一話 神話の祭
一話 神話の祭
これは、数奇な宿命に翻弄され、身を焦がした、勇敢なる英雄の物語だ。
「ふぅ、ふぅ。なんだ、さっきの化け物は…」
息を整えたのも束の間、岩が砕ける音と共に、背後に殺気を感じる。
「ヴァアアアアアア」
咆哮を放つそれは、人とは比べものにならないほど大きく醜い、幻想ででてくるような、そんな怪物の姿だった。
「なんでこんなことになってるんだよ‼︎ 俺はただ、ダンジョン祭に参加して、迷宮のダンジョンを攻略するために来たのに、なんだよこれは」
松明に照らされ、赤く染められた地面に転がる無数の死体と、暴れ回る怪物の姿が目に映る。
「こんなの聞いてないぞ…しかもあの怪物達は、まるで神話の化け物達じゃないか!」
「おお、お主良く知っているなこの化け物どもが神話の汚物だということを」
振り向くと、そこには輝く白銀の髪の少女がいた。
「お主の格好からして、村出身の者と思うのだが、どうだ当たっておるか?」
白銀の少女は、惨劇が繰り広げられているというのに、とても冷静に平然としている。
「…そ、そうだけど、あなたは?」
一瞬の間が生まれ、遅れて問いに答える。この状況におかれたのならば、この反応こそが当たり前なのだ。しかし、白銀の少女は当たり前を凌駕し、冷静に淡々と問いに答える。
「おお、そうだな。妾はトゥール国の王女だ。訳あって祭に参加したんだが、仲間の者と逸れてしまってな、お主頭の回転も悪くないし、妾と組まぬか?このような場で死にとうないしな」
生きることしか考えられないほど、パニックになっていたのに、この一瞬の時の中に、これから始まる何かを終わらせるために全てが燃え上がるほどに熱くなったのを覚えている。
「僕も死にたくないです! だから手を組みましょう」
「よかった! よろしくな」
白銀の少女は僕の手を取り、笑みを浮かべた。
「この広間は化物の巣窟と化しておる。ひとまずは、細道へと動くとしよう」
悲鳴や助けをこう声が響き渡る中、化物どもの死界を通り、細道へと向かう。自分が助かる為にと、覚悟を決め他を犠牲にして歩いていたユウの目に、叩き殺されそうになる、まだ幼さの残る少女の姿が映った。ここへ来るまでに、何人もの人を犠牲にして来たというのに、その少女を見た途端、何かがユウの体を乗っ取るかのように熱で覆い尽くし、ユウの体は勝手に少女の元へと動いていた。
「ウォォオオ」
「ドガン」
間一髪少女を救ったは良いものの、体が勝手に動いたことに戸惑い、ましてや、その後のことを考えていなかったユウはパニック状態に陥った。しかし化物は動きを止めず、もう一度腕を振りかぶった。
ユウは、パニック状態で死が近づいている事にさえ、気が付いていなかった。
「しょうがない奴だな。ここを越えれば細道へとゆけるし手を貸してやろう」
白銀の少女が髪を千切り、息を吹きかけると驚く事に少女の髪は白竜に変化した。
『ゆけ』




