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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
二章 マンゴスチーン青年
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6.マンゴスチーンは南国の夏の暑さが想像できない

「この前は遠回りしたでしょう。二日で行けますよ」

 しれっとした顔でマンゴスチーンが言う。

「ばれていたか。だが二日。わしなら、一日じゃ。メロンを載せなきゃ楽勝だ。一緒に行ってやろうか? まあ急にマンゴスチーンのドラゴンが一日で行くのは無理だろうが、近道を教えてやろう」

 サイゾーの強行突破の旅を思い出してちょっとげんなりしたが、考えてみるとドラゴンが一頭より二頭の方が都合がいい。荷物も乗るし、人も連れて来れる。それは、四の国の旅にも言えた。マンゴスチーンには運びたい荷物の他に、連れて来たい人もいたのだ。

「それでは、四の国へもご同行願えますか? その方が荷物や人が運べる」

 だから、マンゴスチーンはサイゾーの提案を素直に喜び、大きく頷くとサイゾーに改めてお願いした。

「人? 」

 サイゾーが聞き返す。

「連れてきましょう。ベッドつくりの職人を。ベッドを買って送ってもらうよりこちらでつくってもらった方が早い気がします」

 サイゾーの表情がぱっと明るくなる。それはいい、面白いことを考えた! というような顔だ。

「いいね! 一の国は住人が少なすぎると思ってたんじゃ。ついでに居ついてもらおう。‥いや、帰りたいというなら止めないが」

 それ、ホントに本人の意志ですか? 絶対違いますよね。

止めないが、送りもしない。

 ‥ここ、孤島だから、送ってもらわないと絶対にい帰れませんよね‥。

 ‥一の国人さらい事件の幕開けだった。

「‥用事がすんだら返してあげてくださいよ‥」

 マンゴスチーンが呆れた顔をする。それをサイゾーが聞いていたか聞いていなかったかは、定かではない。

 否、絶対に‥返す気はないな。‥さっきから、にやにやしてるし。嫌な予感しかないし、‥きっと、予感だけでないだろう。

 現に、自分も「そのような状況」だ。だけど、今ここにいるのは自分の意志だから、‥案外その人たちも自分の意志で残りたくなる‥かもしれない。

 それは、あくまでも強制ではなく、その人たちの意志だ。

「四の国は涼しいから今からの季節はいいぞ。チサが小さかった時は、夏だけ四の国で過ごしたものだ。近いしな。避暑ってやつだな」

 上機嫌な顔でサイゾーが言った。

「冬は寒くなるってことですか? 」

 マンゴスチーンが少し首を傾げる。

「寒いっていっても、マンゴスチーンの国ほどではないぞ、あそこの冬は、外に置いておいたバナナで釘が打てるだろ? 四の国は、湖に張った氷でスケートをしようとしたら、氷が割れてハマって大変って位の寒さしかならない」

 ‥やったんだろうなあ。きっと。

 マンゴスチーンは内心苦笑したが、それは表情には出なかった。‥王子様って奴は、そう感情が表にストレートに出ないものなのだ。訓練されてるからね。

「え~。いいなぁ。四の国、私も行きたい~」

 モモとミチがうらやましそうな顔をする。

「お姉様だけいいなあ。私たちは行ったことないんでしょ? 」

 頬を膨らませて抗議するモモに、ハナは首を傾げる。

「モモも何回か行ったわよ? 」

 ハナが指でモモの歳を数えながら言った。

 モモは不満そうに「覚えてない‥」と唇をとんがらせた。チサが小さい頃だったら、「産まれてはいたけれど」って年だろう。そんなの、覚えてなくて当然だ。

「ミチは? 」 

 ミチはさらに不機嫌な顔をして、家族を見た。

「ミチは‥」

 行ったたことはない。

 言い淀んだのは、チサだった。

 ちょうどミチが三歳の時からハナはネコだったわけだ。それを思って、チサがまた責任を感じそうになるのを

「まあ、いいじゃない。今度は皆で一緒に行きましょうね」

ハナが明るい声で遮った。ヒマワリが咲く様な明るい笑顔だ。と、マンゴスチーンは思った。

「ここは、ホントに夏が暑いからね」

その笑顔につられて笑顔になったが、その発言にはひっかかるものを感じた。

‥今より、さらに暑いのか‥。

「暑いんですか? 」

 夏が近づき、この頃は日中、かなり暑い。今でさえマンゴスチーンには既に暑いんだ。だから、ハナの言葉にマンゴスチーンは驚きを隠せなかった。

 ‥どれくらいの暑さだろう? 想像がつかない‥

「暑かったら泳げばいいんだよ。海も川もあるし」

 ミチが明るい声をだす。

「王子様だって夏は泳ぐんでしょ? 」

「海や川では泳ぎませんね。私の国の人たちは湖で泳ぎましたよ」

 短いが、夏はある。夏になったら、大きな湖に泳ぎに行った。

 だけど、涼を取るためというより、「夏が来たのだから、折角だから」という様なもので、長時間浸かっていたら寒くなって、上がる。

 そういう「風物詩」的なものなんだ。

 マンゴスチーンは、ココと鍛錬の為に湖に入りひたすら泳いでいたのだが。(←だから、決して楽しいものではなかった)

 因みに、雪解け水が溶けだす川は水の流れが速く、水が深く、海は荒波といった感じで深く潮の流れも速く、厳しいものだった。

 ここの、底が見えている(実際は歩けるほどは浅くはないのだが、底は見えている)青く透明な海とは違う。

 ‥確かに、この辺りの海なら泳げそうだが‥。

「湖は知らないなあ。池みたいなもの? 」

 ミチが首を傾げた。

「お互いに知らないことは、多いね」

 マンゴスチーンが微笑んだ。

 穏やかで優雅な微笑みに、ミチはほう、とため息をつく。

 思わずって感じだ。

 生まれながら王子様のマンゴスチーンは、仕草が本当に美しい。

「夏がキツいのは、夜でしょう。夜に泳ぐわけにはいかない。‥寝苦しいってのは最悪よね」

 は、モモの言葉。

「さらに寝苦しい‥」

 今寝苦しいのは、‥背中の痛みだ。

 だが、更に暑くて寝苦しいってどんなだろう。‥想像すらできないが、怖い。

 寒いところ出身のマンゴスチーンは、まだ来ぬ未知の「夏真っ盛り」の暑さを思い、知らずため息をついた。

「じゃあ行こう。すぐ行こう。いやぁ、久し振りだな! 」

 サイゾーはまるで遠足に行くように楽しそうだ。そんな父親をみてチサ達はほほ笑んだ。

「ドラゴンたちもこの頃運動不足でなまっているだろうしな」

 ぶんぶん、と腕を振り回す。運動不足は、サイゾーも同じらしい。

「‥そうですね! 」

 ドラゴンと聞いて、マンゴスチーンは「は」っと現実に引き戻された。

‥毎日、島の周りを散歩に連れて行っているとはいえ、この頃は長距離は飛んでいない。七の国にいた時には、毎日、半日はドラゴンに乗っていたのに、こんな事初めてだな。

マンゴスチーンは思った。

「人を載せなければいけないから、鞍でもつけるか。お客用に。慣れないと、長距離の移動中尻が痛いからな」

 うきうきと用意するサイゾーを見ると、家にいてほしかったチサの気持ちも、サイゾーの気持ちも分かり、マンゴスチーンは複雑な気持ちになった。

 ‥自分も家族を顧みなくなるかもしれない。今回の事は常に戒めとして心に留めておかなければいけないな。

 と思った。

 ‥ネコにされちゃうかもしれないしな。

 とも。ちらり、と今は穏やかに微笑んでいるチサの横顔を見た。

「では、明日の朝出発だ! 」

「‥。はいっ! 」

 ‥ともかく。四の国は初めてだから楽しみだ! 

 マンゴスチーンは期待に胸を膨らませた。

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