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第8話 生徒会

生徒会メンバーがちょっとお花畑ですね

 お兄様に頬を(はた)かれていたあの日から、レイニーアが私に絡んで来なくなった。平和で有り難くはあるが、少々気持ちが悪い。どうも標的を切り替えたのか、第一王子やその取り巻きに盛んに話しかけに行っている。


 最初は相手にされて居なかったが、日が経つにつれ、まるで魔法のようにレイニーアは生徒会のメンバーである第一王子と取り巻きに気に入られ、生徒会入りを果たしていた。キャラは作っているのだろうが『健気で一生懸命、ちょっとドジな私♥』という設定のようで、猫なで声を聞いていると鳥肌が立つ。それに良家の子息ばかりなのだ。婚約者が居る者が大半だ。勿論婚約者のお嬢さん達から完全に反感を買い、何かと噂の的にされている。


 何しろ、恋人でもなんでもない癖に非常にボディタッチが多く、距離が近い。近すぎる。私がお兄様にこんな事をされたらもう半殺しにしているところだ。


 思い切った婚約者の方々が、王子含む他の男共に苦言を呈したらしいが、マトモに聞き入れるどころか、友人関係にまで口を出す気かと怒鳴られたらしい。これは酷い。


 生徒会の仕事は完全に滞り、予定されていた親睦(しんぼく)のオリエンテーションなどがスルーされる事態にまで発展すると、流石に生徒からリコールの声が上がる。


 これには慌てたらしい生徒会は、なんとか次の月にオリエンテーションをずらす事で対応するが、予定されていたイベントなどの質が明らかに歴代と比べて低く、生徒に疑問視されてしまう。


 第一王子としては、王太子としての責務を果たせるかを、生徒会という小さな社会で成功できるかテストケースとして設けられており、3年、生徒会長を辞めるわけには行かない。


「皆さん~、リベル様やフレス様、ワイス様ディオス様は悪くないんです~!あたしが不慣れで教えてくれたり、お勉強もついていけないところを教えて下さったりしてたんです、悪いのはあたしなんです~!ごめんなさい~!!」


「「「「レイニー!」」」」


 すると今度は、生徒会の面子がレイニーアを庇いに走る。


「まだ新入生なんだ、不慣れな所や学業で(つまづ)いても仕方がない、俺達が全員で教えてしまっていたのが悪かった。今後は交互に1人で教えてやるから心配するな、お前の所為じゃない!」


「ちょっと寂しいですけど、仕方がない…ですよね」


 えへ、っと健気で寂しそうな笑みを浮かべるレイニーア。やめろ。鳥肌が凄いんだ。


「なんて健気な…レイニー、これからも困ったときには言うのだぞ」


 その邪魔なのを生徒会から追い出せば済むんじゃ、と誰もが思った。


「あ…っ、僕知っています、凄い手腕で領地を改革し、一気に優れた観光地に仕上げ、輸出品も優れた品を出している立役者の方を…!」


 生徒会書記、フレファニス・メリアナ・ミルディが声を上げる。


 あ、待てこら。絶対に私は関わらないぞ。


「アリルメイフィール・メイルド・ヴァン・クロス=ランドオルストさん、どうか少し指導役として生徒会に所属して貰えませんか?」

「え…っ」


 眉を潜めたのはレイニーアだ。そうだろうな。生徒会はお前の牙城だったろう。そして私はそんなレイニーア菌が跋扈(ばっこ)してそうな場所に行きたくない。


「お断りします。私は領主補佐の仕事をしています。まだまだ我が領地には発展の余地があり、今の時期は河川に雨季の準備をしたりと忙しいのです」


「そ、そおですよお~、アリル様はいつも忙しくしていらっしゃるから~」


 そこへ断りづらい人物から声が掛かった


「毎日でなくて良い。イベントの前だけ、指導を頼めないか。なんなら兄と一緒でも構わない」


 『一緒でも構わない』だと!?お兄様に向かって何様の心算だ!!お前と違ってお兄様は多忙なんだ!


「お兄様を巻き込むな!!お兄様は当主として忙しい!貴方方とは事情が違う!私だけ少し顔を出せばいいのだろう!?」


「…お前。王子を相手にその言葉遣い。不敬罪にあたるぞ」


「建前として学園では誰もが平等、と(うた)って居たと思ったがな」


「この俺を相手に言いたい放題か。面白い生徒も居たものだ。しかし女らしさに欠ける口調だ。愛らしいレイニーを見習うと良い」


 死んでも断る案件だ。何故こんな女の猫撫で声を真似しなきゃならんのだ。


「断固として断ります。()()の真似をするだなんて人間としての矜持(きょうじ)が保てません」

「ひ…酷い……こんな方を生徒会に招くんですかぁ…?」


「レイニーには近づけさせん。だが、企画力などは大した手腕だと聞く。少しノウハウを教えて貰おうじゃないか」

「……本当に少しだけですよ。私とて暇ではないのですから」


 いくら建前で生徒は平等、と謳って居たとしても、王子直々の依頼を蹴り飛ばせるほどの権力は私にはない。


 しかし、生徒会にも顧問が居るのだから、顧問を頼ってレイニーアに構うのを止めて真面目に努力すればなんとでもなると思うのは多分、私だけじゃない筈。案の定多少の嫉妬の目と多くの哀れみの視線が私に集まる。


「一先ず来週の歓迎会について案を出して欲しい」


「……解った。昼休みにでも伺って昼食しながら案を出してもいいでしょうか。放課後にあまり残りたくないので」


 お兄様と食べる幸せランチが、この時点で潰えてしまった…。だが、出来れば帰りを御一緒したい。


 そして昼休みになり、私は渋々生徒会室へと向かう。お兄様には今日はお昼を御一緒出来ないと言ってある。


 生徒会面子は食堂から生徒会室に注文した料理を運ばせ、私は弁当を持ち込んでミーティングは始まった。レイニーアは男達に見えない角度で私を睨んでいる。私ではなく王子を睨めよ。私は渋々来てやっただけだと言うのに。


「レイニーさんが私を睨んでくるのですが。私が必要ないなら最初から言ってくれませんか?」


 すると慌てたレイニーアが慌てて顔を作る。


「…えっ…そんな、まさかぁ…!わざわざ来て貰えてレイニーは感謝してるんですよお?」


「…そうだよな。レイニーがそんな事をする訳がないだろう?」


「…次に不快な態度を取るようなら私は帰ります」


「?…レイニーは何もしてないじゃないか。難癖つけるのもいい加減にしてくれ」


「そう思いたければ思ってくださって結構です。でも私は嘘は吐きません。なんならレイニーアを見張っておいて下さい」


 レイニーアの顔が引き攣った笑みに変わる。私を見る目からトゲを抜こうと必死になっているのが解る。


 流石に少し怪訝な顔になった第一王子がレイニーアの様子を伺う。


「レイニー?」

「は、はぁい!なんですかぁ?」

「……いや、なんでもない」


 早くしないとお昼が終わってしまう。何度も通うなんてまっぴら御免だ。私はその会話を一旦打ち切る。


「で、歓迎会ですが――」


 ケータリング先の選定から、在校生の出し物まで一通り確認し、不適切であると思われる箇所やもう少し予算を切り詰めて、且つ美味しいケータリング先の提案してみたりする。BGMで楽団を呼ぼうとしていたのを、ブラスバンド部や吹奏楽部の発表の場にしてみてはどうかと提案する。


 なんでもお金を掛けようとする体質を注意した。予算は限られているのだ。使い込み過ぎては後のイベントで使う資金が足りなくなると釘を刺す。王族だからとポケットマネーを出そうとする癖についても注意を促した。代々の生徒会は予算内で収めつつも確りと成功させてると説明し、国を治める際にも限られた資金で割り振りして行かねばならないのだから、浪費をする癖を直すよう指導した。


 王子は少し不満そうな顔をしていたが、学園卒業時の王太子としての資質を問われると話せば納得してくれた。


「では、これでもういいでしょうか?後は皆さんで歓迎会を頑張って下さい。出し物をするなら全員参加型の方が楽しんで貰えると思いますよ」


「ふむ…なるほど。助言助かった。また頼む」

「……イベント前だけですからね」


 昼食も終わり、私は生徒会を後にする。何故かレイニーアが付いて来た。


「上手くやったと思わないでね。生徒会メンバーは私のものなんだから…!」


 部屋を出た瞬間に、レイニーアの顔が豹変する。小声で鋭く囁いてくる。溜息を禁じえない。


「私は生徒会役員に何の興味もない。お前と一緒にするな」


 ギリっと歯軋りをしたレイニーアは言い募る。


「デュラン様を洗脳しただけじゃ飽きたらず…役員までなんて、許されないんだから!」


「…は?洗脳?」


「そうじゃないと有り得ないでしょう、あんな妹にベッタリのデュラン様なんて!!マギで洗脳して、折檻する妹なんて信じられない!デュラン様が可哀想よ!早く自由にさせてあげてよ!!」


 洗脳?折檻?私が?お兄様に?――何を言ってるんだこの女は。


「私がお兄様に対してそんな事をする訳がないだろう。それより付いて来るな。お前と共に歩くのは不快だ」


「嘘よ!!!でないとデュラン様が私を叩いたりする訳がないでしょう!?貴方に操られてるんだわ!」


「五月蝿い。してないと言ってるだろう。何度も言わせるな」


 どうしても自分に非があった事を認めようとしないレイニーアに、段々私も腹が立って来る。


「お前が私に暴力を振るって来るからだろうが!お兄様は私を大事に思ってくれているだけだ」


「嘘よ嘘よ!!デュラン様がアンタなんかを大事に思う訳がないでしょう!?」


 ふと麗しい声が私達に掛けられる。


「私が妹を大事に思うのが何故そんなに信じられないのかが解らない。私は妹を愛してるよ。だから傷つけようとする君が許せない。簡単な事だと思うんだけどね」


 すっとお兄様が私の傍に回り、肩を抱いてくれる。


「残りの昼時間だけでも一緒にいようか、アリル」


「はい、お兄様!……じゃあな、レイニーア」


「デュラン様!!あたし…あたしは待ってますから…!」


 一体何を待つ心算なんだろうか…??


 疑問を残しながらも、生徒会へ戻るレイニーアを引き止める心算はない。一応頭の片隅で覚えておいて警戒だけはして置こう。今はお兄様に癒されながら今日のお昼を一緒出来なかった事を謝った。


レイニーアの牙がデュランに向けられるのも、生徒会メンバーとの仲が深まってからとはいえ、そんなに時間は掛からなさそうですね

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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