1、放たれた凶弾
初投稿です
2053年7月3日 12:00 A国 非正規部隊メタルフォース アルテス支部
スミス・バレル上等兵
「スミス知ってるか?
今日は本部からレスト中将が視察にきてるんだってよ」
午前の訓練終わりに幼馴染みのクラックに背中を思い切り叩かれながら言われた。
「知ってるよ。朝、隊長が言ってたろ」
「そだっけ?」
クラックは昔から人の話をあまり聞かないところがある。聞いてるときはしっかり聞いてる雰囲気をだしてるだけだ。
「なんか近々、中将自ら指揮する作戦があるらしいから」
「マジで?」
「それも聞いてなかったのか」
クラックに軽く説教しようとしたときだった、急にサイレンが鳴り基地の入口から仲間のジープが入ってきた。そこから血だらけの兵士が倒れ込みながら出てきた。それまでは賑やかだった兵士たちが一瞬静まり衛生兵を呼ぶ声などでまたすぐ賑やかになった。彼らはラパー川周辺の市街地で暴動を起こした民兵の制圧に行っていたはずだが。
「奴ら、どっかから大量に武器を仕入れてやがった」
帰ってきた一人の兵士が血を吐きながら言った
クラックが怪我人を衛生兵に渡して帰ってきたとき部隊長のラバン兵長から自分とクラックが所属する部隊を含めた5つの部隊が応援に行くと発表があった。訓練が終わってほっとしていたがまだ今日の命は保証されていないらしい。
2053年7月3日 15:00 ラパー川 川辺
スミス・バレル上等兵
俺達は着いてすぐ川辺で敵の攻撃を受け足止めを食らっていた。
「兵長!これじゃ前にすすめません!」
「踏ん張れ!まだ生き残ってる部隊を助け出さなきゃならん」
「でも、数が多すぎます」
「大丈夫だとっておきのを頼んどいた」
「とっておき?」
ラバン兵長が悪い笑みを浮かべた。ラバン兵長は体が大きく後ろにいつもショットガンを持っているがあまり使ったところを見たことがない。彼なら接近戦ではショットガンよりも普通に殴った方が効率が良さそうだ。そんな体格で顔も厳つい兵長が不敵に笑っていると正直不気味でしかない。
それからしばらく川辺の岩に隠れながら応戦しているとどこからか轟音が響いてきた。
「来た来た」
兵長のそんな声が耳に入り、はっと上を見上げたとき敵のいた向かいの川辺で大量の爆撃が行われた。
「民兵相手にやりすぎじゃないですか兵長」
「メタルフォースを怒らしたらこうなるってこった」
ほんとに兵長は容赦がない。だが、じっとはしてられない、
全員で装甲車に乗って移動を開始した。
「ここから先は市街地だから民間人もいる。気おつけなならんな。それに、民兵も向こうが撃ってこなけりゃ民間人と同じ扱いをしなならんしな。やっかいだな。気を付けろよ新兵」
隣りに座っていた日焼けぎみの熟練であろう兵士が新兵の俺に注意をしてきた。それに軽く頷いたとき自然に銃を持つ手に力が入る。やはり、この戦場の感じはまだ実戦に出るようになって短いといっても馴れないものだ。
市街地は気味が悪い程静かだった。
「静かすぎる。どこかに仲間もいるはずだが」
ラバン兵長が不安げに呟いた。空爆も市街地では使えない。
「以外とさっきの空爆でびびっちゃったんじゃ」
そんな冗談を助手席に座る兵士が言った時だった。
前の車両の銃座に座っていた兵士の頭から血が飛び散った。
その時俺は脳が回らずそういえばあいつ今度娘の結婚式だとか朝言ってたななどと考えていた。
「見えるか?敵の攻撃だ応戦しろ!」
抜けた広場の病院から敵は大量の銃弾を叩き込んできた。
「撃ちながら進め!広場を突っ切れ!」
兵長の指示で俺達の乗る装甲車は道端にいる敵を轢きながら無茶苦茶に進んだ。
「くそっ、くそっ」
運転手の焦る声が聞こえる。
ふと、運転手が息を飲むのが聞こえ前をみると、目の前の建物の屋根にRPGを構えた兵士が見えた。瞬間咄嗟に車を飛び出した。すると、後ろで車両が爆発し、その爆風で近くの家に転がり込んだ。そこには兵長やクラックと他の兵士たちも逃げ込んでいた。後ろを見れば隣にいた熟練兵士と運転手の死体が見えた。この場所では人の命はこんなあっさりと終わってしまう。
「二階に敵だー!」
そんな兵士の声を聞いたとき反射的に振り返ると敵が投げたスタングレネードが爆発した。目の前が真っ白になり耳鳴りがひどくなったとりあえず右に転がって移動しようとすると頬に銃弾がかすっていった。
もう少し早く移動しようとしていたらその銃弾は俺の右頬の皮でなく脳を通過していただろうと思うとぞっとした。
「打ち返して進め!」
やっと耳鳴りが収まったときラバン兵長の声が聞こえた。
アサルトライフルを階段に向けて撃ちながら仲間の怒声のなかを進む。
そして、二階を制圧したとき通信が入った。
「こちらブラボーチーム、病院内で敵に囲まれている」
「了解。聞こえたなお前ら」
どうやら生き残ったチームは病院内にいるようだ。だから敵が集まっていたのか願うことならもう少し敵の少ないところにいてほしかったがそうも言ってられない。幸い俺達がいた建物の二階から外の非常階段を降りれば病院はすぐだ。しかし、本当に敵の数が多いのに全員が銃を持っている。しかも、アサルトライフルだけでなくスナイパーライフルやRPGも大量に持っているようだ。一体どこから......
「ほら、ぼーっとすんな。病院に急ぐぞ」
クラックの声で俺の思考は遮られた。
病院には必死にたどり着いたがやはりそこは敵の巣窟だった。
「市街地から来る敵は我々が引き受けるお前逹は早くブラボーチームを助けてこい。後で回収地点で合流だ」
ラバン兵長がそう言ってるのが後ろから聞こえた。
「まだ、ブラボーチーム生き残ってるかな。
通信も繋がらないし」
「どちらにせよ死体を確認しなきゃならないから向かわないと」
クラックとそんな話をしながら廊下を制圧して進んだ。
同時刻 ブラボーチーム 病院内
シュテルム・カフカス隊長
この状況を終わらせることができる。
私の部下たちもそう思って心踊っているだろう。
救出部隊の到着が待ち遠しい。
救出部隊 病院内
スミス・バレル上等兵
民兵相手とはいえこちらはだいぶ数を減らしていた。
「あと少しでブラボーチームの反応があった場所だってのに」
クラックが応戦しながらつらそうな顔で言った。俺もそうだ早く作戦を終わらして基地に戻りたい。しかし、敵の弾幕は終わらない。
横の病室に入り弾を避けようとしたとき部屋から敵の兵士がナイフで斬りかかってきた。俺はそのナイフを持つ手を掴みそのまま足を掛けて転ばし胸にナイフを突き刺した。訓練のおかげかいきなりでも体が覚えていてくれたようだった。
その後も敵の銃弾が飛び交うなかを抜けて行き、
そして、やっとブラボーチームがいるであろう部屋まで来た。
周りの制圧も完了した。
作戦目標の直前は油断しがちだとよく言うため俺は周りを警戒しながらも心ではほっとしていた。
すると、クラックがいち早くドアを開けた。
やっとこの死地からの脱出行動に移ることができると皆思っていた。確かにまだ敵の包囲網をくぐり抜け回収地点までいかなければならなかったがとりあえず一段落つける。そういう思いで部屋に入ろうとした。
だが、
目に写ったのはこちらを向く大量の銃口だった。
しかもその銃を持っているのはブラボーチームの隊員たちだった。
脳の理解が追い付いていない間にカフカス隊長が呟く、
「これは腐っているこの世界への宣戦布告だ」
それと同時に目の前のクラックの体から血が吹き出した。そして、クラックの体を貫通した銃弾は俺の体も貫いた。
倒れて薄れ行く意識の中
やはりこの場所では人の命は実に脆いのだ。ただ自分の番が来ただけだ。
そこまで考えたところで目の前は真っ暗になった。
この放たれた凶弾は世界を騒がすこととなる。
できれば 今後もCRY OF SOULをよろしくお願いいたします