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イケメン王子とメロンな親父  作者: 大野 大樹
二章 マンゴスチーン青年
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5.マンゴスチーン・悲願のベッド

 ‥昨日の、何だったんだろう。

 寝付けなかったチサが、やっとうつらうつら仕掛けたのは明け方で、一時間もしないうちに空が少し緑色になり始めた。

 夜が明けるのだ。

 緑色と、黄色に染まった空は美しい。

 そんな空をぼんやり見ていると、いつもの時間に少し早かったが、チサは起きることにした。

 周りはまだ寝ている様だ。

 隣にいつもいたネコは今ではお母様の姿をしていて、昨日のことが全部本当だったと確かに分かる。

 どこか満足げな父・サイゾー。

 いつもより嬉しそうな顔をして眠る妹たち。

 そして、‥うなされているマンゴスチーン。


 ‥やっぱり、嫌だったのかな。


 と心配になったら、マンゴスチーンの寝言が聞こえた。‥寝言というか、完璧にうなされている。

 曰く

 ‥背中が痛い。

「‥王子様だものね」

 思って、くすり、と笑ってしまった。

 長い睫毛、絹の様な金の髪。白い肌。

 その人は、何もかもが美しくって、何もかもが「実用向き」ではない様に見えた。

「しっかりしなきゃ、あんなこと、お父様たちが勝手に決めたことなんだから。私まで一緒になって騒いでちゃだめだわ」



 成り行きで結婚することになったが、マンゴスチーンには、不満はない。チサは優しいし美人だし。(ただ、もしかして、ちょっと思ったより気が強いんじゃないかなあという気は若干するが)一の国の暮らしも、慣れるとそこそこ快適だ。


 外で、魚とパンの朝食を皆でとっている時、

「新居を建てます」

 マンゴスチーンが突如、サイゾーに言った。

「え! 」

 マンゴスチーンの前向きな島移住の意志にチサは焦る。

 この人まで、一体何を言っているんだ! 

 自分は、島に住んでいる限り、きっと他に出会いはない。でも。マンゴスチーンは違う。

 ここの外でも暮らせる。暮らすべきだろう。

 誰とでも結婚できる。

 というか、その方がいい。

「あの‥」

 と、言いかけたら

「洞窟が他にもあると思ったんだが」

 サイゾーがその言葉にかぶせて来る。「チサには何も言わせない」ということだろうか。

 そういえば、サイゾーが最近(マンゴスチーンがここに来る前だ)「チサもそろそろ結婚するか‥」「わしが探してくるから、安心しておれ」と言っていた。

 ‥本気だったのか。

 しかも、普通、誘拐してくる?! 

 チサは、怖くなって少し震えた。

 ‥自分の父親が怖い。



「ほら、これだ」

 食事の手を止めて地図を出して来ようとするのを、マンゴスチーンが制した。

「いえ」

「一緒に住めばいいじゃない」

 妹たちも不満そうだ。しかし

「建てます」

 マンゴスチーンがもう一度繰り返した。マンゴスチーンの決心は固かった。

 チサがマンゴスチーンを見た。マンゴスチーンはチサに小さく頷きかけ

「ベッドや家具もいるし」

 と付け加えた。ついでに、といった感じだったが、本当のところこれがマンゴスチーンにとって一番急ぎたいことだった。

「あの洞窟に、ベッドは置けません。広さ的に」

「ベッド? 」

 ミチが首を傾げる。

 今あの洞窟には、ベッドがない。

 なんてことはない。サイゾーが気にしないからだ。

 サイゾーも二の国暮らしの時には、寮にベッドはあった。だけど、売れっ子のドラゴンマスターであるサイゾーは殆どその家に戻ることはなかった。

 外に出ていたら、野宿がほとんどだ。

 だから、サイゾーは野宿になれている。そして、今の暮らしもその延長なのだ。

 別に、一の国の住人もベットを知らないわけではない。普通にベットを使用しているだろう。

 だのに、だ。

 ‥ハナの反対はあったが、サイゾーが導入する気がないのだから、仕方ない。ベットで寝たことのない子供たちは気にすらならない、で、今に至っていた。



「ベッドって何? 」

 と、聞く可哀そうな末の娘に、ハナは涙する。そんなミチにマンゴスチーンは優しく

「寝るための家具だよ。‥背中が痛くならないんだ」

 と、説明している。

 ‥勘違いしないでよ! 私たちがベッドを知らないわけではないのだからね! 

 それだけは、声を大にして言いたかったハナだった。

「痛い? 慣れてるよ。いっぱい藁とかひいてるし」

「ん~。そうだねえ」

 マンゴスチーンは苦笑した。

 サイゾーは「ベッドねぇ、ふうん。そんなもんかねえ。でもまあ、そうなのかねえ。やっぱり王子様だねえ」なんて独り言を言いながら、

「家具なら、四の国だな」

 とアドバイスした。

 ‥あ! 四の国は家具の国なんだ! 

 マンゴスチーンは、またパズルの足りないピースを拾った様な気分になった。

 分からなかったことが、分かるというのは本当に嬉しい。

「あそこは林業が盛んだから木がいいんだ。それに四の国の家具職人は腕がいい。‥でもベッド程の大きさのものを運ぼうと思ったら、船便になるから時間が掛かるぞ。別途送料も高いし。ベッドに別途送料を取られる。なかなか面白いダジャレだな」

 サイゾーが自分のダジャレにどや顔をするのを、

「だからここにはベッドがないのですね」

 マンゴスチーンは、あっさり聞き流した。

「というか、いらないだろ。別に」

 サイゾーは自分の会心のギャグを無視されて不満そうだ。マンゴスチーンは他のことを考えるのに夢中で、そのことには気付いていないようだった。あとは独り言のように

「七の国風の家も作りたいから、七の国にも行って‥。あ、そうだ。ついでに結婚の報告もしてこよう。七の国にはチサさんも一緒に来てください。いいところですよ」

 チサの方を見て微笑む。そして、すぐに前に向き替えると、一際力を込めて

「だけど、まずはベッドだな」

 マンゴスチーンは譲らない。マンゴスチーンたちの引っ越しには反対の妹たちだったが、それに反対はなかった。

「私たちもベッド欲しい! 」

「ベッドで寝てみたい! 」

 と、興味津々だ。サイゾーは

「七の国か。三日はドラゴンに乗るがな」

 にやり、と笑う。

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