不謹慎
『……その、ここ最近のことなのですが……その、誰かにつけられているみたいでして……』
数十分ほど前のこと。
スマホ越しにもひしひしと伝わる不安や恐怖を帯びた声音で、ゆっくりと言葉を紡ぐ藤島さん。実は、ここ最近――かれこれ一週間ほど前から、誰かにつけられている気がしていたとのこと。一週間……ということは、あの日も――舞い降る雪の中、二人でイルミネーションを眺め歩いていたあの日も既に――
……どうして、気付けなかった。あの無邪気な笑顔の裏に、底知れぬ不安や恐怖ををたった一人隠していたことに……どうして、気付けなかったんだ。あんなにもお世辞になって、凄く感謝もしてて……それなのに――
だが、今となっては手遅れ――いくら自分の愚かさを非難したところで、過ぎたものは変えられない。
――ならば、これからを変えていくしかない。こんな僕に出来ることなんて、所詮高が知れているのかもしれないけど……それでも、ほんの少しでも彼女の不安や恐怖を取り除けるよう努めるだけだ。
……ところで、役に立てて嬉しいなんてうっかり言っちゃったけど……うん、今更ながら凄く不謹慎だよね。




