始まり始まり
「これが、最後だ。もしも、これでも駄目なんだったら、ここからはどちらかが滅ぶまでやり合うしかなくなる。分かってるよな?」
「勿論。戦いなんて馬鹿のやる事さ、僕は馬鹿じゃない、分かってるだろ?」
俺は後にも先にも、彼以上の馬鹿を見た事がなかった。
ただ、そう言ってしまえば、結局、いつもの繰り返しになって、こちらが折れるまで諦めないのだから、言わない方が良いに決まってる。
「じゃあ、伝えるぞ、相手の言い分はこうだ」
内容を言おうとした俺を遮り、彼は笑顔で首を振る。
「お断りだ。阿呆と交渉するなんて、馬鹿のやる事だ」
「おい、聞けって。とりあえず、聞いてから判断しろよ。何の為にこの俺が相手の元まで行って、条件を引き出してきたと思ってるんだ」
「何の為だって?そんなの決まってるじゃないか、僕が断る為さ」
「ああ、もう、お前のワガママには呆れるよ。じゃあ、最初から終始意見は変わらず、断るって事でいいんだな?」
「お断りだ。僕は馬鹿じゃないからな」
「分かった、分かった、俺は伝えてくるからな、戦いを始めるからな?」
彼は肩を竦め、首を何度も振る。
呆れて何も言えないって風情だったが、それは俺の役割だ。
そう、これは彼、ラザファムの人生を一部切り取った物語だ。
ちなみに俺はこの戦いで死んでしまったので、ラザファムと俺の物語ではない。
あくまでも、ラザファム個人の物語だ。
俺の名前?
まあ、そんなのどうだっていいじゃないか、ラザファムだって憶えてるか怪しいくらいだ…。