違和感?
「……あの、冬樹さん。どうかしましたか?」
「…………へっ? あっ、すみません早良さん!」
「……あっ、いえ謝る必要はないんですけど……ただ、何だか冬樹らしくないなぁって。私の記憶が確かなら、冬樹さんがそんなふうにぼおっとしている姿は見たことがなかったので」
「……そう、ですか……?」
翌日、宵の頃。
勤務中、カウンターにて隣から声が届きハッと我に返る。……しまった、つい思考に沈んで。でも、僕ってそんなにぼおっとしたこと無かったっけ……いや、単に知らないだけか。そもそも、多少なりとも見られていると感じ始めたのがごく最近なわけだし。
ともあれ、何の思考に沈んでいたのかというと――言わずもがなかもしれないけど、昨日の藤島さんの件だ。
『……どうか、何処にも行かないで……先輩』
そう、常ならぬ震えた声で告げた藤島さん。……いったい、どういうことだろう。何処かに引っ越すなんて話はしたことないし、もちろんそんな予定もない。とりわけ、この土地に愛着があるわけでもないけれど……だからといって、逃げたいほどの不満もなければ何処か行きたい場所があるわけでもない。……それに、ここには――
……いや、止そう。正直、いくら僕一人が頭を悩ませたところで答えなんて見つかるはずもないだろうし。いつか、彼女自身が話したいと思う日が来れば、その時は――
……ところで、何と言うか……さっきから、何とも言えない違和感のようなものがあったり。……でもまあ、きっと大したことじゃな――
「――っ!? 冬樹さん! 手! 手!」
「……へっ? 手がどう……っ!!」
直後、僕史上最大とも言える叫びが店内に谺した。




