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私と言う個人  作者: 四月深欲
6/6

私達のいる場所



右足で魔法陣を軽く踏む。

すると魔法陣から少しずつ青白く光る粉が溢れだし身体にまとわりつく。

青白く光る粉の量が増していき視界が遮られ周りが見えなくなる。


自分の鼻先が見えなくなった時、身体の感覚がなくなる。


このタイプの転移は生物や物体を粒子分解し、それをゲートで飛ばし転移先で再構築する。

そのため物体の形や性質を正確に認識する必要性がある。

もし、失敗した場合は身体がバラバラに再構築される。

先程悪魔が風を止めたのもその為だ。


まあ、通常の生命体ならば身体がバラバラになると簡単に死ぬが、我々不死の性質を持つ存在は身体をバラバラにされても灰になっても存在が消滅しても蘇るので何の問題もないのだが。

でも痛いし、なるべく失敗はしたくない。


と、そんな事を考えているとだんだんと思考が遅くなる。

脳の粒子化が始まったのだ。


眠気に似た感覚に襲われる。

私はその眠気に身を委ね目を瞑る。


意識が途切れる。




意識が戻る。


先程まで無かった身体の感覚が元に戻り、いとおしい重力の感覚が心地よく感じる。

やはり何度やってもこの感覚は拭えない。

そんなふうに思いながらゆっくり目蓋を開く。



「暗い」



さりげなく愚痴を溢す。

いつもの事なのだが毎回同じ文句を言っている気がする。

仕方がない、今の時間帯はこの転移広場には人がいないため私達二人だけのために明かりをつける程人がいるわけではないのだ。


夜目を鍛えていたおかげである程度は見える。

だが荷物を持って行かなければならないので転移広場に明かりを灯す事にする。



「精霊よ私の元に来い」


「はーい」



軽い返事をしながら現れたのは私と契約した上位妖精のレグルズだ。

上位妖精とは、複数または全ての属性の概念を操る事が出来る妖精である。

しかしながら自己の力は弱く契約者の魔力を使うことでしかその力を発現する事が出来ない。

いわゆる器用貧乏と言うやつだ。

だが魔力を与えれば与えるだけ無限に力を発現出来る事もあり上位妖精のカテゴリーに位置ずけられている。

そんな上位妖精のレグルズは光、地、空、風、記憶の概念を操る事が出来る。


レグルズはこちらを見つめ、何をしたいか察したのか勝手に魔力を吸い上げ転移広場全体を照す。

予告なく部屋を明るくされたため少しだけまぶしく目をしかめる。


「終わったよ、じゃあ見たい番組あるからまたね」


「ありがと」


そう告げるとレグルズは酒樽のコルクを抜いた時のような音をたて消える。

相変わらずテレビが大好きのようだ。

いつも私の家にあるテレビの前のソファーにちょこんと座って暇している。


と、忘れていた。



「起きろー」



そう言いながら先程まで存在を忘れていた悪魔の頬を叩く。

この悪魔はいつもこうなのだ、何故か転移した後立ったまま起こされるまで寝続ける癖がある。

何度注意しても直らないのでもはやこの光景も同じみである。



「あ、着いてたの?」


「そうだよ」


少しだけ呆れた声で言ってみるが全く効果がないこの悪魔は悠々とあくびをしながら伸びをしている。

悪魔を起こした後、すぐに荷物を持ち明るくなった転移広場を出る。


真っ先に目に入ったのは星空だ。

見える星は地球から見えるそれとは異なっている。

厳密には星ではなく、ここから見える光は魔力の結晶。

ここは次元の海だ。

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