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お題  #000002

 崩壊した教会………強い日差しが降り注ぎ、その影響か割れた床には白い花が群生する。戦争の悲惨さか、又は老朽による崩落か………。


 ーーーその中心にてスリットスカートの少女と、皮のフルスーツ男が対峙する。少女は素手、男は左手に手甲のような物を装備し、7メートル程の距離を保っていた。


 空気は張り詰め、一触即発の空気の中………少女はポケットから、手袋を取り出す。男は眉を吊り上げ、その様子を眺める。


 少女はソレを指先に馴染むように伸ばし、手の感触を確かめながらはめ込む。ソレが終わると片足を前に踏み出し、拳を握り、胸部にて静止させる。


 それに対して、男は口角を吊り上げて左手を軽く突き出す。人差し指を2、3度折り畳む。


「ーーー遊んでやるよ」


 そう言うと男は頭一つ分姿勢を低くし、両手足を広げて構える。姿勢は前屈み、そして体を揺らすようにリズムを取る。


 その行動に少女は歯を鳴らす。気に入らない………少女は静かに怒りを抑えた。頭は冷静に、心は熱く、握る拳を強める。


 余裕の笑みを浮かべる男に、少女は地面を蹴り上げ、疾風の速度にてその距離を積める。


 少女は右手を突き出した。ソレは男の左手に阻まれる。男はニヤリと笑い少女を捕らえようとするが…………少女は左手の甲を構え、地を踏みしめ力を溜め込む。


 少女の左手の甲が、男の右頬を殴打。唾液が飛散し、衝撃により男は堪らず仰反る。


 ーーーそこに腹、腹、と拳を叩き込み、間髪入れずの左ブロー右ブロー。右肘の突きで男は大きく後退。


 しかし男は首を強引に引き戻し、何事も無かったかのように、体制を立て直す。


 だが少女も攻撃の手は緩めない。ラッシュの勢いを残したまま、右足による回し蹴りを炸裂。


 ……男は、ソレすら意に返さない。少女に僅かな動揺。ーーー男はソレを見逃さない。男の突き出した拳が少女の顔に触れ、青い稲妻と共に手甲から何かが飛び出す。


 少女は謎の衝撃と共に、8メートル程の距離を吹き飛ばされた。後方に一回転からの着地。1メートルほど引きずられ、男を睨みつけながら、血の付いた口元を拭う。


 飛び出した鋭利なものが手甲へと戻り、男は薄く笑う。少女の手には雷撃の痺れが残る。手を小刻みに動かし、痺れが抜けるのを確認すると、拳を強く握りしめる。


 少女は勢いをつけ飛び込んで、足を払おうと滑り込む。男はソレを高く跳び上がりかわす。一回転し少女の後方に着地する。


 ーーー振り返る瞬間。少女の鋭い左フックが男を突き飛ばす。男は訳もわからず、そのまま壁に衝突した。


 一連の流れ、少女は滑り込む際、後方を向きながら滑り込んだ。滑り込み後疾風迅雷の如く切り返し、結果ーーー男が振り返る前にその拳を届かせた。


 男は崩れることなく、すぐに次の体制へと移る。自らの左あった柱を盾に、後退るように移動。少女の渾身のドロップキックを交わし、蹴りは壁に直撃。その隙に男は視線を向けたまま後退。


 それに対して少女はすぐさま追撃を開始。逃しはしないーーーその脚力で左足で壁を蹴り、右足で柱を蹴る。空中を縦横無尽に駆け回り、勢いと全体重を乗せ、右足のによる剛撃が男の左側面にクリティカル。その衝撃により、男は空を眺めるように吹き飛ぶ。


 少女は尚も猛追。着地の衝撃や勢いさえも膝に乗せ、足首へと伝達。地面を蹴り上げる力に全てを注ぎ込む。後退する男を全力で追いかけ、跳び上がる。


 一方男は、空中からの両手で地面を弾き、流れるように体を回転させてからの着地。その視線は少女を捕らえ続ける。そこへ少女は足を蹴り上げ、一回転。下顎から天を貫く。その重撃は顎を揺らし脳を振動させ、男は無防備に宙に浮く。


 ……………常人であれば気絶は間違いない。


 しかし男は驚異的なタフさでその猛攻に耐えた。いや、耐え抜いてしまった。


 男と少女はその後同時に着地する。ソレを確認するや否や、少女はまたしても突進を繰り返す。


 猪突猛進………何度も繰り返せば、その短調な動きは読まれる。


 ーーーまず男はその手甲にて突進を受け止める。お互いが睨み合うも、次にその頭蓋を少女の頭部にぶちかます。それにより少女の頭はふらつき、焦点が定まらなくなった。よろめきながら後退する。その様に、男はニヤリといやらしい笑みを浮かべる。


 男は無防備な少女の腹部に、左足からのミドルストレート。容赦のないその一撃に少女は苦悶の表情を浮かべ、後ろに引きずられる。それでも苦し紛れに構えを崩さない。


 男はその隙に少女に急接近。男が左拳を打ち込むと、少女は壁を背にしゃがみ込む。拳が壊れた石柱に直撃し、破片と土煙が舞う。少女はしゃがんだ力を拳に乗せ、体のバネを使い腹部に強打。


 ーーー男の足は床を離れ、体は後方へと舞う。少女はそのまま男に張り付き、次なる一手を放つ。男の腹部でしゃがんだまま、ソレを一気に蹴り飛ばし、空高く舞う。男は下方向に力が加わり、大きくはじき飛ばされ、石畳の床に叩きつけられる。


 一瞬の出来事に、世界は時を刻むのを忘れるほど緩やかになる。しかしーーーソレを乱すように、少女の死角からズルリと太い手が現れ、乱暴に右足を掴む。


 ーーー死の予感。しまった……と言う感情が、少女の頭を、顔を支配する。男は少女の足を掴んだまま、着地。その状態で、少女を蛇のおもちゃでも振り回すかのように、教会の椅子に叩きつける。椅子がはじき飛ばされ、その衝撃の強さを物語っていた。


 そこに追い討ちをかけるように体を横に回転させ、三度の回転ののち一歩を踏み込み、壁に向かい華奢な少女の体を投擲する。壁に激突すれば命はない。この戦いはそれで終焉を迎える。


 ーーーしかし、少女は空中で体制を反転。体の関節を使い、筋を使い、足を広げ、手をつき、体の全てを駆使し、衝撃を受け流した上で、壁への着地に成功した。


 そう……男が普通でなければ少女もまた普通ではない。


 男の攻撃に耐え、正面からぶつかり、体格さを物ともしない立ち回りで戦い続けた。少女もまた領域外の人間。ならばその戦いは規格外の結果でのみ終焉を迎える。


 白い花弁と、緑の葉が宙を舞う。その隙間から見え隠れするお互いの視線。睨み合い、隙を伺い、敵意をぶつける。


 ーーー少女は広げた足を縮め、壁を蹴り飛ばし、捨て身の攻撃に出る。己の脚力。受け流した衝撃。急転直下の重力を全て男へと向ける。

  

 一方の男もそれに切り返すべく、カウンターの一撃を狙うおうと、左手を振りかざす。


 結果は一方的だった………少女が男の頭を鷲掴みにし、そのまま後ろへ吹き飛ぶ。床に何度も激突し、跳ねて弾けてを繰り返す。


 そこで少女は男のスーツを握りしめ、お返しと言わんばかりに横に回転。その勢いを利用し、上空に放り投げる。少女は一転し着地。男を追撃する為、高く跳び上がる。


「ーーーーコレで終わりよ!!」


 少女は叫び声と共に男を左手で掴み、椅子の塊に向け力の限り投げ落とす。落下と共に炸裂音と、砂煙が宙を舞うと共に、静寂が訪れる。少女は膝を折り床に着地する。男の反応はない。


 少女がゆっくりと立ち上がり……戦いの終わりを迎えた。


 

 

 

 

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