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間章



 時刻、一時頃、昼休み。



 本来なら部室に行き、木坂と昼食しながら談笑しているはずだ。あの出来事が無ければ、だが。

 今朝からこの今まで、授業を真剣に聞けるほど、俺の心は広くはないわけで、一つの単語すら覚えていない。それでも平常心を保てたのは、俺の力量だろうと思う。


 現在の場所は屋上。


 サクラからの説明を受けるには、内容が内容だけにやはり人気の無い場所を選ぶ必要があり、基本的にC棟で過ごす生徒が多いせいかこういう場所は無人、まさにうってつけであった。

「いや、さっぱり分からない」

 自分自身の理解力が乏しいわけじゃないが、それなのにサクラの言う意味が分からない。

「だーかーらー。戦って勝ってポイント集めて、部費とかの割り当て決めたり順位を上にしたりするんだって!」

 これは、逆切れだろうか。

「いまだに信じられないんだが」

 俺はわざとらしく腕を組んで、聞く体勢をやってはいるが、底の浅い知識人には格好だけでもちろん意味はない。

「ってなんで信じてないの! なんで信じてないのに電波仮想に来てるの! なんでカレーライスにゆで卵を入れたら美味しいの?! ねぇ! なんでゆで卵入れたら美味しいの!!」

「好みの問題じゃないのか」

 ダメだ、もっと説明とぶれない発言ができる人を連れて来てほしい。

「取り敢えずテルユキ君に言いたいことがあります」

 無駄に、いや、無意味に真剣な顔をしているサクラ、仕方なく俺も真面目な顔をして聞くことにする。

「テルユキ君が、電波仮想に来たってことは今朝みたいに襲ってくる人もいるから気をつけなさい」

 どうやらこれは、本当のことだろう。気をつけなきゃいけない。

「だから武器を出そう!」

「どうやって」

「まずは電波仮想に行こう」

「どうやって」

「そうだ! ついでに敵を倒そうよ!」

「どうやって」

 むすっ、としたサクラにジョークと言いつつも、頬を膨らます不機嫌さは治りそうもない。

「じゃっ、私は先に行くからね」

 待てっ。

 と、俺の言葉を聞く前に、サクラは消えてしまった。サクラの立っていた空間が少しズレていたが、数秒で元通り。

 …………、やっぱり電波仮想は本当なのか。

 否応なしに現実許容範囲の広がる感覚を見せ付けられると、苦笑いしかないな。

 さて、どうしたもんか。

 電波仮想への行き方を教えてもらってない。

 どうやらサクラは一人で突っ走る性格のようだ。

「どうしろと……」

 俺の呟きは虚しい屋上へと、風が運んだ。

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