結末
「……どうか、そんなに気を止まないでください。冬樹先輩は、私のことを懸命に護ろうとしてくれた――それこそ、自身の身を挺してまで。それが、私にとってどれほど嬉しかったか……だから、どうかもう謝らないでください」
「……ですが……ですが、僕は……」
翌日、昼下がりのこと。
みっともなく謝意を告げる僕に、穏やかな微笑で優しく答える陶奈さん。そんな僕らがいるのは、彼女の部屋の中――つい先ほど、二人で事情聴取から戻って来たばかりで。
とは言え、あくまで任意――二人とも、何の罪にも問われていない。昨夜、刃物を突き出し猛進してきたフードの人物――早良有希さんの死に関して、何一つ罪に問われていない。
『…………え?』
昨夜の、帰り道のこと。
さっきの声、何処かで――そんな思考が過ったのも束の間、答え合わせをするかのように映ったその顔に驚愕の声を洩らす。何故なら……フードが外れ露になったその正体は、早良有希さん――同じ職場の仲間であり、いつも明るく人気の高いあの女子大生だったから。
『――――冬樹先輩!』
すると、止まった思考を打ち破るかのようにすぐ後方から声が届く。そして、声を上げる間もなく僕を押し退け早良さんの前へと出る陶奈さん。そして――
――――グサッ。
間一髪、早良さんの強襲を躱した陶奈さん。すると、勢い余ったのかそのまま前方へと体勢を崩す早良さん。そして……不幸にも、手にしていた刃物の切っ先が、倒れた彼女自身の喉元へと突き刺さり――彼女は、帰らぬ人となった。




