4話:兄妹対面
私の押しの言葉で
"再婚"の話は順調に進んでいった。
お母さんもとっても嬉しそうに式場を選んでいた。
私はそれがとても嬉しかった。
……けれど、わだかまりは消えない。
だって……私のお父さんは、一人だもの。
「――でね、今度……って聞いてる?」
「んぁ?聞いてるよ~」
「……なら良いけど
で、今度、貴彦さんの息子さんと会おうと思うのよ♪」
「へぇー」
「"へぇー"って気の無い返事ねぇ
アンタも会うんだから、しっかりしないさいよ」
「はいはいっと
ご馳走様でした~」
私は食器を水に冷やしてから
自分の部屋に戻った。
「……兄弟ねぇ?」
どうやら話によると
向こうにも子どもが居て再婚らしい。
新しい父親ってだけで、ちょっと嫌なのに
新しい兄弟まで出来るだなんて……。
「お母さんが幸せならって思ったけど……
兄弟かぁ……今更、面倒だなぁ」
再婚したところで、血が繋がってない訳だから
赤の他人もいいところ。
変なのじゃなきゃー良いけどね。
ま、人柄の良さそうな人の子どもだから大丈夫だとは思うけど……。
そう思いながら、部屋にある写真立てを見た。
写っているのはお父さんと私。
この写真が最後だなんて、思っていなかったから
すっごく幸せそうに笑ってる。
仏頂面なお父さんだったけど、自然に少し笑ってるのがわかる。
「……お父さん…ッ」
数年経っても心の穴は消えること無い。
お父さんのことを思うと、直ぐに泣けてくる。
私のせいという罪悪感ともう帰ってこないという寂しさ。
たまらなく胸が苦しくなる。
私はいつものように泣く声を押し殺して泣いた。
お母さんに聞かれたら心配をかけるから……。
ずっと……今までそうしてきた。
ちょっとだけ……だから。
直ぐに泣くのやめるから……。
あと少しだけ、泣くのを許して……!
* * * * *
ついに、向こうさんの息子?とやらに会う日が来た。
お母さんは朝からウキウキしてた。
「娘も欲しかったけど、息子も欲しかったのよね~♪」とこんな感じに。
私もこの日になるまでに、諦めを決めた。
一緒に暮らすんだし、妥協しなきゃって思った。
どんなのが来ても大丈夫だって!
気合を入れてね♪
会う場所になったのは
今まで入ったことも無い様な最高級ってくらいのレストランみたいな?
……さすが、社長クラスは違う。
ある程度は他所着を着てきたけど、場違いって感じがしてながらなかった。
「美夏さん、お待ちしてましたよ
こちらに座ってください」
「ありがとうございます」
「美郷ちゃんも隣に座ってくださいね」
「あ、はい……」
なんとなく緊張。
だって座ろうとしたら、ウェイターって言うのかな?
その人がイスを引いて「どうぞ」だなんて……。
ファミレスじゃ、やらないだろう…な事もやってくれるんだもん。
……この雰囲気苦手だなと思う。
「貴彦さん、息子さんは……?」
「すいません、まだ来ないんですよ……
すぐ来るとは思うんですけど」
「良いんですよ、こちらは構わないですから
ね、美郷?」
「はい、大丈夫ですよ」
とは、返事したものの
遅刻とかどういう神経してるわけ?
ま、良いけど別に!
数分経って……。
「ごめん、父さんっ」
「駄目じゃないか貴仁ッ
時間に遅れるなんて……!」
「いいのよ、貴彦さんっ
……あなたが貴仁くんね?」
「はい、そうです!
初めまして貴仁です。
父から聞いていましたが、こんなに美しい方だなんて
あなたが僕のお母様になって頂けるなんて光栄です」
「まぁ!貴仁くんたらっ」
「………」
キラキラッ☆と何かオプション付きそうなくらい
爽やか笑顔で颯爽に登場する、貴仁とか言う人。
お世辞バリバリな感じなのに、お母さんは素直に喜んでいる。
……なんか嘘くさいよーな気がする。
「こら、あんたも挨拶しなさい!」
「……美郷です
よろしく、です」
「キミが美郷ちゃんなんだね
可愛い妹に恵まれて嬉しいよ♪」
「は、はぁ……どうも」
本気で言ってるのか、この坊ちゃんは……。
良くもまぁペラペラ口が回るなぁと変なところで感心する。
「もー美郷ってばぁ
貴仁くんが格好良いから上がってるのね?」
「ち、違ッ」
確かに、背も高くてスタイルも良いし
顔立ちもなんか格好良いと思う……ってぇ!
コレはあくまで私の思う世間一般論だから、私の感想じゃないからね!!
「ハハッ本当に可愛いや!」
「そ、それはどーも」
何だか馬鹿にされたみたいで本当にムカつく!
我慢だ美郷……お母さんのためだ!!と自分に言い聞かせた。
その後、何度なく兄になる貴仁に苛立ちながらも私は耐えた。
今までにないくらい引きつりまくった笑顔で答えてやった。
しかし今なんて序の口なほど
この先、とてつもない苦労が立ちはだかるなんて
今の私は知る由もなかった。
昔書いた小説をまた気まぐれでまた書き始めようかと思いました。
この作品は結構気に入っているので完結まで持って行きたいですね。
どうなるか分かりませんが、良かったらお付き合いくださいませ。
では、また!