第16話 現代
短いですが、エンディングです。此処まで読んで下さった方、ありがとうございました!
女神は笑顔の裏で焦っていた。魂がこの世界から離脱してしまおうとしている。引き止める手をすり抜ける。しかも、引き剥がした筈の、この世界での記憶の残滓を纏ったまま。
せめてそれを剥がそうと足掻くが、剥がしきれない。いくらかは残ったまま――無意識にこの世界の事をうっすら思い出せてしまうレベルで残ってしまった。
魂は頼りなくふらふらとこの世界を抜け出し、何処かの世界へ迷い込もうとしている。もう、指先は届かない。
女神にとってこれは失態だった。管理者から文句を言われてしまうだろう。チッとはしたなく舌打ちが漏れる。どうしようもない。それならもう、自分の子のようなセイクリッドとマギの嬉しそうな式のやり直しへと意識を向け、一旦漏れた魂の事は忘れる事にした――。
「あ…誓約もないのに女神様…?」
「女神様、ありがとうございます!」
二人は嬉しそうに笑顔で私の降臨を迎えてくれる。自然と笑顔になる。式が終わるまで、幸福のオーラで全員を包み、皆が楽しく2人を祝福できる空気にする。全員の幸福な気持ちが流れ込み、女神の力が増していく。
振舞われる葡萄酒の精気を吸い上げ、良い気分で式に参加する。花嫁衣裳のまま、皆と一緒に踊る子らを見るのは楽しかった。2人に良くしてくれて、神父役までこなしてくれたヘクトという人物にも加護を与えてやっても良いかも知れない。
ドレスに着替え、食事が振舞われ、全員が曲に合わせて踊り始めた楽しい熱気が女神を喜ばせた。
「…う、…玲社長!」
「…っあ、ごめんちょっと仕事に集中してたわ」
イラストレーターから送られてきたキャラクターデザインに細かく修正を入れながら、新田玲は顔を上げる。
「今回のゲーム、絶対売れますよ!この細かく修正入れているキャラ、私既に推しですもん!デュランロード、でしたっけ!」
ゲーム会社まりおんを立ち上げた新田玲は、夢に出て来る世界とキャラクターを描き出し、乙女ゲームを作成していた。
「うふふ、そのキャラは私のイチオシだから、ちょっと熱が入っちゃったかも」
「いや、でも他の風紀委員の眼鏡キャラ、ルーデロティなんかも結構ツボです!それにやっぱり王道の王子、リベリスト、優しい顔で少し腹黒で俺様な所がギャップで良いですよね!」
もう後は修正したキャラに声を乗せて貰えれば、プログラミングは全て終わってゲームは仮体験できる状態だ。
「そうだなあ…タイトルは、聖乙女♥セイクリッドにしよう」
そのタイトルはかなりの売り上げを誇り、乙女達の心を掴んだのであった。
卵が先か鶏が先か。そういう話なのでした。
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