殺気
「――それにしても、皆さんが知ったらどんな反応するんでしょうね?」
「……へっ?」
「だから、私達のことですよ。今や、一つ屋根の下で愛を育んでいる私達のことを、職場の皆さんが知ったらどんな反応するかなって」
「……ああ、なるほど」
翌日、ほどなく21時に差し掛かる頃。
仄かな灯りが照らされる帰り道を、二人閑談を交わしつつ歩みを進めていく。……いや、なるほどとは言ったものの……うん、何とも答えづらい。
その後も、悪戯っぽい――あるいは、屈託ない笑顔で話し続ける陶奈さん。そして、そんな彼女の笑顔を崩さぬよう、僕も努めて明るく振る舞う。と言うのも――
「…………っ!!」
喉元まで到達した声を、どうにか押し留める。……いや、少し零れたかもしれないけど。
そして、原因は……まだ少し遠い、僕らの後方――以前のものすら、まるで比べ物にならない……もはや、殺気と呼んで差し支えないほどに凄絶たる憎悪の念が、僕らの後方から身震いするほどに伝わっていて。
「……っ!? ……冬樹先輩」
ふと、息を呑む音が――そして、ほどなくして安堵のような微笑を浮かべ僕を見つめる陶奈さん。卒然、僕が彼女の手をそっと掴んだから。そして、どちらからともなくゆっくりと指を絡ませる。……彼女は……陶奈さんだけは、何としても僕が――
「――――っ!! 陶奈さん、逃げて!!」




