……もう、見てられなかった。
そして、翌朝も変わらず――いや、昨夜以上に私を気遣ってくれた。彼自身、相当に苦しいはずなのに……それでも、私のことを最優先に考えてくれて、努めて平静に振る舞って――
……だけど、流石に限界が来たみたい。昼下がり、警察署から帰って来た頃には……そのあどけなくも端整な顔に、うっすらと苦痛が滲み出ていて。
……うん、正確には限界寸前――文字通り、寸でのところでどうにか堪えているのだろう。――つまりは、ほんの僅かな切っ掛けで容易く崩れ落ちるところまできているということ。だから――
『――なので……今、どんな表情をなさっていても残念ながら知る由もないんですよね』
そう、彼の頭をぎゅっと抱き締め告げた。私のせいで彼はこんな有り様となったのに、矛盾も甚だしいことは百も承知だけれど……もう、見てられなかった。もう、堪えてほしくなかった。――もう、楽になってほしかった。
ほどなくして、プツリと糸が切れたように崩れ落ちる冬樹先輩。そんな彼の、部屋全体に響き渡る叫びを――もう、何年も堪えていたであろう慟哭を、ぎゅっと胸の詰まる想いで聞いていた。




