2、TWO INVADERS
2053年7月5日 09:15 A国 非正規部隊メタルフォース アルテス支部
ブリーフィング
「レスト中将、この度の救出作戦失敗申し訳ございません」
「構わんよ、ラバン兵長。カフカスは前から怪しい動きはあった。それを黙って見ていた我々上層部にも非はある。」
「しかし、大切な新兵を多く失ってしまいました」
「それは非常に残念だ。だが悲しんでばかりいられないぞ兵長。カフカスの今の状況は?」
「かなり前から計画されていたようで、情報操作や物資補充のパイプなども既に整っている模様です。」
「私が指揮する予定の武装勢力の制圧作戦は他のやつにまかせるとしよう」
「恐れ入ります。しかし、情報操作のせいもありますが情報が少な過ぎますね」
「それは既に手を打ってある。カフカスの管理していた基地のひとつにスターとギアを送った。少なからずそこには情報があるだろう」
「スター軍曹とギア少尉ですか」
「ああ、奴ら今頃森の泥水にでも浸かってるんじゃないか。戻ってきて情報が手に入ったら君にも仕事をしてもらう」
「了解しました」
2053年7月5日 9:45 ダス地方森中
ドレイス・スター軍曹
臭い泥水の中で敵の見張りをやり過ごし、周りを警戒しながら前進を再開する。
「情報端末があるのはおそらく基地の中の飛行機工場だ。やつが保管場所を代えてなかったらな」
ギア少尉がそう言ったのを軽く頷いて聞きながら、そこまでの道を頭の中で思い出していた。
「まあバレなければ大丈夫だろう。お前とは長いこと一緒にやってるし、後ろは任せだぞ」
そう言って少尉は私の頭に拳を軽く当てた。
ギア少尉と私は二人で行う任務の時はよく一緒になるため自然と仲は良くなっていった。
「あー、情報端末を回収したあとの流れだけどな」
「情報端末を回収したら移動して迎えのヘリで脱出ですよね」
「分かってるんだったらいいが」
ほふく前進で草木の間を進んでいく。
少し行くと木が切られ開けているところにでた。そこには廃車のようになった装甲車があり、その横には手と足を縛られた男性が死んでいた。
「どうやら基地にいた奴でカフカスに反発して逃げようとしたらしいな」
車の中で今向かってる基地のバッチを見つけた少尉が言った。
「それですぐ処刑ですか。ひどい話ですね。」
しかも、死体を埋めることもしないとは。
しかし、この死体には悪いが私たちも死体を埋めている時間は無い。死体を一瞥して、私と少尉は先に進んだ。
進んだ先には監視塔があった。まあ、監視塔と言っても木で作られた簡素なものだが。
「よし、お前はまずはあそこからスナイパーライフルで俺が奥にある警備詰め所まで行くのを援護してくれ」
そう言うとギア少尉は走っていった。そして、私も自分の役割を果たすために監視塔に向かった。
監視塔には見つからないように登ろうとしたが、なにしろ木製のためぎしぎしと軋む音がでてしまったがばれた様子はなかったのでほっと胸をなで下ろした。上では椅子に座った兵士が一人うたた寝していた。思ったよりここの防御性能は低いのかもしれない。その兵士を後ろから声を上げないように口を押さえてナイフで排除した。
そして、スナイパーライフルを覗くと丁度ギア少尉が基地の入口付近にいた歩兵を後ろからナイフで仕留めたところだった。無線で位置に付いたことを知らせると少尉はこちらにオーケーのサインをだし前進を開始した。
「道沿いの家から歩兵3名。排除します。」
順調に少尉の前進の妨げとなる歩兵を排除していった。スナイパーライフルの腕には少し自信があったので複数の敵も焦らず対応することができた。スコープ越しに見た風景はなんだか自分がいる世界とは別の世界なようなそんな感覚を私は持っていた。しばらく援護を続け、警備詰め所に入った少尉から連絡が入った。
「警備詰め所に入ったが中には誰もいない。どういうことだ。」
その時、道の奥から大量の敵が現れた。上からスナイパーライフルで応戦するが、危険と判断して監視塔を降り、武器をアサルトライフルに持ち替えて、少尉と合流するために撃ちながら走って向かった。
「少尉、無事ですか?」
「ああ、大丈夫だ。俺がやらかしちまったらしいな。飛行機工場まで走って向かうぞ!」
なんとか少尉と合流して、詰め所の裏口から出て建物の屋根に上り工場を目指した。しかし、敵はそれでも追ってくる。
「くそっ、しつこいな!」
そんな言葉も出てしまう。飛び過ぎていく銃弾の音を聞いていると後ろから死神が追ってきているような気分になった。
二分くらいだろうか、屋根つたいにひたすら進んで行くと目標の工場が見えてきた。
「もうすぐだ!」
工場に向かって走り、中に入ると入口を閉め、コンテナを二人で押してふさいだ。裏口が無いことを確認し、目的の情報端末も予想通りそこにあったのでアップロードし回収した。
「それで、長くは持ちませんよあのバリケード。入ったは良いですが出られなくなりましたね」
「とりあえず、ここの部屋で使えるものがないか調べよう。俺は向こうの部屋を調べてくる」
そう言って廊下の奥に歩いて行った。
部屋には懐中電灯や傘などがあったがどれも壊れていて使い物にならないし、使えたとしてもそれで脱出できる手段が思いつかなかった。部屋にあった机の引き出しをあさっていたとき少尉の行った方向から大きな音と女性の悲鳴が聞こえた。
「女性?どういうことだ?」
不審に思いながらも少尉が調べていた部屋にいくと、そこでは泣いている女性とそれを見てあたふたしている少尉がいた。
「少尉、彼女は何者ですか。」
そう言うと彼女は私に気付いたようで、泣きながら抱きついてきた。
「いや、奥の部屋に捕まっていたんだが。俺が銃を構えながらドアを蹴破ったので驚いてしまったみたいで」
「だからって、なんで私に泣きついてくるんですか。少尉、セクハラでもしたんですか?」
「そんなことするわけ無いだろう!」
「本当ですか?」
すると、それを聞いていた彼女がすすり泣きながら説明した。
「違うんです。同性の人にお会いして、嬉しくってつい」
「だからって、いきなり抱きついてこないで下さい」
私はうんざりしながら自分と同じ女性の彼女を見た。