……うん、そうなんだよね。
『…………あっ』
ふと、ポツリと声が洩れる。とうやら、暫し思考に沈んでいたらしい。今となっても忌まわしい、もう何年も前の思考に。
ただ、それにしても――さっと周囲の観客達へ視線を向けるも、誰一人として主人公の男の子に共感を示している様子はない。どころか……苦痛の心中を吐露する彼に、被害妄想とでも言わんばかりに軽蔑のような視線を向けている人達も少なくない。
……まあ、そんなもんだよね。きっと、彼の状況なんて……少なくとも、一般的に見れば不幸でもなんでもないのだろうから。
それから場面は進み、浴室にて自傷行為を行う男の子。そんな痛ましい光景に、こちらの胸もズキリと痛み……それでいて、深い共感がすっと降りてくる。
……うん、そうなんだよね。パックリ裂けた割れ目から、腕を伝って滴り落ちる赤黒い雫を眺めている瞬間だけ……どうしてか、不思議と楽になれた。
再び、さっと周囲を見渡してみる。すると……やはりというか、その表情には痛ましさよりもむしろ嫌悪感がありありと滲み出ていて。まあ、恐らくはそれが普通の反応なのだろ――
「…………え?」
再度、ポツリと声が洩れる。何故なら――左側、私の二つ隣に座する端整な青年の目から、ポツリポツリと雫が頬を伝っているのが見えたから。




