進む時代
皆が持ってる裏表。表を此の世とするのならのなら、これはあの世のお話、与太話。
魔界、ここは往古来今四方上下の即ち天地の獄。ここで生きるは定名ならざる者。白と黒とが骸の上で仲良く座っている。
永い永ーい時間の中、戦い飽きた者たちが治める彼の地の平穏は現状維持が暗黙の了解である。
それは此の世でも同じであり、箱庭の中でわいのわいのと輝き消える人間に、少なくとも高位のものは飽きることはなかった。その下の者は今日を生きることに感謝しても、飼いならされることに不満は言わない。
問題が起こるくらい増えるほどの豊かさはなく、それに愚痴を零す者もいる。でもそういうのは死んだら勝手に這い上がり歩き回って誰かの餌に、糧になる。
平和、そう、実に平和な世であった。
此の世で革命が起こるまで。
産業革命。工業革命とも呼ばれる18世紀半ばから19世紀にかけて起こったこれに合わせヨーロッパ諸国のGDPの増加、人口爆発、蒸気機関の実用化、世界同時不況、アフリカの植民地支配。
挙げていったらキリがない。これがたったの100年足らずで起きたのだ。平和ボケしていた魔界は今後この影響を大きく受け続けることとなる。
人口の増加による人の魂の価値の大暴落、流入する環境問題、革新派と保守派の対立に兵器の大量生産化。今までの人員体制でこれが処理できる国はなく、小国への分裂や離反、無法者や革命家の台頭が相次ぎ魔界はこれまでに類を見ない混乱と戦乱の世に突入する。
これは一つの永い時代を終わらせて、やっと歩き出した魔界の歩み。
忘れられた神は力を持たない。この文明の進歩は誰にも止められない。
打ちつけては引く波の様、沙羅双樹の花の色、盛者必衰の理の中。
これは魔界が二番目に輝いた時のお話。