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 あの3人から、よろしくお願いしますと頼まれたので、私はすぐさまサロンを開き、あれはそういうものではないということを説明しました。

 およびした3人は、笑いながら「わかってるけど、浮気したらこうなるわよっていう丁度いい教訓になるから!」とおっしゃっていました。やはり、女性の方が精神的に強いのでしょうか。

 そのあとは婚約者への愚痴大会が始まり、殿下を通して彼らに伝えたいことはありますか?と聞くと、愚痴大会は終わり、それぞれ色々なことを伝えて欲しいとかしましくおしゃべりなされました。

 殿下に言わなくてはいけない私は、メモでもした方がよかったかしらと重ねられていく言葉を見ながら考えました。

 とにかく、私は殿下に彼女達の伝言を伝え、殿下は快く了承してくださいました。学園祭のご準備でお忙しいのだろうにありがたいことです。

 殿下に伝えてもらったのであろう彼らは、マリナさんがいない時にサッとやってきて、皆さん感謝の言葉を伝えては去っていかれます。とりあえず、皆さんの仲が平和的にとり持てているようで、私もホッとしました。仲良きことは美しきかな……。実に良い言葉です。

 さて、彼らの問題が一応は片付けば、次はマリナさんです。

 直接注意すべきなのでしょうが、私が表立って出てしまえば彼女は格好の標的。貴族社会はドロドロしていますから、一応一番上にいるであろう私が注意してしまえば、いじめても良いのでは?となりかねません。

 平和的な人間である私にとって、それはとても困ることです。

 胃的に。キリキリしちゃうと、辛いですからね。

 そんなわけで私は表立てませんし、頼める人といえば、あの3人以外にいません。そうなると、まるっきりストーリー通りのいじめ方になってしまいます。実際はそうじゃないのですが……。

 とにかく、彼女の意識というものを、きちんと淑女らしいものに変えていかねばなりません。

 たとえ、今年の2月から貴族の仲間入りをさせられ、慣れ親しんだ街と別れたとしてもです。もしも、帰りたくてこういうことをやっているのならば、そのやり方は愚行であると教えなければなりません。

 とりあえずは、彼女に婚約者のいる男性とそう親しくしてはいけないこと、もしも、帰りたくてやっているならば相談して欲しいということを、3人からそうっと伝えてもらいましょう。

 とても頼みにくい事柄ではありますが、彼女達以外に頼める方がいないのですもの。彼女達には、放課後お頼みしましょう。



 放課後に、彼女達をあのお部屋にお招きして、お願いをしてみると3人とも任せなさい!と頼もしい笑顔で胸を叩いてくださいました。おかげでとても安心です。


「それにしても、あの子が平民出身だなんてよくご存知ですわね」

「あら、一度でも殿下にお近づきになろうとなさる方のことぐらい調べあげますわよ、殿下は、ハイスペックでも、人の良いおバカさんですもの」

「そ、そんないい笑顔で……。まあ、ブリジット様らしいけど。それじゃあ、彼女には私たちから注意しとくわね」

「ええ、ありがとうございます、カトリーヌ様、アンナ様、カミーユ様。あの、くれぐれもキツイ言い方をなさらないで下さいね」

「まあ!そんなの大丈夫ですわよ、アンナさん以外」

「あなたの方がもっと不安要素よ、カミーユさん!」

「要は、二人とも不安要素ってことじゃない!ほほほほ!それじゃ、私がメインで話していくわね」

「な、なんですって……」

「あ〜ら、ラッキー。よろしく頼むわ」

「お話がまとまったようで良かったですわ。とにかく、よろしくお願いしますね。私が、直接話せたら一番良いのでしょうけど……」

「その方が面倒臭くなるからいいわよ」

「確かにねえ〜。最終兵器として残っていてちょうだい、ブリジット様は!」

「そうですわ。最終兵器として……」

「ええ、では、最終兵器として待機してますわね、ふふふ」


 そういうと、少しだけ引いたような顔をしたカミーユ様が「そう言われると、ちょっと怖いわね……」とおっしゃいました。そんな怖いでしょうか。恐ろしきは、私の持つ権力だけですのに……。容貌以外はてんで平凡な令嬢ですのに、不思議です。

 それでも、3人が快く了承してくださったので、私は大人しく裏に徹していましょう。


 さて、話し合いが終わったので、王族のみが入室を許されるお部屋で殿下を待つことにしました。

 ここ最近は、ここで殿下とお会いするのが、恒例になってきました。これも、マリナさん効果です。

2年の頃は、ここを使わずとも食堂やクラスだけで十分だったのですが、最近はマリナさんのおかげで食堂ではゆっくりと取れません。それに、友人である攻略者の皆のためだとお食事に誘うようになられたので尚更です。

 少し調子に乗らせてるような感じはしますが、他生徒に殿下はマリナさんが好きなのだと思われていないようなので、大丈夫でしょう。

 他の生徒から見れば、あの眩しいくらいに輝く笑顔がしぼんでいるので、こちらで管理されていると思われているらしいです。これは、カトリーヌ様情報です。

 確かに婚約者のいる女生徒から見れば、少し怖い存在でしょうし、男性からいっても少し迷惑な存在になりつつあるようですし、当然でしょう。


「待たせたな!ブリジット!!」

「いえ、待ってませんわ、殿下」

「ふはははははははは!!!!健気!実に健気!愛いぞ、ブリジット!!」

「まあ、照れますわ……。それよりも、殿下。マリナさんを注意していただけるように、アンナ様、カトリーヌ様、カミーユ様にお頼みしましたの」

「うむ、そうか。それで、少しは大人しくなっていただけると、俺としても大変嬉しいのだが……。食堂でのおしゃべりは中々疲れるぞ。きらきら王子面をせねばならぬからなあ。俺は、どちらかというと、ギラギラ王子であるからな!ふははははははは!!」

「そうですわね、目が潰れるほどにギラギラですわ。でも、どうして、殿下はそんなきらきら王子面をなさってるの?」

「うん?なぜかだと?うむ、疑問に思うのも当然。俺は常に自信溢るる俺であった。誰に会おうが、俺は俺以外の何者でもない、俺!そう、俺以外俺じゃなく、ならば、俺が俺であるのは明白な事実!言ってることがわからないが、常に俺は自分を偽るような人間ではないのだ!だからこそ、その疑問は当然である!心してその答えを聞くがいい、ブリジット!!」

「はい、殿下!」

「いいお返事だ、ブリジット!!!答えは単純明快!彼女が、元は平民だったからだ!いつもの尊大な俺だと、多分、嫌われるであろう?そしたら、一人の貴族からの支持が失われる。さらに、彼女は元平民。下々の者との交流が未だに続いている可能性がある。噂好きな平民からすれば、王族など格好のスキャンダルの的だ。なればこそ、彼女には、まあ、キラキラ王子面をしといた方がいいかと思ってな」

「なるほど。さすが殿下。ですが、彼女の前だけしかやられていないのならば、逆に差別されていると思うのでは?」

「ふはははははははは!!確かにな!だが、人間、丁寧な扱いをされる分にはその差別を悪いと思わぬもの!存分に丁寧に扱ってやっているのさ!この優しさ!さすが俺!まあ、ブリジットが俺にいつも優しくしてくれていたからなんだが……!」


 まあ、殿下ったら……。

 頭を撫でてあげましょうね。

 そして、それを甘んじて受け、あろうことか喜んじゃうだなんて威厳がありませんわよ、殿下……。


「ふは!ふはははははははは!!!良いぞ!もっと撫でるがいい!許す!めっちゃ撫でて!とにかく、彼女にキラキラ王子面するのは自分でも少し気持ち悪いし、ストレスはかかるが、これも、ブリジットと結婚した後の将来を考えてのこと。多少、イチャつかせるようになるかもしれないが、大目に見てくれ」

「ええ、もちろんですわ。なにせ、殿下には、こんなによくしていただいてるんだもの。嫉妬はしちゃうかもしれませんが、怒ったりはしませんわ。なんせ、あんな小娘に怒りを抱くような小物ではありませんもの、私」

「ふ、ふははははははははははははは!!!!!さすが俺のブリジット!!さすが俺の嫁!!すでに、妃の威厳がありよるわ!ふはははははははは!!!俺、絶対、ブリジットと結婚するぞ!!ブリジット以外に俺にふさわしい嫁がいようか!否!いない!!!」

「まあ!わかっていても嬉しいですわ、ディミトリ!」

「ふは!ふはは、ふははははははははははははははは!!!!!!!!好き!!!!!!」

「私も」

「ふは、ふははははははははは!!!!!俺、幸せ!!!!幸せな気分のまま、俺はまた生徒会に行くのであった!!!行ってきます!!!」

「まあ、行ってらっしゃい、殿下」

「夫婦のようなやりとり!この多幸感!最高だな!!ふはははははははははははははは!!!!!!」

「早くお行きになって」

「……うむ、わかった!ではな!明日もまた会おうぞ!ああ、そうだ。待っていて、眠くなったら寝ていて良いぞ。お前が疲れを溜めている姿を見る方が、俺は辛い。愛しているぞ、ブリジット!」


 そう言って、殿下は嵐のように颯爽と去っていかれました。

 殿下ったら、急にああいうこと言うから少し心臓に悪いのです。ポジティブ系俺様バカのくせに……。いえ、良いのですが。

 とにかく、殿下に言っておくべきことはいいましたし、今日は、まっすぐとお部屋に戻って止めていた小説を読みましょう。注意をする時、なにもないと良いのですけれど。


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