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……ほんと、酷い奴だよ。
「……その、冬樹先輩。こんなこと、何の慰めにもならないかと思いますが……それでも、何度でも言います。冬樹先輩は、何も、何一つとして悪くありません。だから、どうか……どうか、ご自分を責めないで頂けると嬉しいです」
「……陶奈、さん……」
俯く僕に、木洩れ日のように柔らかな声でそう告げてくれる陶奈さん。顔を上げると、声音に違わず柔らかな微笑を浮かべる彼女の姿が。
……ほんと、酷い奴だよ。……いや、今更ではあるけれど……ほんと、どうしようもなく酷い奴だよ――香椎冬樹という男は。同じ職場の――それも、僕に好意を打ち明けてくれた仲間がその尊い命を落としてしまったというのに……今、僕の心を最も苛んでいるのは――
「――っ!?」
刹那、プツリと思考が途切れる。何故なら――卒然、僕の頭が優しく包まれ胸の中へと抱かれたから。




