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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
五章 サイゾーの使命
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7.緊張感を欠くのは、魔法がアレだからです。

「大将軍様。もう、無理です。引きましょう。怪我人の手当てもしないと‥」

「お前たちの事なんてしらん。自分で何とかしろ。全く、そろいもそろってカスばかりだ」

 大将軍と呼ばれた男は、話しかけた部下に目もくれず、忌々しそうにネコを蹴飛ばした。そして、相変わらず向かってくるネコと兵隊をなぎ倒しているサイゾーを見つけると、行く手に立ちはだかった。

「サイゾーよ。お前ほどの力があるならば、こんなに小さな島でちまちま生きなくても、もっと大きな事が出来るだろう」

 サイゾーはこの声を聞いたことがあった。五の国の兵隊の大将だ。大将が剣を抜いてサイゾーに向き合う。

「大きな事とは? 」

 サイゾーが大将と剣を交えながら聞き返した。

「世界征服がお前のいう大きなことか? 」

 そして、大将の答えを聞かずに、言葉を続けた。

「世界を自分の意のままに操る。最高じゃないか」

 大将がにやりと笑う。重ねた剣から火花が飛ぶ。サイゾーも大将も力任せの剣だ。マンゴスチーンたちは手を出さなかった。ただ、戦いの邪魔にならない様にネコを船に放り込み続けた。

「世界を征服して、世界の王になるということは、世界に対して責任を持つということじゃ。わしには到底出来んね」

 サイゾーが剣を重ねたまま、力いっぱい大将の方に倒し、その後目にも止まらぬ早業で後ろに飛び退き、体勢を整える。

「責任? そんな必要があるか? 世界中の者は我らにひれ伏す。ただそれだけの関係だ」

 じりじりと攻める機会を伺いながら、大将がサイゾーに近づいてくる。

「なんと無責任な‥」

 声は厳しかったが、サイゾーの表情は静かだった。確実に相手の出方を見ている。それは相手も同じだった。

「力こそが総てだ」

 低く、呟くように言った言葉には、驚く程感情がこもっておらず、その表情も暗かった。

 ただ、退屈で仕方ない。

 とでも言いたげな表情。

 世界を手に入れる欲望も、そして、何かに反抗し変えていきたいという様な気概も感じさせない、熱のこもらない視線。

 大将のそんな表情にサイゾーはただ、小さく舌打ちした。

「お前とは、生涯分かち合えん。今ここで決着をつける」

 サイゾーが剣を構えた。やっぱりなんの熱も籠らない視線をサイゾーに向け、大将がにやりと笑う。

 その時、

「サイゾーさん! 」

 声と共に、周りから石のレンガが飛んできた。

「卑怯な! 」

 大将がレンガを避けながら叫ぶ。

 サイゾーはレンガが飛んできた方向を見た。

 視線の先には、島の皆がいた。


「卑怯なのは、そっちが先だ。あんたの話なんぞ、これっぽっちも聞く価値はない。正しい君主に巡り合えなかったあんたは、可哀想な奴だ」

 ジョセフがレンガを握りしめて言った。

 剣を構える相手に対して、‥それでも少しは恐れもあったのだろう。だけどぎゅっと拳を握りしめ、震えそうになる足でもって、その場に踏ん張り、高揚した表情で大将を睨み付けている。

 無理もない、この平和な国に未だかってこんなに沢山の兵がいたことがあっただろうか。

 未だかって、こんな危機を感じたことがあっただろうか。

 ‥それは、だけど、サイゾーが大魔女がいてくれたせいだ。

 それを今回、初めて知った。

「ここには、主君すらいないではないか。国でもないただの島ではないか。こんな島で何の向上心も持たず発展に尽力することもなく、ただ、日がな一日日向ぼっこしている様な平和ボケした島民に私はばかにされるのかね」

 ジョセフに剣を向けながら大将が嘲笑する。

 ジョセフと大将の間に剣を構えたココとマンゴスチーンが立ちはだかる。

 ただ、目の前の敵を睨み付けるだけで、二人は何も言わなかった。

 ジョセフと違って、二人の表情は落ち着いていた。

 姿勢にブレすらない。

 真っ直ぐと剣を構え、ただ、大将を睨み付けていた。

「お前に暮らしぶりをどうこういわれる筋合いこそないわっっ。ここには、それだけ安全で安心な暮らしが保障されておるのじゃっっ! 。それこそが素晴らしいことだと気づかんかね! 。ここは、ただの小さな島ではない。大魔女と、世界一の勇者、サイゾーが守るサイゾー島なんじゃっっ! 」

 ココたちの後ろから、ジョセフが叫んだ。

 叫ばなければ声が震える。

 それだけは嫌だった。

「そうだ! サイゾー島だ」

 他の島民が声を合わせて叫ぶ。

「これからは、マンゴスチーンもココもいるぞ! 」

 と言ったのはハッチ。

 その表情は少し得意そうだった。

 ふっと、サイゾーが微笑む。

「帰れ。大将よ。お前に勝ち目はない。お前はもう、気持ちで負けておる」

 サイゾーが剣を鞘に納めながら言った。

 大将が周りを見回すと、ひどく負傷して船に運ばれる者、ネコになっている者、足やら腕のケガを庇いながら船に戻る者。誰一人として戦おうとする者はいなかった。

「おっさん、統制力ねえな」

「本当の味方とかいねえのな」

「ちがいねえ! 」

 家職人三人組が笑う。

 ちっ。と舌打ちして、大将はネコを蹴散らしながら船に戻って行き、さっさと船を出させた。

「あ、ネコは全部連れて帰ってね。俺、あんまりネコ好きじゃないから」

 ハッチがその背中に叫ぶ。

 ネコは結局、残った兵士たちに総て引き取られて行った。



 それから、毎年五の国から「人間に戻してもらおうツアー」一行が来るのだが、まだ成果はえられていない。が、それはまた後の話。


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