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序、嵐を払う唄
それは生まれてから今までの間で一番古い記憶。
重苦しく濁った空。頬を叩く激しい雨。眩い稲光と耳を劈く雷鳴。合間に聞こえる微かな鐘の音。
怯えて泣き喚く幼子の声は、もしかしたら自分のものだったかも知れない。視界は狭いが多くの人が寄り添う気配がしていた。
やがて、嵐の空を越え、歌う声が耳に届く。
祈るように、唸るように、高く低く、何十もの音の重なり。
その声に追い払われるが如く雨は止み、雲は切れ、隙間からきらきらと光が降り注ぐ。それを見た人々は歓声をあげ、泣いて抱き合い喜んだ。
「ああ、良かった、良かった!」
濡れそぼった身体を強く強く抱き締められる。とても温かい。
いつの間にか歌声は止んでいて、目の覚めるような青空が広がっていた。