過去編4.告白
久しぶりに投稿できましたー!
そうして、姫乃たちは校区にまで到着。
その二週間後に中間テストを控えていた……。
――今日はついに、中間テストが終わり、テスト返しの日である。
(ふぅ……やっと一息つける)
今回のテストもいつも通りといったところ。強いていえば、苦手な英語で珍しく九十点を取れたことだろうか。平均が高かっただけなのだけど。
「あ、姫乃姫乃〜」
「どうかしたの、奈月ちゃん?」
声をかけてくれたのは席が前の斎藤 奈月。とてもとても陽キャだが、優しくていい人だ。たまにこうして話しかけてくれる。
「昨日の学習会さ、伊織がいたんだけど、姫乃のこと聞いてみたんよ」
(えっ……?)
ちなみに、奈月も姫乃が伊織のことを好きなのは知っている。修学旅行より前に教えた。ちなみに、学習会とは定期テスト一週間前にある、質問や小テストの再テストなどをする会のことだ。他にも、授業をやる科目もある。
「姫乃のことさ、気になってるんやって!」
(ふぇっ!?)
「えっ、ホント……?」
「ホントホント!めっちゃいい感じゃんっ!頑張れっ」
奈月は太陽のように笑う。姫乃はその笑顔に救われたような気持ちになった。
「う、うん……ありがとう、奈月ちゃん……!」
「うんうん。また何かあったら聞かせてな」
そうして、二週間後。テストが終わったことで、二者面談が始まった。とはいっても、放課後に少しだけ残って、先生と生徒が話すだけなのだけれど。そこまで真剣に話すわけでもない。
二者面談はだいたい一週間で回していく。
「え、みんな今日なの?」
「そ。まじびっくりだよねぇ」
「俺は明日だけどな」
颯が突っ込んだ。偶然だが、二者面談は颯を除き、全員今日なのである。
「まぁまぁ〜。颯先帰る?」
「あぁ。流石に勉強ししとくわ。受験生だし」
「そっか。りょーかい。また明日!」
綾菜の言葉に颯は頷き、手を振って帰って行った。
姫乃たちは待機部屋に入る。部屋にはかなりの人がいた。一日で行われる面談は三クラスずつで五、六人ほど。それに加え、友達を待っている人も多くいるためだろう。
「……ひゃぁっ」
中には伊織がいた。入るのを思わず躊躇う。
「ん?姫乃、どうしたの……って。あーね、ま、とりあえず入りなよ」
「……はい」
姫乃は最後尾に回って、目の前の菜那に顔を隠しながら歩いた。
菜那の身長が低く、隠れにくかったのは姫乃だけの秘密である。
「私一番だから行ってくんね」
「はーい」
綾菜を見送り、偉い菜那は勉強することにしたらしく、姫乃はそれを見守っていた。ちなみに、心蕗は奈月たち陽キャの女子グループに混ざって話していた。入ってもいいけど、怖いのでやめた。
そうして、姫乃の番がやって来たので、待機部屋を出た。
廊下には綾菜がこちらに向かって来ていた。ちょうど終わったらしい。
「はー、疲れた。ひなのんは今から?」
「そそ。行ってくる」
「うん、がんば」
綾菜に手を振って、教室に入った。
面談とは言っても、普段の様子とか、テストや進路の話を軽くするだけなので、十分ほどで終了した。
「ありがとうございました」
「は。じゃあ、滝田さん呼んできてくれる?」
「わかりました」
姫乃は頷いて、待機部屋に向かった。
瀧田に「次だよ」と教えて姫乃は再び菜那の元へ行く。
菜那はまだ勉強をしていた。
(偉すぎる)
ちなみに、心蕗と綾菜は先程の陽キャグループに、一部の男子を加えて話していた。その中には伊織もいる。
それ以外の人たちはほとんど帰ったらしい。
(行きにくい、だったのが絶対行けない、になった)
まぁ、問題はない。この同じ空間にいられるだけで幸せなのだから。
「出よ出よ〜」
「うんー」
急に陽キャグループたちが教室を出ていく。
(なんだろう?かくれんぼでもするのかな?)
「あっ、菜那も!」
「え、あ、うん、おけ」
菜那はシャーペンを置いて、立ち上がった。
扉が閉まり、残っているのは伊織と姫乃だけ。
(待って、どゆこと??二人きりで話せ、ってこと?何も話題考えてないよ!)
そんなことをグルグル考えているうちに、伊織が目の前にやって来た。
バッと頭を下げられる。
「……ずっと、好きでした。付き合ってください」
「……っ!」
びっくりした。予想もしていなかった。いい感じになったとは思っていたけれど、告白されて付き合うイメージはあまり沸いていなかったのだ。
(でも……そんなの、答えはひとつしかないよね)
泣きそうな涙を堪えて姫乃は笑った。
「……よろしくお願いしますっ」
姫乃は伊織の手を掴んだ。
ちょっと見つめて笑い合う。なんだか気恥ずかしい。
「……わぁ」
何となく後ろを振り向くと、すりガラス越しに人影がいくつも見えた。その光景に仕組まれたんだ、と今更気づいて笑う。
オズオズと扉を開ける。
扉の先に綾菜の顔が見えて、堪えていた涙が一気に溢れ出した。
「……っ、う。……うぅっ」
姫乃は綾菜に抱きついて、ボロボロと泣いていた。
「わっ、びっくりしたぁ……」
綾菜は驚きつつも、姫乃の頭を撫でる。
(もう、明日死んでもいいや)
そう思えるくらいの一日であった。
次の日。
「えー、見たかったわぁ」
颯が非常に残念そうな顔で言った。
まぁ、付き合ったことを報告したのである。(綾菜が)
「なんていわれたん?」
「なんで言わないといけないの」
「ははっ、まぁいいや。伊織に聞いたろ」
颯は笑う。
「……まぁ、ありがとね。その、付き合えたのは颯とあーちゃん……他にも、心蕗ちゃんや奈月ちゃんたちのお陰だし」
「ふっふっふ、いいってことよー」
「何様のつもり?」
「まぁまぁ。そういえば、ひなのんは実感そろそろ沸いてきた?」
綾菜が姫乃と颯を宥めつつ、クスクス笑って話題を変える。
「そんなわけないよっ。未だに夢かもって思ってるし」
「まー、私もそんなんだったからねー。そんなもんだよ」
その時、後ろから声をかけられた。昨日残っていなかった陽キャグループの女子だ。
「ねね、姫乃ちゃん、須藤くんと付き合ったんやって!?おめでとー!」
「あっ、うん!ありがとうっ」
そうして、この日はたくさん「おめでとう」と言われ、ほんの少しだけ実感が沸いた姫乃であった。




