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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
四章 サイゾー島の新しい住人
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2.一の国の経済流通システム。

若者たちも、ここの「交換」というシステムに慣れつつあった。

 そのきっかけになったのは、サイゾーの話だっただろう。

「なんで、貨幣を使わないのですか? 」

と、以前、サイゾーに聞いた者がいた。

「貨幣は、この島には必要がない。貨幣があるから貧困の差もうまれる。そんな国を今までたくさん見てきた。貨幣の存在は知っているが、ここでそれを使う必要は感じない」

 サイゾーは静かにそう言った。

「‥‥」

 職人たちは黙った。職人たちもみんな、貧しかったのだ。

両親は、毎日貨幣を得るために、朝から晩まで働いて家にいなかった。だから子供たちは皆集まって毎日夜まで遊んだ。ココもマンゴスチーンも仲間だった。少し大きくなれば、彼らは職人だった父親たちを手伝って職人の見習いをした。その頃、王子様のマンゴスチーンと、裕福な家に生まれたココは学校に行き、道場にも通い始めていた。だけど、それを羨ましいとか憎らしいとか思ったこともなかった。

ただ、当り前のことだと思った。思っていた。これを、貧富の差だとか不公平だとかは思わなかった。 働いている自分たちの方が偉いと思えて、まだ働いていないココは、ほんの子供に思えた。

「ここで必要なのは、誰かが必要とするものを作り出す、手に入れる能力だ。何かを作ることやら‥動物の世話をすることも、わしには何も出来なかった。だけど、昔からずっと身近にドラゴンがいた。自分で言うのもなんだが、才能もあった。ドラゴンマスターという存在は知っていた。あれくらいならわしにだってなれるって思った。だから、ドラゴンマスターになって二の国に働きに行った。これも家族を養う術だ。対価として二の国では、貨幣を貰い、一の国では手に入らない‥例えば鉄の道具だったり‥を買って一の国に持って帰った」

 職人たちは聞き入るようにサイゾーの話に耳を傾けた。

「ここに必要なのは、暮らしていく上で何をやるかではなく、何が出来るかじゃよ。金を貰うために何かをやっていればいいってわけではない。それが、自分が暮らしていくのに必要か、誰かに必要とされるか。なんじゃと思う」

「必要‥」

 職人に、サイゾーが頷く。

「例えばパンは必要だ。だから焼いて自分で食べる。だけど、パンを焼くことが出来ない者だっている。そのパンを焼けない者は、でも、竹や木の枝で生活に必要な物を作ることは出来るかもしれない。パンと生活に必要な物を交換すれば二人とも助かる。そういう話じゃ」

「お礼言われたらうれしいもんな。もっとうまく出来るようになってもっと喜ばせたいと思うよな」

 トールが言った。他の職人が頷く。

「そうだな。必要とされるって大切だな。ここは、同じものを扱う店がないから、他の店を出し抜く努力とかしなくていい。一つしかないからどんなんでも売れる、とかじゃなくって必要とされてるから手を抜かない。なんか、最高だよ」

 と、ハッチ。職人たちのリーダー格だ。歳も三人の中で一番年上だった。

「俺ら、そんなに腕がいいって褒めれた事ないけど、水漏ったとか苦情は受けた事ない。無責任な仕事だけはしてこなかったつもりだ」

 こう言ったのは、オウル。他の職人たちも頷く。

「俺たち、ここで頑張っていこうかな」

 と、トール。ほかの二人も頷く。

「サイゾーさんもいるしな」

 職人たちは、今までで一番、自分が職人であることを誇りに思えた。これからも、もっと頑張ろうと、思えた。そして、ドラゴンマスターに興味も関心もなかった彼らも、サイゾーのファンになったのだ。サイゾーには、そんな人間としての魅力があった。

「ところで、トール。その鳩はなんだ? 国から連れて来てたよな。ペットか? 」

 褒められて照れくさいサイゾーが話題を変えた。

「ええ。伝書鳩なんです。今朝、七の国の新聞社の友達から七の国ニュースがとどいたんです。大きなニュースがあったら教えてくれるよう、お願いしてて。‥なにぶん超絶遠いですから、毎日ってわけにはいきませんし、最新のニュースってわけにもいきませんが」

 トールが足にくくられた紙をほどきながら言った。

「大きなニュースがあったわけだな。で、何が書いてある? 」

 ハッチが横から覗き込む。トールはまだ紙をほどけていない。道中落ちない様にしっかりとくくってある。

「どれどれ」

 やっとほどいた手紙を、今度は開くのに手間取るトールから手紙をとり、器用に開けるとオウルが声に出して手紙を読み始めた。

 若者の識字率が100%ってわけではないが、この三人は字が読めた。ずっと幼い頃から、マンゴストーンとココに教えてもらっていたからだ。簡単な算数も教えてもらっている。おかげで、大工の仲間からは重宝されていた。

「王様ドラゴンを盗まれる。だって」

「え? 」

 サイゾーが手紙を覗き込む。

 オウルがさらに読み進める。

「王様の発注したドラゴンが、輸送中に何者かに盗まれたらしい。国際警察が犯人を捜しているのだけど、未だ犯人は捕まっていない。しかも、この頃各国で、こんな輸送中のドラゴンを盗まれる事件が増えてるんだって」

「なんで捕まらないんだろ」

 と、トール。

「転売しようと思っても、結構目立つだろうし‥」

「そもそも、輸送っていっても、‥目立つぞ。子供ドラゴンっていっても、大きいからな」

 と、オウルとハッチ。

「それに、置いておく場所とかもいるだろ? こっそり飼育するにも費用も掛かるし」

「同じ犯人って考えたら、‥場所だけでも大変なことになるぞ。バレないってことは、‥まあないわな。生きてないって考えるのが、‥妥当かな。敵国が軍事的に経済的に有利にならないように邪魔をする的な‥感じかな? 」

「そう‥考えた方が妥当じゃないか? 飼育してたら、ドラゴン適正飼育委員のパトロールでばれるだろ」

 ドラゴン適正飼育委員とは、二の国の中に作られた国際組織で、その名の通り、どこかでドラゴンが不正な飼育をされていないか、飼育数は守られているか登録は正しくされているか等をパトロールしている組織なのだ。違反すると、罰則が厳しいので有名だ。

「外に出てなきゃ、結構ばれない気もする。豪邸に住む五の国の大富豪とかが家の中で買ってるんじゃない? 」

「なんで五の国限定」

「五の国が一番金持ちだから。家もデカい家多いし」

「違いねぇ」

 三人は笑いあってこの話は終わった。しかし、サイゾーは嫌な予感を感じていた。

「‥‥」



 ドラゴンを集めている者がいる‥?


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