罪悪感
「……冬樹、先輩……私……」
「……藤島、さん……」
そう、ポツリと声を洩らす藤島さん。僕の胸に顔を埋めているため、その表情は窺い知れない。それでも――
「……先、輩……」
そんな呟きと共に、僕のシャツを掴む力がより強くなる。そして、それに呼応するようにいっそう身体の震えも――
……ここで、断るのはきっと容易い。流石に、それは駄目です――そう、一言伝えれば良いだけだから。
だけど……今、それをしたらどうなる? 今、ここで彼女を拒絶してしまえば……きっと、辛うじて保っていた精神が音を立て崩壊してしまう……誇張でも何でもなく、そんな直観が電流の如く駆け巡り――
「――っ!? ……ふふっ」
すると、息を呑むような微音の後、安堵のような声を洩らす藤島さん。そして、安堵を裏付けるように、身体の震えもピタリと収まっていて。今はすっかり暗闇に紛れた、鮮やかな栗色の髪をそっと撫でたから……だと思う。
「……冬樹、先輩……」
「……藤島さん」
その後、ほどなくして僕の胸から顔を離す藤島さん。そして、じっと上目遣いで再び僕を見つめた後、そっと瞼を閉じる。それが、いったい何を意味しているか……如何に経験皆無な僕といえど、流石に察せられないはずもなく。
暗闇の中にあっても、決して色褪せぬその美貌。そんな彼女を前に、沸々と湧き上がる罪悪感に蓋をして――そっと、唇を重ねた。




