第一話 処刑
苦しい、痛い、憎い、何故、俺がこんな目に逢わなきゃならない? 何故、俺が不幸にならなければならない? 総てが憎い、復讐したい。
殺してやる。
勇者カズトは俺から幼馴染、友人、従者、妹、姉、名誉、全てを奪って「俺に取られるお前が悪い」と言いながら俺を殴り付けた。
それから俺の左腕を聖剣で切り落として、顔面に蹴りを食らわせられた。
相談相手でもあった王女ネミアは「勇者に愛してもらうために貴方を利用した。」と最初から敵であり、何もしていないのに「無礼者」と罵倒されて風魔法で吹き飛ばされて壁に衝突して意識が失った。
それから俺は自分の部屋に運ばれたようでベッドから身体を起こして部屋を出ようとドアノブに手を掛けようとした瞬間に話し声が聴こえた。
恐らく侍女達の話し声だろう。
『あの無能、王女に無礼な事をして吹き飛ばされたみたいよ。』
『まあ、自業自得だよね~』
『でも、良い気味かも?』
『わかる~』
侍女達までもか・・・
俺は勇気を出してドアノブに手を掛けて扉を開けると侍女達はこちらを振り向いて冷たい目で見ていた。
流石に気まずくなったため無視して外に出るために出口に向かうとすると侍女の一人が俺に話しかけてきた。
「ちょっとよろしいですか?」
「何だ?」
この時、無視したままの方が良かったのかもしれない。
「あなた・・・いえ、無能さんはいつまでここに居るつもりですか? いい加減出ていってもらえませんかねぇ?」
「いや、その・・・」
「はっきりと返事をしてくださいませんか? それでは相手に伝わりませんよ?」
「······」
「沈黙ですか・・・話しになりませんね。」
そして、その瞬間に別の侍女から水を頭から掛けられた。
「この無能!!」
「死ね!!」
「死ねば良いのに」
三人の侍女に水を頭から掛けられて、俺を罵って蹴りを入れてきた。
最後に一人の侍女が俺をバカにするような中傷を吐いた。
「無能さ~ん? どうしましたぁ? びしょ濡れではありませんか······後で拭いてくださいね? 貴方が着ている服で、お願いします、よ!」
そして、その侍女から強烈な蹴りを入れられて、激痛のあまり絶叫しているところを侍女達が嗤いながら見下していた。
そうしてその侍女達は面白そうに嗤いながら仕事に戻っていった。
次に伯爵令嬢の幼馴染レイラは俺のことを何度も気にして声を掛けていたがそれが次第に無くなってきた。
そこから特に会っていなかったが、「久しぶりに話しましょう?」とピンクのドレス姿で物凄く綺麗になった彼女は微笑んでいるが目が笑っていないこととこちらを見下しているような目をして居た。
俺は「どうせ勇者様とヤるんだろ?」と聞くとまるでこちらの事など面白くないのか俺に対して、俺と勇者がどちらが凄くて格好いいのかと比べられた。
その後、俺の精神に非常に修復不可能な中傷を浴びせてきた。
「あんたなんか、所詮お荷物よ。
大分前から思っていたけどはっきり言うと気持ち悪いわ。
それに比べて勇者様は素敵よ、あんたと違ってね。」
そう言い残して意気消沈している俺を見向きもしないでドレスを翻して背を向けてそのまま去っていった。
次に姉のセシアはとても優しく貴族令嬢の中でも幼馴染に負けない程の美貌を持っており、良く俺が小さいときに御伽噺をしてくれた人である。
だが、彼女も勇者によって変えられてしまい冷たくなってしまった。
それから彼女は俺を見掛ける度に誹謗中傷を浴びせてきて、たまに少しでも身体が触れれば魔法を使って俺を殺しに来そうなほどの魔力を放出して俺に向かって火魔法を使って俺の背中に当たって火傷を負った。
次に妹のマリアは可愛らしい子で良く一緒に遊んで勉強したときの事を覚えている。
あの時は楽しかった。
だが、それも勇者によって変えられてしまった。
詳しいことはあまり言えないが俺に拷問をして身体を切り付けられて一生消えないほどの傷を付けられた。
そして、そこから俺の偽りの悪行が広まり、俺が店に入ろうとしても「悪人は入れられない。」と入店を拒否している人や俺を見掛ける度に陰口を言ったりする人や俺を良く思わない人が殴ってきたりなどして
気付いたら底辺になっていた。
そうなっていきやがて勇者達から冤罪を掛けられ、教会と国王は俺に死刑だと判決が決まり、三日間による長い拷問が続いた。
拷問官は俺の従者の少女だった。
彼女は薄ら笑いを浮かべながら俺の右腕の指を切り落として目玉を手でくり貫かれて今まで味わったことがないほどの痛みを感じて「もうやめてくれ」と悲鳴を上げても彼女にとっては面白い場面で嗤いながら拷問を続けた。
そして、決行日に俺は鎖で巻かれており、そのまま兵士達によって処刑台へとつれて行かれて、その途中で国民や俺の処刑を楽しみにやってきた両親や友人と村人に石を投げつけられて、ありとあらゆる誹謗中傷を浴びせられた。
『死ね!! このクズ息子がッ!!』
『あんたなんか生まなきゃ良かった。』
『死んでしまえ!!』
『無様ねぇ、早く死んでくれないかしら?』
『お前が処刑される場面を思い出しながら笑ってやるぜ!!』
『ようやく死ぬのね。』
その後、俺は国王や他の奴らがどんな話をしているのか分からない。
そして、その瞬間に勇者カズトが出てきて俺を見下しながら国王と教会に礼をして、勇者カズト自ら殺ると宣言して国民達を喜ばせた。
聖剣を持って最後に勇者はこう言った。
「ありがとうな、俺のために犠牲になってもらって本当にありがとう。」
その後、俺の首が切り落とされる感触がしてそこで俺の意識が途絶えた。
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