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……ただ、それだけのことなのに――
『…………』
暫し、呆然と見入る私。と言うか……そんな近くにいたんだ、あの人。灯台下暗しではないけど、近すぎて逆に気付かなかったのかも。
その後、画面に集中しつつも、その間幾度となく彼の方へと視線を向けてしまう私。……いや、集中出来てないなこれ。
ともあれ、その後も彼はじっと画面を凝視し、度々瞳を潤ませては涙を零していた。それはさながら、あの男の子の苦痛に呼応するように。
……もちろん、分かっている。彼は、ただ物語の一登場人物に対し心を痛めているだけ。本当に、ただそれだけのこと。なのに……気が付くと、私の瞳からも涙が溢れていたんだ。




