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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
一章 憧れは、憧れのままが一番幸せって話
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2.始まってしまった旅

 何もかもが期待に輝いている旅の始まり。マンゴスチーンの心は期待と希望に溢れていた。例えその道中が長い険しい旅になろうとも、その先にあるのは間違いなく自分が望んでいた世界だ。

 の、はずだった。

「‥‥」

 実際、道中は辛いものだった。空の上特有の天候や気流。激しい風雪に視界が無くなったりすることもあった。そして何よりも長い距離。その旅はまさに長く険しいものだった。

 三日もの長旅の末、ようやくたどり着いた一の国の地面を踏んだ瞬間、マンゴスチーンは自分の目を疑った。

 何なんだここは‥‥?

 眼前に広がる、畑、畑、畑! その畑の向こうには延々とビニルハウスが広がっている。ドラゴンの国というよりはむしろ農業大国だ。

「? ? ? 」

 いや、それが悪いわけではないんだけど、なんだ? この脱力感は?

 マンゴスチーンは、力なく座り込んだ。

「どうした? 疲れたか? まあ、今日はゆっくりと休めばいい。明日からは忙しくなるから。ドラゴンも休ませてあげないとな」

 サイゾーが笑顔で言った。

 ‥この距離を根も上げずについてくるとはな。今どきの若者にしてはやるじゃないか。自分はなかなかの拾い物をしたぞ。

 会心の笑顔であった。しかし、(だまされたと思い込んでいる)マンゴスチーンには、その笑顔までが疑わしい。

 あの笑顔は、何もかも予想通り。してやったりという顔だ! 

 マンゴスチーンは思った。

 確かにサイゾーは「ドラゴンを見に来るか? 」とは言ったが、一の国がドラゴン生産国だと言ったわけではない。そこに行けば何かある、と思ったのはマンゴスチーンの勝手な思い込みなだけなのだ。しかし、マンゴスチーンは、いぶかしそうにサイゾーを見た。

 ‥分からない。自分を連れてきたサイゾーの目的はなんなんだ? これでは、まるで誘拐じゃないか! いや、まるでじゃなくて誘拐だ。では、その目的はなんなのだ? サイゾーは自分を誘拐して、誰に何を要求しようとしているのだ? それが分からない。マンゴスチーンは、自己紹介で自分が七の国の王子だということを言った。自分を人質にして七の国に何らかの要求をしようというのだろうか? いや、自己紹介をしたのは既に行くことが決まって飛び始めた時だ。

 サイゾーに対する疑惑は深まるばかりだ。

 しかしながら、(事実はともあれ)サイゾーにしてみては、マンゴスチーンを誘拐したつもりはない。弟子を勧誘したに過ぎないのだ。

「それとも、ホームシックか? まあ、急に出てきちゃったから、親御さんも心配しているだろうねえ。もっとも、七の国の君の家に知らせようと手紙を書いても、着くのにどれ位かかるか」

 折角連れて来た弟子を逃がすわけにはいかない。サイゾーは、ちょっと心配するそぶりを見せた。つまりこれはサイゾーの「そんなことを気にしてくれる、この人はなんていい人だろう」アピールだった。

 しかし、サイゾーに疑惑を抱いているマンゴスチーンには、「帰りたくても帰れないだろう」という脅し文句にしか聞こえない。

 ここまで三日かかった。それも、長旅に慣れていないマンゴスチーンのドラゴンを休ませる為に何回か地上に降りた以外はほとんど飛びっぱなしで、だ。しかも、マンゴスチーンは前を飛ぶサイゾーについて来るのに精一杯だったから道だってまともに覚えていない。

 と、サイゾーは考えているのだろう。と。

「まして、帰るなんてことできやしない‥」

 言った!

 マンゴスチーンの中では、サイゾーが自分を誘拐したことが確定した。

 だけど、マンゴスチーンは打ちのめされていなかった。マンゴスチーンには、人並み外れた方向感覚があったからなのだ。サイゾーの後ろを必死で付いていきながらも、マンゴスチーンはその場所の正確な位置は分かっていた。つまり、マンゴスチーンの頭には帰り道のルートは完全にはいっていたのだ。

 ‥サイゾーさんはさっき、五の国から東に四の国、南西に三の国そして西に二の国と飛んだ。その時は「あれ? 五の国から直接二の国へ飛んだ方が近かったんじゃないか? こっちの道の方が安全なのかな? 」なんて単純に思っていたけど、まさかその目的が、わざわざ遠回りして、帰る道をわからなくさせることだったとは! 

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