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鎖 〜例え、どんなに歪な形でも〜  作者: 暦海


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41/96

リフレイン

「……あの、ほんとに大丈夫ですか? 冬樹ふゆき先輩」

「……へっ? あっ、はい大丈夫です! その……少し見入ってしまっただけなので。ご心配をお掛けしてしまい、申し訳ありません藤島ふじしまさん」

「……それなら良いのですが」


 それから、一時間ほど経て。

 茜色に染まる空の下、すぐ隣から心配そうに問い掛ける藤島さん。そして、そんな彼女に少し狼狽えつつ答える僕。……納得してくれただろうか。それなら良いんだけど。



『………せ……い、…樹先輩!』


『………………へっ?』

『……あの、大丈夫ですか?』

『……あっ、その……はい』


 10分ほど前のこと。

 劇場にて、霞んだ視界に映るはゆるりと揺れる小さな掌――その後、ほどなくして目を見開く藤島さんの表情が。……そっか、あの後僕は――


 ……あっ、寝てたわけじゃないんですよ? だとしたら、流石に見入ってしまったなんてバレバレの嘘は吐かないし……うん、誰に言い訳してるんだろうね。


「それにしても、冬樹先輩って意外と没入するタイプですよね。昔からそうだったんですか?」

「……へっ? あっ、えっと……」


 すると、先ほどとは一転、何とも悪戯っぽい笑顔で尋ねる藤島さん。……うーん、どうなのかなあ。でも、確かに昔から物語には結構のめり込んで――


「……あの、藤島さん?」

「……へっ? あっ、いえ……」


 ふと、思考を切り問い掛ける。いや、別段何を聞こうとしたわけでもないけれど……ただ、まるで何かを期待するように、彼女が僕の方をじっと見つめていたから。


 だけど、暫し熟考を試みたものの結局自分でもよく分からず、申し訳なくも曖昧な答えを返すだけの僕。

 それから話題はなしは変わり、さっきの映画の感想に……いや、変わってもいないか。ともあれ、閑談に花を咲かせつつ残り数十分ほどの家路を歩いていく。


 だけど……そんな楽しい時間の間もずっと、僕の脳裏にはある言葉――さっきの映画にて、一人の男子生徒が放ったある言葉が幾度もリフレインされていて――



『――――人殺し』

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