3.転んだ関係 伊織視点
すみません、連日投稿しようと思ってたんですが……かなり遅くなりました。汗
「はぁ……」
自室でため息をついたのは、須藤 伊織。
姫乃に、「距離を置きたい」と言ってから約半年。現在、九月。まだまだ残暑が続く頃合いである。
(僕、ホントに最低だ……)
あの時言った、「待っておいてほしい」という言葉は嘘ではない。本心だ。
だが、こんなに待たせてしまうつもりはなかった。
姫乃はまだ、自分のことを好いてくれているだろうか。
(いや、それも嘘だったんだ)
姫乃は優しい。きっと、伊織が傷つかないように、あの時も優しい嘘をついてくれていたんだろう。
いつもそうだった。「自分のことを好きか?」と問うと、一度黙ってから微笑んで「好きだよ」と口にする。それに感情がこもっていないことは明らかだった。
待たせすぎて、もう次の彼氏がいるかもしれない。姫乃は可愛いから。
姫乃は自己評価がかなり低い。自分が可愛いことをもっと自覚してほしいんだが。
「ん?あ、電話だ」
スマホのバイブ音に気付き、伊織はスマホを手に取る。表示された名前は颯だった。
颯が電話をかけてくることは滅多にないため、何の用だろうか、と思いつつも電話に出た。
「……もしもし?」
『おー、久しぶり、伊織』
「うん、久しぶり。珍しいね、どうしたの?」
『お前さ、まだ姫乃と距離置いてんの?』
「う……まぁ」
『まじかよ』
伊織の歯切れのない返事に、颯は呆れたような声を出す。
『なんでさ、いまだに?』
「これは僕自身の問題だよ。颯にも、姫乃にも関係ない」
『言わねぇの?』
「うん、言うつもりはないかな」
そんな僕の返答に、電話越しの『ふぅん』という颯の低音が聞こえてくる。
(怒ってない……?大丈夫かな……)
『お前、この後の予定は?』
「え?特にないけど」
『じゃあ、今からそっち行くから待ってろ』
ツー、ツーと電話が切れた。
(どういうこと!まだ理解できてないんだけど!?)
そう思って呆然としているうちに、インターフォンが鳴った。
中学が一緒ということもあり、家はかなり近いのだ。
「はーい……」
そう言って、玄関先に行くと、やはりいたのは颯だった。
「よっ」
「よっ、じゃないんだけど?急に来てさぁ……」
そう言って、僕が颯を睨むものの、颯は全く気にした様子はない。
「中入る?」
「いいのか?」
「まぁ。親どっちも出張中だし」
高校生にもなったんだからいいでしょ、ということで両親共に出張中だ。ちなみに、妹の藍は友達と出かけている。
部屋に入ってすぐ、颯は伊織を呆れたように見る。
「なんで距離取ってるんだよ?姫乃のSNSの一言、かなり病んでたけど」
「えっ」
伊織はSNSをやっていない。
(姫乃が……そんなことを……?なんで?)
「……僕さ、かっこよくないじゃん?」
「は?何故に自虐?」
「いや、本当のことじゃん!」
颯は「ハァ……?」と呆れたような顔をする。
「それ、姫乃が言ってたわけ?」
「いや、学校の子が」
「……そいつ、見る目なさすぎだろ。というか、異性のタイプなんて人それぞれなんだから、姫乃がお前をかっこよく思ってるか思ってないかなんて分かんねぇよ」
「そうかなぁ……」
「そうだよっ!」
キッパリと断言され、伊織は何も言い返せない。
「姫乃は、お前に見られてないからと思って、SNSで結構言ってるんだぞ?あ、喜んでるやつであって、愚痴とかじゃないから」
「そ、そう」
「……それで、他人にかっこよくないと言われたお前がなんで離れる必要が?普通に聞けばよかったんじゃね?」
「いやぁ……聞いたんだけど、作り笑顔で返されてさ。それに、好き?って聞いても同じで……」
「あー。なるほど」
颯は納得したような声を出す。
「姫乃さ、お前と同じように、かなり色々なことを調べてから行動するタイプらしいぞ。綾菜とか友達に聞いたり、ネットで検索しまくったり。それで、『重い女は嫌われる』とかいうサイトを見つけたっぽくて」
「え?」
「まぁ、綾菜もいろいろ隠してるっぽいけど」
(姫乃が……重い?)
多分、伊織の方が重いと思う。
(ずっと、僕のことを考えていてほしいし、大好きだし、他の男と楽しそうに話していたら嫉妬してるし。怒ってても笑ってても――どんな顔でも可愛いと思う)
確かに、面倒くさいと思われるのが嫌で、姫乃には隠していたけれど。
「お前らは、さ。ちゃんと腹割って話した方がいいよ。マジで。あと、お前は早く姫乃に連絡しろ」
「……うん」
(僕、情けないな……)
友達が背中を押してくれるまで動けない。多分、こういうやつをヘタレと言うんだろう。
◇◆◇
「今日、お兄、どっか行くの?」
そう伊織に声をかけたのは妹の藍。現在中学一年生。
「いや、人来るから。藍はどっか行ってて」
「ふぅん?どっかってどこに?」
「図書館とか?勉強しときなよ」
「え~、家でもいいじゃん」
「そう言って……。家で一時間以上勉強してたことあったっけ?」
藍は「う……」と口ごもる。
「そんなにあたしを追い出したいんだ?……あ、姫乃さん関係?」
さっきまでしおれていたのが、急にパッとからかう方向に転換される。
(……めんどい)
「そうだけど何か?」
「あ、開き直っちゃった。からかいがいがないなぁ……。まぁ、いいや。それなら行っててあげるよ」
そう言って、機嫌よさそうに藍は外出の準備を始める。
(これ、帰ってきたら母さんに言われてからかわれそ……)
伊織は「ハァ……」とため息をつく。
(もうすぐ、だよね)
メッセージアプリを確認し、来るはずの時刻を確認する。
「じゃ、あたし行ってくるね」
「ん、いってらっしゃい」
藍が出て行って、しばらくするとインターフォンがなった。
「はいっ」
少しばかり声が弾んでしまったのは仕方ないと思う。
(半年ぶりの姫乃だっ……!)
「……ひ、久しぶり、伊織くん」
「うん、久しぶり、姫乃」
伊織は微笑んだ。
次は全力で糖分をいれていくのでお楽しみに。




