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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
四章 サイゾー島の新しい住人
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4.山の魔女

 ‥魔女か?

 マンゴスチーンは言われるまま、山頂に向かって歩き出した。

 ニャーン

 洞窟の前に来ると、ネコが、鈴がなるような声で鳴き、ふっと消えた。その代わりに、洞窟の奥から黒い長い服を着たおばあさんが現れた。

「いらっしゃい」

 おばあさんの顔を見た瞬間、マンゴスチーンは驚いた。


 あ! サイゾーさんそっくり!


 マンゴスチーンは立ち尽くした。しかし

「私はマンゴスチーンと申します。この度、チサさんと結婚させて頂きましたので、遅れましたがご挨拶に参りました」

 流石は王子の風格で、丁寧に上品に挨拶をした。

「ええ、ハナさんから聞きましたよ。そうですか、貴方がマンゴスチーンさん。聞いていた通り、随分とハンサムだね。聞けば貴方もドラゴンに乗るらしいね」

 サイゾーそっくりの老女が笑う。老女が洞窟の前に置いたテーブルに二脚置かれた椅子のうちの一つをマンゴスチーンに勧める。

「ありがとうございます」

 会釈してマンゴスチーンが椅子に座ると、老女も椅子に腰を掛け向かい合った。背筋がしゃんとしている。動作も、機敏で少しも老いを感じない。

「サイゾーになんか憧れてたのかい? 」

 茶色の瞳が悪戯っぽく笑った。

「はい。サイゾーさん程、素晴らしいドラゴンマスターはいないと思っています」

 その瞳を真っ直ぐ見てマンゴスチーンが答えた。

「そりゃあ、あの子は魔女の血を引いているからね。でもそんな元々の素質だけでドラゴンマスターを目指す安易な子さ」

 まったくしょうがないよ。と、老女は呟く。

「お祖母様は、サイゾーさんがドラゴンマスターになるのに反対されていたのですか? 」

 老女が少し肩をすくめて首を振る。

「いいや。あの子はそれくらいしか働けなかっただろうからね。だけど、あの子は褒められて図に乗って、本来のドラゴンマスターとしての目的すら忘れた。それがあんまりに鼻についたもんだから、「もう結婚もしたんだから落ち着いたら」って言ってやったのさ」

 マンゴスチーンがゆったりと頷く。『本来のドラゴンマスターとしての目的』という言葉は気になったが、話の腰を折るようだから、今聞くのは止めた。

「農業を提案したのも、あたしさ」

 老女が言葉を続ける。

「あ、メロン‥」

「チサは自分が考えたと思い詰めてたみたいだけど、あたしがハナさんに言ったことなのさ。「サイゾーに農業をさせてみたら」って」

「地に足つけた生活をしろという意味ですね」

「そう。それにちょっと面白そうじゃない。あのドラゴンしか見て来なかった子が、農業に奮闘するなんて。すぐに根をあげたら笑ってやろうと思ってさ」

 面白そうに老女が言った。

「だけどあげなかった。後にも先にもサイゾーがあんなに努力したのはあの時だけよ。親子の愛を感じたわね。でも、途中から目的が変わってきてたみたいだけど。もともと凝り性のあの子の性格に案外合ってたのと、あと半分は意地ね」

 そして、ちょっと肩をすくめて笑った。マンゴスチーンも笑う。

 目的‥

「ドラゴンマスターの本来の目的とは何ですか? さっきおっしゃっていた‥」

 マンゴスチーンが向かいに座る魔女に、膝を進めた。

 その顔は真剣そのものだ。

「そもそも‥。ドラゴンが増えすぎないのはなんでだと思う? 」

 老女の顔も真剣になった。

「え? 」

 突然話が変わったことに、マンゴスチーンは戸惑った。更に、今までそんなこと考えたことすらなかった。

「え? そういえば‥何故でしょう」

「ドラゴン同士の交配では増えないからさ。もし、自由に交配させられるなら、二の国はドラゴンだらけだし、他の国にいるドラゴンの数も把握できない。ドラゴンの保有数は七つの国の協定で一国四頭だけ。それ以上は、例えお金を積もうとも買えない。お金を積めば買えるんだったら裕福な五の国にドラゴンが集中してしまうだろうから、この取り決めは重要だよ」

 そういえば、確かに五の国にも二頭いるだけだ。

「ドラゴンの卵は言うなれば、植物の種なのさ。種から芽が出るみたいに卵が割れて、水や肥料‥エサだね、で大きくなる。その種を作れるのは魔女だけ。しかも、魔女もいつも同じものが作れるわけではない。魔女のレベルにもよるし、運もある。その種をより分けて、普通の種しか二の国以外に流通させないようにする」

「それは‥。種の種類とは産まれてみないとわからない物ですか? 」

 マンゴスチーンのドラゴンは卵を買ってきたものだったので、マンゴスチーンは少し気になったのだ。

「いいや? 卵の地点でわかるよ。それが失敗した卵だということも。そういう卵は、また種に戻してもう一度作り直すんだ」

「卵の地点で流通することは‥」

「ああ、そういえば一度そんなことがあったね。新米魔女が小遣い稼ぎに何個かの失敗卵を横流ししたことが‥まだ回収されていない物があるんだよ。全く困ったね。そういうのは登録もされていないことがあるから、ドラゴンの数が把握できないんだよ。だけど、まあ孵化していないこともあるかもしれないしね」

 ‥失敗作を横流し。マンゴスチーンはなんだかすごく嫌な気持ちになった。

「あんたのドラゴンも‥そうじゃないかい? 横流し卵‥そりゃわかるさ。目の色がちょっと他のドラゴンと違って浅い。それに肺がそんなに強くない。だから、長く飛んだら息が切れるのさ。だけど、登録を後でしたんだね? それに、よく訓練したね。見せてもらったけど、いいドラゴンだ」

 マンゴスチーンは嬉しそうに微笑んで頷いた。

 ‥やっぱり横流し卵なんだって確定したのは嫌な気持ちにはなったが‥。

 微妙な顔になるマンゴスチーンに魔女が頷いて話を元に戻す。

「まあとにかく。ドラゴンの卵を作ってより分けて、孵化させる。それが魔女の仕事で、それをとり仕切っているのが、大魔女の私だ」

 それらの話は、マンゴスチーンにとって初めて聞く話だった。そして、恐らく誰も聞いたことがない話だろう。どうして老女が今自分にこんな大事な話をするのかマンゴスチーンに分からなかったが、マンゴスチーンは固唾を飲んで話に聞き入った。もう、相槌すら打てなかった。

「二の国用のドラゴンと、その他の国のドラゴンはそもそもドラゴンとしての能力が違うんだけど、それは種の種類が違うのさ。言うなれば、草花の種と木の種くらいにね。あんたが飼ってるドラゴンも、二の国用以外のドラゴンの能力さね」

 マンゴスチーンは頷くことも出来なかった。そもそも自分にはわからないことだったから。だから、

「どう違うのですか? 」

 ぐいっと身を一歩乗り出した。

「二の国のドラゴンは長距離移動が可能な体力と身体能力がもともと備わっている。ドラゴンそのものの力が違うのさ。そして、まれに戦闘用のドラゴンもいる。サイゾーがドラゴンマスターとして優れていたのは、ドラゴンが優れていたせいも有るのさ」

 マンゴスチーンはサイゾーの大きなドラゴンを頭に思い浮かべて、大きく頷いた。

「さっきおっしゃった、レベルの高い魔女が作った種だから‥ということですか」

 そして、さっき老女は自分のことを大魔女だと言った。つまり、

「そう、私が作ったドラゴンさ」

 老女が認めて頷く。

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