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異質な後輩?

「――本日もお疲れ様です、冬樹ふゆき先輩! 是非、熱々のコーヒーをどうぞ!」

「えっと……すっごく冷めてますよね、これ。……ですが、ありがとうございます藤島ふじしまさん」

「いえいえ、お気になさらず! 30分ほど前、お客さんが注文したんですけど、やっぱりオレンジジュースが良いとのことで。ですが、このまま廃棄になるとも忍びないと思い、是非先輩にと」

「……なるほど」


 勤務後、休憩室にて。

 そう、すっかり冷めた薄茶色の紙コップを差し出し告げるミディア厶ショートの女の子。彼女は藤島ふじしま陶奈とうなさん――僕の三つ歳下の大学生で、僕なんかにもこうして眩いばかりの笑顔を見せてくれる、ある意味僕以上に異質な存在だ。……うん、流石に失礼かな?


 ともあれ、折角なので差し出されたカップを有り難く受け取る僕。まあ、会社のルールに則ると、ほんとは廃棄しなきゃ駄目なんだろうけど……うん、まあ良いよね? ほら、昨今はフードロス問題が声高に叫ばれているわけだし、廃棄なんて以ての外……うん、誰に言い訳してるんだろうね。


 それから数十分ほど、他愛もない閑談を交わす僕ら。藤島さんが積極的に会話をリードしてくれるお陰で、コミュ障の僕なんかでもどうにか会話が成立する。だけど……そんな素敵な技術スキルや労力を、こんな僕なんかのために割いて頂くのは大変申し訳ない。なので、事あるごとに先に切り上げようとするのだが――


「――えぇ、もっとお話ししましょうよ冬樹先輩!」


 そう、僕の腕をぐっと掴み引き留める藤島さん。……うん、こう言っては大変失礼だとは思うのだけど……ほんと、僕なんかと話して何が楽しいのだろう。



 すっかり夜も深くなった、午後11時30頃。


 帰宅後、洗面所にて鏡に映る顔をぼんやり眺める。いつもながら、何とも生気のない自身の顔を。よくもまあ、こんな有り様で接客業が務まるものだと我ながら呆れ返る。


 そして、さっと顔を洗った後ポツリと呟く。さながら、鏡に潜む自分に言い聞かすように。


「……なんで、まだ生きてるんだろう」



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