事の始まり
ども萎えてますなうです
本来、人を敷地内に入れてそのまま放っておくということはあり得ないことであろうか。飲料物を取りに行くとて誰か見張り人を着けなくてはいけないのだが…
それは現在では存外難しい事である。
「おーい、若菜開けてくれ〜」
両手のふさがった樒は俺がドアを開けるとゆっくり入って玩具のような卓袱台に置いた。氷がカラン…と冷たく鳴る。
「懐かしいなぁ。昔はよくここでかくれんぼとかしたりしたよな…俺とお前と後……アイツとさ」
「……ああ…」
俺はポツンと呟くとジュースを口に含んだ。柑橘類の酸っぱい感じが鼻の奥に漂う。
そのジュースが勿論オレンジであったことに間違いはない。
〇
ここは…どこだ?真っ暗闇なところに俺がひっそりと佇んでいるのを望んでいる自分を望んでいる。
「これは…夢か…?」
そうだ。俺はさっきから樒の部屋で寛いでいたはずだ。
「君は誰だい?」
俺が闇から話し掛けられている。相手が分からない俺はあたりを見渡す。
「……お前は……誰だ?」
「僕は―――バグ。君とある機械に生じた…失敗例のバグ。対処出来なかった、いやされなかった問題」
「これは…夢だろ…?」
「夢でも現在でもない。寧ろ過去でもない…」
響いた途端に暗闇が真っ白で小さな光のブロックにボコボコと機械的に崩れてゆく。
「だったら!!未来ではないのか!?」
俺がそう言った頃には黒はもうすでに5、6個程のブロックになっていた。勿論その他は何もない白である。
「…そう…カ…モワ…カラナ…ぃ……n…」
「………」
白とは眩しくて何もない虚無感の果てしない色である。奥行きが有るかもしれない、高い。いや寧ろ低い、自分の目の前でその白は終わっているかもしれない。
それが分からないから白は怖いのである。
俺を見ている俺は白の影となり、次第に薄れて消えてしまった。
それを見ている意識のある俺は消えずもせず、そのまま目を閉じてしまった。
だから、白は怖いのである。
〇
『う゛う゛う゛う゛…』
ケータイの着信で俺はその不可思議な夢から目が覚めたのだが…
どうにも寝汗が気持ち悪い。
「若菜ぁ!!飯出来たからおきろ!!」
1階のリビングから野太く逞しい樒の声が届く。
俺はケータイをポッケットに突っ込み、
「今行く!」
と少し掠れながらも声を出す。
そのポケットに大変なものが有るとは全く気付かずに。
その後、俺は樒作のハンバーグ…ではなく、挽き肉の焼いた物と味噌汁らしき物、そしてこれは間違えたのだろう。お粥。水が多かったんだろうね。
まあ、苦笑いさ。樒が自分で飯を作りにいったんだ。母ちゃんも父ちゃんも止める術は無いだろうな。
挽き肉の炒め物は自棄に脂っこいし味噌汁なんて出汁もとってない。お粥…じゃない。ご飯なんて言うまでも無いだろう。
樒は何故かもりもり食べてるし…
母ちゃん父ちゃんは冷蔵庫から漬物出してそればっか食っている。
まあ俺はそこのところ踏まえる人間だから挽き肉以外全部食べちゃうんだよね〜。
挽き肉は樒に餌付けして、ご馳走さまを言って食器を片す。
そんな一連の動作も3年程、一人で行ってきた。
飯が不味くとも、味噌汁に出汁がなくとも、ただ複数人で食べられるのが嬉しかった。
腹も心も満足になった俺はまた樒の部屋に戻る。
「樒。なかなかだったと思うぜ」
これが樒と俺との最後の言葉となった。
俺はケータイにメールが来ていたのを思い出してケータイを開く。
「king……mobile…?からか?」
音声データ添付ファイルが不気味な雰囲気を醸し出している。俺は興味本意で開いてみる。
10%
30……60
90
『添付ファイルを開きます』
俺は何も知らずOKをクリックする。
音声データだから音が流れるんだよな…。
俺は電話をするような形をとった。
この時だけだったのだ。好奇心で心が満たされていたのは…ワクワクする事しか出来なかった。
『ぴーーガッガガッ!!ピーピー!ザーガッ』
「なんだ?これ?」
ケータイの画面を再び見る。と!
「はぁ!?なんでΦkingdomに入ってんだよ!?」
ようこそ。Φkingdomへと大きく画面に写っている。
動画としてアナウンスの女が出てきたのだがそれも何故か段ボールを被っている。
「おいおい!!何でなんもしてないのに動いてんだよ!?」
勝手に会員登録のボタンはクリックされ新しい画面に移る!!
何故かピーピーと言う音声データは流れたまま生年月日、電話番号メールアドレス等、みるみるのうちに打ち込まれ残り1つのゲームでは表示されない本名の所にこう刻まれた。
―――破壊王。
正しい訳でもないのに。
あり得ないはずの事が今目の前に起きていて何もできずただ淡々とみることしか出来ない。
樒をよんだほうが良いか?いやアイツは今樒母、父の飯を咀嚼している。
ああ、こうも考えてるうちに確認画面まで来てしまった!
スタートボタンがクリックされる!
相変わらずノイズは止まる気配がしない。
かちっ
わざとらしい効果音と同時に音が大きくなっていったノイズはシン…と止まり、
ケータイの画面から大きな影が出現し、
俺を呑み込んでいった。
と言う夢を見た。と思いたい。
しかし、目は覚めるどころか段々と眠くなる一方であった。
ちなみにニックネームでは何が書かれてるかは分かるか?
ツンデレだよ。
自分には溜め書きが苦手なようなんでいつもどうり毎日で…やってきます。