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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
二章 マンゴスチーン青年
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8.マンゴスチーン里帰りをする。

「では、ベッドを作っていきますね。マンゴスチーンさんは、随分と背が高いんですね。長めに作らないといけないですね。痩せてらっしゃるから幅は通常でいいですかね。大きめに作りますか? 」

 サティがデザインを提案し、ダウルは材料を吟味している。

 「この材質だったら、そのデザインは無理だ」とか、「ここにこれ位の荷重がかかるから、この長さはどのくらいで」とか、サティとダウルは初めて仕事をするとは思えない程息があっている。

「まずは、身長を測りましょう」

 女性陣も、同じく見事な連携だ。手際よく道具箱から道具を取り出しにかかる。

 まずはマンゴスチーン、そしてチサと順番に計測していく。

 数値をノートに記入しながら、

「移動させるのが大変だから、お家の方で作りやしょうか。お宅はどちらで? 」

 と、ダウルが愛想のいい笑顔で尋ねる。

 マンゴスチーンは眉をちょっと寄せて困った様な顔をすると

「新居で使うつもりなんですが、まだできていないんです。だからいいです。家が出来たらどうしてでも移動させますから、取りあえずはあっちの洞窟に」

 と、今寝泊まりしているサイゾーの洞窟を指さしてから、言った。

 いつもの穏やかな口調より若干熱のこもった口調に、

「よっぽどベッドが欲しいんでやすね」

 ダウルが苦笑する。

「‥‥」

 場所的にベッドが置けないって昨日言って無かったか? と家族中が思ったが、あえて何も言わなかった。

 本当に「よほどベットが欲しい」のだろう。

 マンゴスチーンが、は‥っと気付いたような顔になる。

 そしてすぐ、顔をいつもの穏やかな表情に戻すと

「‥そうだった。家が早急にいるんだった。七の国に行こう」

 小さく呟き、

「サイゾーさん。お願いできますか? 」

 サイゾーを振り向いた。

「ああいいよ。俺もその方がいい」

 サイゾーが嬉しそうに頷いた。

 その方‥ここでベットが出来るのをじっと待っている

 より、

 マンゴスチーンと七の国に行く方が、いい。

 サイゾーはいつもうろうろしているせいで、ひとところに落ち着くのが苦手なんだ。

「チサさんも。‥ついて来ていただいていいでしょうか? 」

 マンゴスチーンがチサを振り向いて言った。

「はい」

 ちょっと躊躇して、微かに頬を染めたチサが頷いた。

「よかった! 」 

 頷いてもらったことに、マンゴスチーンはほっと胸をなでおろすと、ふわりとチサに微笑んで、素直な気持ちを言葉にした。

 末っ子で、割と自由に過ごさせてもらってきたマンゴスチーンは、兄弟の中で一人だけ、素直に感情を表に出す。

 常に穏やかで人好きのする微笑みは、外交面で欠かせない社交術だが、これとて別に学んで得たものでは無い。ただ、本人の性格的なものだ。

 にこにこと上機嫌な表情を隠さずに、

「では。お義母さん、留守をお願いします」

 魚とメロンの夕飯を運んできたハナに、マンゴスチーンがチサを連れて行く了承と、留守のお願いをすると

「いいわよ」

 あっさりと、ハナは請け負った。

 ハナの後ろからパンなどを運んできた妹たちも頷く。

「家のことは任せておいて? 」



 チサとハナ。顔は似ているが、この二人は性格がまるで違う。ハナはさばさばしていて社交的だが、チサは大人しい。ワンマンな父親とさばさばした母親のもとに生まれ、下には妹たちもいて、幼い頃から「自分がしっかりしなければ‥」と育ったためか、責任感が強い。

 無駄なことを話さず、黙々と、しなければならないことをするタイプの大人しい子供に育ったのだろう。いつしかそれが彼女の生きがいになっている節もある。頼られるのが嫌いなわけではないのだ。

 そんな姉に頼り切った様に明るく自由なのは三女のミチで、ミチが一番父親の性格に似ている。

 自由で、責任が無いから、ただ明るくって優しい。自分が家族を明るくしなくちゃって使命感を持っていて、家族がギスギスしてたら、間に入っていって場を盛り上げる、家族のムードメーカ―的存在だ。

 そして、また母親に似てさばさばしているのは、モモ。チサの元でチサの指示に従いながら、家の手伝いをこなす。しっかりしていて、チサが見落としている仕事なんかを黙ってこなし、だけど確認を取らないので偶に間違っている。チサはそれを黙ってカバーして、何かの折に、正しい方法をモモに教える。モモは案外自尊心が高いから人前で間違いを指摘されるのを嫌う。だけど、こうして別な時に正しい方法を教えたら、「ああそうだったか、あの時は間違っていたか」と気付き、「ごめん」と謝る素直さを持っている。

 短時間ではあるが、三姉妹とその両親を観察して、その人となりが何となくわかって来た。

 ‥私と一番近いのは、多分末っ子という立場的にもミチちゃんだろうな‥。

 ‥妹(弟)というのは、一番上の姉(兄)を頼ってしまうもんなんだよね。自分もそうだった。

 と、自身も三人兄弟の三番目であるマンゴスチーンは思った。何処かで頼りにしてしまう妹(弟)の気持ちはよくわかる。

 でも、‥兄(姉)の気持ちは思えば今まで考えてこなかった‥。

 ‥皆に頼られ、無理していないわけではなかった。父親が不在なのも寂しくないわけでは無かった。

 長女・チサのことである。

 マンゴスチーンは、前回のことを肝に銘じようと心の片隅で常に思っている。

 ‥ネコにされちゃうかもしれないし。



「はあー」

 サティがため息をつく。

「本当にマンゴスチーンさんはハンサムだなあ。背も高いし、スマートだし。こう‥なんだか身のこなしとか着こなしも優雅だし。どこかの王子様みたいだよ」

 どこか、うっとしとした上気した様な顔をみて、テーブルにパンを置いたミチがくすくす笑う。

「マンゴスチーンは、本当の王子だよ。七の国の」

「ええ? 」

 サティが驚いてマンゴスチーンを二度見したのを、七の国行きの準備を始めたマンゴスチーンは気付いていなかった。

 さっさとすることを確認して移動の準備をする。マンゴスチーンは行動が速い。このあたりサイゾーとマンゴスチーンは似ている。

「メロンの水やりも頼む」

 と、サイゾーも旅行前のいつもの指示出し。

 留守中、いつも水やりを任されていたのはチサだったが、今度は同行するので、ハナが水やり係に認定された。

「どうやったらいいのかしら。後で教えて行ってね」

 サイゾーがメロンつくりを始めた時はネコだったから、ハナはメロンつくりのことをわかっていない。

「分かった」

 サイゾーが請け負う。マンゴスチーンが今まで見てきて分かったのだけれど、サイゾーは妻に弱い。今も、ちょっと緊張した様子で返事しているように見えた。

「ミチ、いつものようにドラゴンの世話は任せた」

 次に、ミチに振り返ってサイゾーが言った。マンゴスチーン観察結果によると、サイゾーはミチと話すのが一番楽な様だ。妻の次にはチサと話すときが緊張しているようだ。

‥今までほったらかしてきた罪滅ぼしだろうか? 

理由はよくわからない。ただ女家系における父親の居心地の悪さ、って感じがして、マンゴスチーンはちょっと同情した。(同時に、明日は我が身という恐れもなくは、ない)

「はい! 」

 ミチが元気よく返事して、サイゾーがミチの頭を撫ぜる。

 ん? いつものように?

 マンゴスチーンはミチを振り向いた。なんてことは無い、八歳の小さな子供だ。

「ドラゴンは留守の間、ミチちゃんが見ていたんですか! 」

 ミチはにこにこと笑っている。あんなに大きなドラゴンの世話ができる様にはとても思えない。一番大きなドラゴンにサイゾーが乗って行っているから、残っている方は小さい方だとはいえ‥。

「ハチマキは大人しいよ。イマイチは力が強いけど」

 にこにことミチが言う。

「ハチマキではない。ハナミチだ。因みに大きな方はイカズチだ」

 サイゾーがミチに軽く訂正する。そして、目を見開いているマンゴスチーンに

「あいつは、才能がある。エサやりやブラッシングはもちろん、近場しか許していないが、一人で散歩だってさせられる。将来いいドラゴンマスターになるじゃろう」

 そう説明した。

「へー‥」

 感心するマンゴスチーン。そして、やたら羨ましかった。

 ‥天才ドラゴンマスターの血筋に、指導。まさにサラブレッドじゃないか! 

 そして何より、その天才が認める才能とセンス‥。それは努力して勝ち取れるものではない。打ちのめされたが、負けるもんか、とも思った。

「馬は牧場まで乗って行って、いつも通りジョセフに預けないとな」

 サイゾーは、口に出してその後の段取りを確認し始めた。

「ミチも今度は一緒に連れて行ってね! ハチマキに乗って行くから! 」

 ミチが明るくサイゾーに頼むのを、

「ミチ、ハチマキじゃなくて、ハナマキよ」

 モモがちょっと冷めた様な顔で間違いを訂正する。

 家の中で、モモはちょっと毛色が違う。クールで‥表情が硬い。

 だから、パッと目は怖く見える。話すと何でもない子供なんだけど、多分反抗期もあるんだろう。

 そのなにか子供とは思えない迫力に、

「‥ハナマキでもない。ハナミチじゃ‥」

 と、言いにくいサイゾーだった。

 パンを千切りながら

「なんだかよくわかりやせんけど、面白そうな家族ですね」

 ダウルが感心して言い、ダウル婦人が微笑んで頷く。

「‥王子様‥。まさかね‥」

 サティは呟いて、一人何だかよくわからない笑いを浮かべた。


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