理ものどを通らない。
にっこり幸せそうな母の笑顔を眺めていた。
「美郷ちゃん?」
「へ、なに……何ですか?」
ぼーっとしてたら義兄である貴仁が話しかけてきた。
……そーいえば、隣だった事すっかり忘れてた。
「浮かない顔してたからさ……大丈夫?」
「……別に平気です」
「あらら、そっけないのー」
「……」
「素直に『寂しい』って言えば可愛げがあるのに」
「別に…無くていいですよ」
「生意気なことで」
初対面で何となく分かっていた。
こいつがいい子ぶっていた事。
まぁ胡散臭かったし。
けど、ここまで面倒な相手だと思わなかった。
最近、どんなにそっけなくしても妙に絡んでくる。
どーいうこと?
「ま、少なくても俺は嬉しいかなー♪
そこそこ綺麗な義理母様を迎えられて」
「あーそう!」
「ただ妹がびみょーだけど」
「悪かったね」
「ま、そこは妥協するけどね」
いちいち腹立つ奴……!!
そんな気に食わないんだったら話しかけなきゃ良いのに。
「でも、暇つぶし位にはなるかな♪」
やっぱ腹立つ!!!
* * * * * * * *
そんな私にとって最悪の結婚式だった。
怒りが爆発しなかったのが奇跡とも言える。
私を玩具としてしか見てない義理兄は最低野郎だった。
その後、あのボロアパートから豪邸に引っ越した。
かなりの昇格である。
場所は高級住宅地であり、その中でも一際目立って馬鹿デカい。
庭付きプール噴水石造と……本当にここは日本なのかが疑われる。
家もそれはそれは広い。4人で住むのはもったいない位。
メイドや執事の部屋まで用意されてる位。それでも部屋が余っている。
「貴彦さんこれは……!!」
お母さんも口をあんぐり。
今まで自分が住んでいた場所とは天と地よりも差がある。
「これから夏美と暮らせると思ったら嬉しくてね
つい買ってしまったよ!」
「まぁ貴彦さんんたら」
アホかーッ!!
馬鹿っぷるも大概にしておけよ!と言う話だ。
昔のお母さんだったら「もったいない!」の一括だったろう。
テレビで"恋は盲目"って言うけど本当らしい。
ラブラブなのは結構だが節度は守って欲しいと思う。
荷物……と言うか殆ど新品物なのだが
物一式は運び込まれていたようで
貴彦さんに私の部屋の場所を案内される。
「ここが美郷ちゃんの部屋だよ」
「……わぁー!?」
そこはまるでお姫様の部屋だった……。
ピンクをメインに壁紙も家具もそろっていて
何よりベットがアレである、天井がついてるアレ!
本当に実在するのかと、喜びとはまた違った意味で感動する。
「ここを好きに使って良いからね」
「あ、ありがとうございます……えと、貴彦さん」
「こーら、美郷!もうお父さんでしょ?」
どこからともなくやってきたお母さんは口を挟む。
「あ、うん……そーだった」
お母さんも人が変わったように妙に明るい。
なんだか別人みたいだ。
「いーんだよ、無理に呼ばなくて」
「あ、でも……」
「そう呼びたくなったらで良い」
「ありがとう……ございます」
「うん」
頷いて優しく頭をなで優しく微笑む貴彦さん。
やっぱりお母さんが選んだだけはあって優しい良い人!
なんだか申し訳なくなる。
この人の事を本当に……お父さんと呼べる日が来るのかな?
そんな感傷に浸っていると隣の部屋から出てきたのは
あの憎たらしい義兄貴仁。
「美郷ちゃん隣部屋なんだね
よろしく!」
「えぇ!?
あ、うん……よろしく」
部屋が隣だって!?
うわー最悪なんですけど……。
にこにこと作り笑顔しながら握手を求めてくるし。
気色悪いな……!!
「貴仁くんともすっかり仲良しね、美郷」
「あ、ま、まーね」
「美郷ちゃん素直で可愛いからね」
「良かったわね美郷!」
ぜんぜん良くないよ。
こんな愛想良いのお母さんの前くらいだもんコイツ。
「あ、母さん!お腹空いちゃったな
何か作ってくれないかな?」
「もちろん良いわよ!」
「じゃぁ私も手伝おうか」
「良いのよ貴彦さんはー」
キャッキャッウフフしながら新婚夫婦は台所へ行った。
はぁーお暑くて見てらんないわ。
「くっ……馬鹿らしくて笑えてくる」
「本性のお出ましね」
「義母さんに気を使ってんにの
お前に何か使えるか、ばーか」
「ば、馬鹿って何よ!!
結婚式の時は黙ってたけど、今からそうは行かないんだからね!」
「耐えてた姿はホント面白かったけど♪」
「この野郎ッ」
「口が悪いぞー」
「お前だけには言われたくないわ!!」
「ハハハッ子犬が吠えてるみてぇ……くっ」
「笑うなーーッ」
こんな感じでのスタートをきりました。
これらか毎日、義兄の嫌がらせに耐えなきゃいけないとなると苦痛です。
あーあ、どうなるんだろう私。
これから美郷にどんどん苦難が降りかかってきます。
果たして、耐え抜くことが出来るのか?!
次回に続きます☆