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間、大人の話
河原に佇む娘の背後から、軽い足音が寄ってくる。
「言わなかったのかい」
からかう響きの声色の主を振り向きもせず、カワセミはヒスイの背中が消えた木々の向こうを眺めていた。
「……十五になったら教わるもの。お婆様が言ってたわ。そのうち、他の『風見』から、って」
「別に、今時分から教えたとて、何の障りも無いと私は思っているのだけどね」
歩みを進め隣に並び、ヒバリは淡々と言った。
カワセミは視線を動かさない。
「あの子は……まだ子供だもの」
「お前さんも子供だろう?」
「……そうね」
雨の雫が落ちるように、少女は呟く。
「お婆様は、やらなくても良いと言ったわ。やらないのなら、知らなくて良いとも」
「それはそうだろうね」
「でも……私はヒスイを助けたかった。それだけよ」
一度もヒバリを見上げることなく話し少女は静かに踵を返す。
残された青年は口の端を持ち上げて、小さく肩を竦めた。