私
その後、散らばったポップコーンを一緒に拾ってくれただけでなく、なんと自身のポップコーンとの交換を申し出てくれた。一つも散らばっていない、全く綺麗なままのポップコーンと。
とは言え、流石に申し訳ないと思い断ろうとしたのだけど……結局、交換してもらった。私自身、交換を望んだわけではなく……単に、言葉が出なかった。現在でこそ、ある程度改善されているとは思うけれど……当時は人に――とりわけ知らない人に対して、ほとんど声すら発せなかったから。
だけど、そんな私に気分を害した様子もなく朗らかな笑顔を浮かべる青年。その後、少し遠くから彼を呼ぶ男性二人の声が届く。きっと、一緒に来ていた友人達だろう。最後まで笑顔のまま私に手を振り去っていく彼の背中を、大きなポップコーンのカップを手にしたまま暫く呆然と見送っていた。
その後、ほどなくして上映開始――なのだけども、正直のところ途中までほぼ頭に入っていなかった。尤も、画面はずっと見つめていたし、内容も大方理解していたはずなのだけど……それでも、その間思考の大部分を占めていたのは――
だけど――次第に、内容が脳裏に沁みてくる。と言うのも、この物語の主人公――性別こそ違えど、その男の子はまさしく私そのものだったから。




