責務
――その男の子には、お兄さんが一人いる。少し歳の離れた――生来、身体に障害を抱えたお兄さんが。
そのため、両親はお兄さんに掛かり切りで、弟さん――主人公の男の子のことは、ネグレクトとは言わないまでもほとんど放置に近い状態で。――それこそ、生まれた時から既に。
ただ、それだけならまだ……いや、良くはないのだけど……それだけなら、まだマシだったのかもしれない。だけど、事態はそれだけに留まらず――その両親は、お兄さんを懸命に支えるよう弟さんに告げた。申し訳なさも感謝もなく、まるで当然の責務の如く告げた。そんな光景を目の当たりにして、ふと私の脳裏に浮かんだのは――もう何年も前、母から告げられたあの言葉で。
『――ねえ、陶奈。貴女はお姉ちゃんと違って、何一つ不自由のない健康な身体で生まれてきたの。もしかすると、陶奈はそれが当たり前のことだと思っているのかもしれないけど――それは、本当に恵まれたことなの。分かる? 分かるわよね?
だから、恵まれた貴女はそうじゃない人――例えば、お姉ちゃんのような可哀想な人を支えてあげなきゃいけないの。それが、恵まれた人がなすべき当然の責務なんだから』




