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間章
「遅いです……」
教室の端に座る少女は、その場所から微動さえせずに待機していた。
「…………」
先程の、自分を助けてくれた少年を思い出す。
颯爽と現れ、自らの危険さえ気にせず全力で助け出してくれた少年。
胸が苦しくなる。
ただこの苦しさには幸福が詰まっている、そんな気がしてしまう。
銃声が響いた。
何回も、何回も響く。
こうしてまた、私を助ける為に戦ってくれている。
また胸が苦しくなる。
こんな経験は、今までなかった。自分が自分の心を調べても原因が分からない。
だけど、悪い事ではない気がする。
鼓動の速さと、ほてった体。
風邪を引いた? 自分の額を触ってみると、確かに熱かった。
でもこんなに急に風邪を引くものだろうか。
風邪ではない、それだけは分かった。ではなんなのか? それが分からない。
考え込んでいると、教室の扉が開いた。
「ひゃうっ」
自分の驚いた悲鳴。
「だから定規でどう戦えって言うんだ」
「投げるんじゃない? えいって感じで」
「石でも投げた方が良い気がしてきた……」