過去編2.急展開の六年目 中編
早いもので、本日、修学旅行二日目の夜になった。
一日目は民泊学習だったが、二日目ではホテルだ。ホテルは二人部屋で、姫乃は同じクラスの村岡 穂花と同じ部屋だった。ちょっと毒舌だけど、陰キャな姫乃にも話しかけてくれたいい人だ。姫乃と同じく絵を描くのが趣味らしい。何回か描いていた絵を見たが、とてもとてもうまかった。
「姫乃ちゃんさ、先お風呂入っててくれる?私もうちょっと続き描きたくて」
「おっけー!じゃ、お先に失礼しま〜す」
姫乃が風呂に入ると、続いて穂花も風呂に入った。
しばらく絵を描いたり自由に過ごしていると、外から声が聞こえる。
(この声……菜那、かな?)
気になって、姫乃はベッドの上から降りて扉を開けてみた。
いたのは、蒼井 菜那。井上 綾菜。そして、椎葉 心蕗だった。
「あ……菜那っ。それにあーちゃん!心蕗ちゃんも!」
「あれ、姫乃ー!丁度呼びに行こうと思ってたんだ」
「菜那の声が聞こえたから……」
姫乃が微笑むと、菜那は大真面目な顔で「えー、私そんなに声おっきかったかなぁ~?」と呟く。
「菜那の声は大体いつでも大きいでしょ」
「あーっ、綾菜、ひどぉいっ!」
「……それでね、姫乃ちゃんも一緒に綾菜たちのお部屋に行かない?忙しかったらいいんだけどね」
「もちろん行きます!!あ、ちょっと穂花ちゃんに伝えてくるね」
穂花に綾菜たちの部屋に行くことを伝え、姫乃たちは階段を降り、綾菜たちの部屋にやってきた。綾菜たちの部屋は端だ。
「おー、端っこってこんな感じなんだ~!」
「そうだねぇ。広いなぁ」
心蕗ちゃんがほのぼのと笑っていて、心が癒される。
それから、カードゲームをしたり、お菓子を食べたり……と楽しい時間を過ごした。
三日目。姫乃たちはアトラクション施設にいた。
今は、沖縄の踊り――エイサーを部活で仲の良かった友達と見ている。途中でシーサーも出てきたりして、面白い。迫力満点だ。
そろそろ終わりかな、と思った頃、目の前にいた外国人の小さい女の子たちが外に出ていく。五歳くらいだろうか。
「あれ、忘れ物かな?」
先程まで女の子たちがいた席には、赤くてキャラクターの印刷された可愛らしい水筒があった。
「私、行ってくる!」
姫乃は水筒を持ち、女の子たちを追いかけた。
(えっと、待って?こういう時って、どう声をかけたらいいんだっけ??)
英語が苦手な姫乃は混乱した。そのままになっても仕方がないので、姫乃は勢いで声をかける。
「えっと……Excuse me!」
すると、最後尾にいた金髪の女の子が振り返る。水筒を見て「あっ」と驚いた様子で、黒髪の子を呼んだ。
「Annie!」
「……こ、れ……」
蚊の鳴くような声で姫乃は俯く。何て言ったらいいのか、全然分からなかったのだ。
すると、黒髪の女の子――アニーは水筒を受け取った。
後ろの父親と思われる男性に軽く背中を叩かれている。
「あ……アリガトウ」
アニーはニッコリと笑顔で礼を言った。拙い日本語だ。だが、何とも言えない感情が胸にこみ上げた。
「……!!どういたしまして」
その笑顔につられて、姫乃も笑った。
女の子たちに手を振り、姫乃は席に戻る。
「おー、帰ってきた。どうだった?」
「ちゃんと渡してきたよ~」
(何というか、こっちまで嬉しい気持ちにさせてもらったなぁ……)
そうして、エイサーショーは終了した。
「鍾乳洞行きたい人は並んでー」
ここでは、鍾乳洞が見れるらしいのだ。修学旅行前の調べ学習でも調べたところだ。かなり楽しみである。
「あ、あーちゃん!」
「ひなのん~、ひなのんも鍾乳洞行く?」
「うん!良かったら一緒に行こ」
綾菜は笑って「うん」と答える。しばらく並んで待っていると、突然気配がした。
「……」
颯だった。まだ、綾菜は気付いていないらしい。
しばらく視線を送っていると、綾菜は後ろを振り向く。
「わっ、何してるの」
「一緒にいっこかなー、と思って」
(うぅ、私、ここにいてもいいのかな)
周りを見渡すが、仲の良い友達はいなさそうだ。どうしたものか。
すると、前の方に伊織と友達が話しているのを発見した。姫乃の口角がどんどんと上がっていく。
(ハッ!!伊織くんがっ!!見れるじゃんっ、神~!)
心の中でガッツボーズをする。すると、二人がこちらを見ていることに気が付いた。
「……どうかしたの?」
「いや、声かけても全然気づかないからさ」
綾菜に心配そうな顔をされ、姫乃は弱々しく笑った。
「大丈夫大丈夫っ。それで、何かあったの?」
「一応、伊織誘わね?って話してたんだけど。まだ好きなんだよな?」
「そりゃ……まぁ」
見れるだけで幸せなので、どうにかなろうという気持ちはない。もう推しに近い存在になりつつあるのだ。嫉妬はすごくしているけれど。
「誘わなくていいよっ。きっと、あっちも友達と行きたいだろうし!」
「ひなのんは一緒に行きたくないの?」
「行きたい、行きたくないというか、そんな問題じゃなくてですねっ、あーちゃんっ!」
どうしよう。顔が赤くなっている気がする。
「おーい、伊織!」
(あぁ、もうっ!!)
颯は伊織を呼びに行ってしまった。姫乃はしゃがんで、近くの壁にもたれる。
「ひなのん、大丈夫?」
呆れたような声で綾菜が声をかけた。
「大丈夫じゃないデス。かなり」
「そりゃそうだけど……。とりあえず、立ち上がっとき?」
綾菜に手を引かれ、姫乃は立ち上がった。
「……えっと……なんで僕?」
そこには、困ったような顔をする想い人――須藤 伊織がいた。
やっっっっと伊織が出てきましたねっ!!!次は90度くらい傾いて急展開になる予定なので、お楽しみに!!




