こちらギルド『3年C組』
ちょっと魔がさした。
もっと設定を煮詰めて、連載する予定。
短編連作みたいな感じになるかも。
ここはエッケルス王国の首都ネフルド。そこにある一人の男がいた。かれは王国軍の士官服を着ていて、エッケルス王国軍の関係者だとひと目でわかる。
彼は住宅街や市場、歓楽街などに向かわず、あるギルド街に向かう。
ギルド街とはその名の通りギルドハウスが多数存在する街のことである。冒険者ギルド、魔術師ギルド、戦士ギルド等その他雑多な組織がギルドハウスを構え、富や地位・名声などを得ようと日々苦心している。
男はギルドを間違えないように慎重にギルドハウスやその名前を見て回り、やがてあるギルドハウスを見つけると、ほっと胸を撫で下ろす。
それは特に何の変哲も無いギルドハウスである。建物の規模的にはかなり小規模なもので、ギルド員や従業員を含めても100人もいれば十分といった感じだ。
やがて意を決したのか男はそのギルドの扉を開ける……そこにはその建物に見合っただけの空間が広がり、所々には掲示板を注視している二人の青年や、女性の給仕に発泡酒を持ってこさせ、肉料理を味わっている複数の青年達がいて、その隣りのテーブルには何やら怪しげな筒のような物を分解し弄っている青年もいる。彼らは誰一人として男には興味が無いようで、特に反応はなかった。
そして正面にはエルフの受付嬢がいた。
エルフが受付嬢をやっている様子に男は驚きを隠せない。
何故なら、エルフという種族は性格的に接客業といった職種に就くことは嫌っている事で有名だからだ。
それと同時に男はあることに気づく。
掲示板を見てる二人の青年も、飲んだりくったりしている青年達も、何やら怪しげな事をしている青年も……
皆、黒髪黒目の人間なのだ。
不思議に思いつつ、男は正面の受付嬢の元に寄り、彼女の目の前に立つ。
そして、受付嬢のエルフは特になんの反応も無く、機械的に……決められた文句を言うために口を開けた。
「こちらギルド、『3年C組』です。何か御用ですか?」
■ ■ ■
「それじゃあ! 今日のお仕事、お疲れ様ー!」
「乾杯!!」
そう言って、ギルド長兼勇者の神崎 龍之介 (かんざき りゅうのすけ)とその相棒である聖騎士の桜井 雅史が言うと、クラスメイト達は一斉に木製のジョッキを片手に乾杯する。
日も沈み、当ギルドの営業時間が終了した後、1階のテーブルを合わせてクラスメイト達全員で晩御飯を食べる。ギルド『3年C組』は発足以来、これは変わっていない。
「いやー、それにしても今日の王国からの依頼で儲けましたなぁ。私と浅野、小山が前線で暴れ、賀茂が支援してくれたお陰で無事に達成出来た」
そう言って、満足そうにジョッキの中の発泡酒を飲む大男。伊賀 剛志
自分達『3年C組』の中で一番背が高く、ガタイもデカイ。純粋な戦士タイプで得物もグレート・アックスやグレート・ソード、大槌など使う。
伊賀自身に備わった大地の神補正『怪力』のお陰でもある。
「まあね、王国とか国の依頼は正にハイリスク・ハイリターン」
「ま、俺達にゃローリスク・ハイリターンもいいところだけどな。所詮下位地竜の群れなんぞ、チョロいチョロい」
伊賀に賛同する浅野 浩正にドヤ顔で応える小山 隆太
浅野は全属性を扱えるオールラウンダーなメイジで小山は伊賀のグレート・ソードより小さい大剣を使う魔法戦士のスペシャリストだ。
小山の言葉に反応したのか、賀茂 俊明ジョッキの手が止まる。
「なーにがチョロいだ。俺のバフ・デバフ魔法が無けりゃ、伊賀はともかく……浅野と小山はミンチ確定だろ」
そう言って、再びジョッキの中身を呷る。
彼……強化系魔法とステータス異常魔法のスペシャリストである賀茂の言葉通り、小山と浅野だけではやがて物量に飲まれるであろう。伊賀は……生還しそうだが、負傷はするかもしれない。
「そりゃ勿論、賀茂様のバフ・デバフあってこそだぜ? そうじゃねぇと今頃は地竜の餌だよ」
「そりゃどうも」
そこは小山もわかってるようで賀茂に謝る。いつものやりとりだ。
「そういや、他はどうだった?」
浅野が他の奴に話をふる。
殆どのクラスメイト達はうちの従業員達に料理や飲物を注文しまくりのどんちゃん騒ぎだ。
「んー、俺は王国境のセドック砦に物資を運んだぐらいかな? はい、ヴァローレ」
「きゅいきゅい」
そう言いながら、彼は幼竜形態をとってる愛竜ヴァローレに自身が切り分けた肉を与える。ヴァローレは嬉しそうな声を上げてフォークで差し出せれた肉にかぶりつく。給仕としてせっせと料理や飲物を運んでいる一部の竜人族の皆さんが悔しそうな視線を向けているが気にしない。
浅野に反応したのは小林 智也、竜騎士だ。
確かに、ヴァローレの背に乗れば、首都ネフルドから二週間程かかるセドック砦程度の距離なんてあっという間だ。
「俺は流行り病の特効薬の材料と取りに、西堀と中井、後は移動要員の玉井を連れて出かけた」
「移動要員いうな」
PSIを保有している玉井 史郎にツッコまれる薬草師の富岡 晋平
それに加えて護衛として、ビーストマスターの西堀 勇紀とアーチャーの中井 信夫なら問題は無い。
特にビーストマスターの西堀はな……今日もここで働いてる獣人族のみんな……誰が西堀のお供として行くか熾烈な争いを繰り広げたんだろうなぁ……
「そういえばさ……商人ギルドから聞いたけどよ……」
ふと、小笠原 良純がつぶやく。彼は商人でここの営業担当のようなものだ。
「鈴木、また暗殺されかけたってホントか?」
一瞬、空気が凍り付き、クラスメイト達の殆どは一斉に鈴木 友広へと視線を向ける。
「……毎度毎度いつものことだよ。久世と篠原が返り討ちにした」
「なんだ? いつものことだろ?」
「ちょっと遠くから狙い撃ちしようとしたバカがいたからカウンタースナイプしてやっただけだ」
暗殺者の久世 賢二と銃手の篠原 涼平
二人はギルドの二大おっかない男として認知されている。
で当の鈴木 友広はため息をつく。
「全く、いつになったら止むんだか……」
鈴木はこのギルドの運営や外交……即ち交渉事の担当だ。
だから、彼は久世と篠原を護衛に大陸を飛び回っている身である。
主に各国の王族や大貴族などを相手どり、我々に有利なように交渉を進めてくれる。
そして彼は知らない……実はその王族や貴族の娘や女達が彼を狙っている事を…………いいな、畜生。
神崎はエルフのねーちゃんとかいろんな人達にモテてるし、他のメンバーもハーレムを侍らせる実力者揃い。うちのギルドの従業員の女性みんなが美人さんで誰かのハーレム要員とか……どんな悪夢なんだよ……
我々ギルド『3年C組』はそれぞれが皆、異なる分野のスペシャリスト。
どんなに無茶な依頼でも、それに見合った報酬があればなんでもやってみせる。
ギルド『3年C組』の最終目標はただ一つ。
元の世界に帰ることだ。
こちらギルド『3年C組』 メンバー表
1. 麻生 賢 (あそう けん) :治療師/ヒーラー
2. 浅野 浩正 (あさの ひろまさ) :大魔導士/ウォーロック
3. 伊賀 剛志 (いが たけし) :戦士
4. 内村 敦 (うちむら あつし) :地図屋/マッパー兼案内人/ガイド
5. 小笠原 良純 (おがさわら よしずみ) :商人
6. 小山 隆太 (おやま りゅうた) :魔法戦士
7. 賀茂 俊明 (かも としあき) :付与魔法使い/エンチャンター
8. 神崎 龍之介 (かんざき りゅうのすけ) :勇者 ※『3年C組』ギルド長
9. 久世 賢二 (くぜ けんじ) :アサシン
10. 久保田 徹 (くぼた てつ) :レンジャー
11. 小林 智也 (こばやし ともや) :竜騎士 ※愛竜:valore(伊)ヴァローレ(勇猛) 竜人ハーレム
12. 佐川 治 (さがわ おさむ) :料理人/コック
13. 桜井 雅史 (さくらい まさし) :聖騎士
14. 篠原 涼平 (しのはら りょうへい) :銃手
15. 鈴木 友広 (すずき ともひろ) :交渉人/ネゴジエイター頭脳派 ※貴族ハーレム
16. 玉井 史郎 (たまい しろう) :PSI取得者
17. 高橋 孝輔 (たかはし こうすけ) :メイン主人公
18. 堤 守 (つつみ まもる) :罠師兼暗器使い/トリックスター
19. 富岡 晋平 (とみおか しんぺい) :薬草師/ハーバリスト
20. 中井 信夫 (なかい のぶお) :アーチャー
21. 西堀 勇紀 (にしぼり ゆうき) :ビーストマスター ※獣人ハーレム
22. 西野 英世 (にしの ひでよ) :ハンター
23. 野村 俊太郎 (のむら しゅんたろう) :退魔師・除霊師
24. 橋本 俊二 (はしもと しゅんじ) :精霊術師
25. 藤波 浩 (ふじなみ ひろし) :職人/クラフトマン