懸念
「……ところで、藤島さん。その、大変申し上げづらいのですが……今件について、もう警察にはお伝えしていますか?」
「……へっ?」
それから、二時間ほど経て。
朝食の最中、隣へ腰掛ける藤島さんへ躊躇いつつもそう問い掛ける。尤も、円卓なので隣という表現が適切なのかどうかはさて措いて。
……正直、今の今までかなり迷った。果たして、僕の方から当件に直接触れるような発言をすべきなのかどうか。実際、藤島さん自身、初日の事情説明の時以外は殊更この件に言及していなかった。それも考慮すれば、少なくとも僕の方から口にするのは極力避けるべきだと考えていたし、今もそう思っている。
だけど……それでも、聞かずにはいられなかった。万が一にも、まだ警察に連絡していなかったら――そんな途方もない懸念が、ずっと頭から離れなかったから。
ちなみに、一応言い訳しておくと……別に、責務を放棄したいがためにこんなことを尋ねたわけじゃない。むしろ……彼女の返答に関わらず、全て解決するまで僕は責務を続けたいと本気で思っている。事情が事情なのだし、不謹慎との自覚はあるけど……それでも、少しでも藤島さんの力になれているなら本気に嬉しい――そう、心から思ってしまうから。
……だけど、僕風情がいくら意気込んだところで彼女の底知れぬ不安や恐怖が全て拭えるはずもないし……何より、例の人物が物理的に危害を加えてこようものなら、きっと僕なんかじゃ手に負えない。
もちろん、こんな僕でも藤島さんの盾になることは出来るし、僕自身望むところでもある。……だけど、当然ながらそれだけじゃ根本的解決には程遠い。そのためには、やはり警察に頼る他な――
「……えっと、それに関してなのですが――」
「…………えっ?」




