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第12話 前世

ちょっと体調崩して日刊に出来なくなってました…。ちょっと調子が戻るまで日刊ではなくなるかもです。

 ここがゲームの世界?じゃあレイニーアは、私やお兄様や生徒会の面子を全員ゲームキャラだと思って接してきたの?――馬鹿な!こんなに感情があって自我があって、自分の思うように動かせないゲームキャラがあって溜まるものか!皆自分の幸せも痛みも懐に抱いている。異世界ではあるだろうが、ここは作られた世界ではない。


「――アリル?さっきからどうしたの?」


 お兄様の優しい声でハッと意識が戻る。レイニーアの前世が私と同じ日本生まれであった事が思いの外ショックだったようだ。


「食欲ない?」


「いえ!ちょっとボーっとしておりました…すみません、折角お兄様とお昼ご飯なのに…」


「そう?何か心配事があるならいつでも隠さずに話してくれよ。もう夫婦なんだから」


「……」


 話して信じてくれるだろうか。とても信じられる内容ではないんだが、でも…。お兄様なら…。


「お兄様、おうちに帰ったら、私と少し話をして貰えないですか…」


「家で?今此処では言える話じゃないんだね?いいよ。いつまででも付き合おう」


「ありがとう、お兄様…」


 私は午後が終わってからで良いと言ったが、お兄様はいつ何処でまた邪魔が入るか解らないと言い張った為、早退の手続きをし、私達は教師に届けを出して午後から早退した。


 家に着くと、兄はまず落ち着けるようにとリビングまでお茶を淹れて持ってくるよう侍女に頼み、気を使った侍女がお茶菓子と共に紅茶を運んできた。兄がさっと目を通して毒物の混入がないかを確認する。


「話せる気分になるまで待つよ。話せそうなら話してくれれば良いよ、アリル」


「いえ…あの、お兄様は前世って信じておられますか?」


 少し顔を傾けながら、兄は答える。


「あると知っている人はある、ないと思ってる人にはなくていい。そう思っているね」


 私は少し胸を撫で下ろす。聞く余地はあるようだ。


「私には…前世の記憶があります、お兄様」


「なるほど…それであの画期的な発明の数々だったんだね」


 うんうん、と頷いて続きを促してくれるお兄様。優しい心使いにほっとしてお兄様に凭れかかる。


「此処とは違って、魔法なんてないし、代わりにカガクっていう技術が発達した世界で、…あの…・…55まで生きて、事故で死んだの」


「55か。そこまで積み重ねがあったから、あんなに確りした受け答えが小さい頃から出来たんだね。凄く助けられたよ」


 絶対に此処でドン引きされるだろうと思った部分まで、真面目な顔で私を正面から見つめながら兄は頷いた。思わず私の目に涙が浮かぶ。お兄様が大好きです…!


「料理の先生をしてたから…そっちの方面の知識だけはあって…」


「そっか。うちの領の為に頑張ってくれてありがとうな」


「…それで、私の前世居た世界にはゲームっていう娯楽があって…私はやった事がないんだけど、私の映像魔法みたいなもので美男子達を、ヒロインの女の子が恋愛して落としていくっていうゲームがあって、そのヒロインがレイニーアで、悪役が私らしいのです…そのゲームをレイニーアが前世ではやった事があるそうです」


「…は?アリルが悪役?」


 一瞬でお兄様の雰囲気が剣呑になる。


「で、お兄様はヒロインのレイニーアに惚れて恋人になる筈だったらしく…その事でレイニーアに絡まれてバグだ卑怯だと言われまして…」


「アレに惚れる!?有り得ない事だよアリル!何がどうなったらそうなるんだ!?」


「顔のいい男は大抵ヒロインに惚れるようなゲームの筈なので…、王子や生徒会員、風紀やお兄様なんかが該当すると思います」


 ぽかんとした顔の兄が暫くそのまま沈黙したかと思うと思いっきり吹き出した。


「他の面子は知らないけど、私と王子は完全にアウトじゃないか!そんな事信じられないし、単にそのゲームとやらが、私達の状況に似てただけじゃないのか?大体ヒロインって性格してないじゃないか」


 おかしそうに笑うお兄様は私の頭を撫でてくれる。


「多分…生徒会でやってる猫撫で声の気持ちの悪い声出してるやつがそのゲームのヒロインの真似なんだと思います」


「いや…あれも作り物臭くて凄く近寄りたくないと思ってたんだが…」


「多分中身が生粋のヒロインじゃなくて前世にゲームしただけの人が入ってるからじゃないかなと思います。本物のヒロインなのだったらきっと心から優しくて明るくて良い子なんだと思いますよ」


 暫くお兄様は眉根を寄せて目を閉じた。一頻り唸ってから目を開けて情けない顔になる。


「…レイニーアのインパクトが強すぎて全く想像出来ない…」


 ほっとしたのと、お兄様の反応で、思わず私も笑ってしまった。


「…お兄様、私が…気持ち悪くないですか?」


「どうして?私の可愛いアリルのままだよ?」


 ちょっとうるっとしてしまい、思わずお兄様に抱きつく。お兄様はしっかり抱き返してくれて、膝の上に私を抱き上げた。耳元と髪にキスをしてくれる。


「それだけ覚悟して打ち明けてくれたんだな。ありがとうアリル…」


 涙を吸い取るようにチュッと目元にキスをくれたあと、唇に――…


 その瞬間、パキン、と何かが砕ける感覚が私達を襲った。ぶわっと女神の姿が現れ、怒りの表情の上にこれ以上ない程の悔しい顔をして、最後に申し訳ない顔を私達に向けたと思ったら苦しそうに徐々に消えていく。


 それまで淡く光っていた結婚指輪が、光を喪い、ぼろぼろと崩れていく。


「お兄様…!」


「これは…!…誰かが私達の結婚の神の誓約を破った…?」


 女神様の様子からすると、普通の破られ方ではないようだ。――何があったのか。


 可能性があるとすれば。


「ゲーム、の中にそういうアイテムがあるのかも知れないですね――」


最強の盾が壊れてしまいましたね。どう対策すればいいのでしょうか。

読んで下さってありがとうございます!少しでも楽しく読んで頂けたならとても嬉しく思います(*´∇`*)もし良ければ、★をぽちっと押して下さると励みになります!

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