自分のため?
……ところで、それはそれとして。
「……あの、藤島さん。その、もし宜しければですが……こちらを……」
「…………へっ?」
不意に告げた僕の言葉――と言うより、恐らくは僕の行動にポカンと目を丸くする藤島さん。つい先ほども見たような表情だけど……心做しか、今回は――
「……その、ですがこれは……」
「あっ、すみません! やっぱり、嫌ですよね……僕の着ていたコートなんて」
「いや違う! ……あっ、すみませんつい。……その、そうではなく、すっごく嬉しいんですけど……その、これだと冬樹先輩が身体を……」
「……ああ、そういうことですか」
我ながら何とも自虐的な言葉に対し、今までに覚えがないくらいの強い口調で否定を述べる藤島さん。そんな彼女の様子から、本心で言ってくれていることがひしひしと伝わって……うん、なんかホッとした。
「……その、冬樹先輩が良いのなら、ご厚意に甘えますが……ほんとに良いのですか?」
「はい、もちろんです藤島さん。それに……本音を言えば、貴女のためと言うより自分のためだと思うので」
「……?」
ともあれ、少し躊躇いがちに尋ねる藤島さんに対し、こちらも少し逡巡しつつ答える。そして、そんな僕の返答にキョトンと首を傾げる藤島さん。……とは言え、流石に口にするのは憚られるわけでして。
と言うのも……ごく短時間ではあったものの、ここに来るまでに中々の激しい雨に打たれていたわけで……なので、その……目の遣り場に困――
「……あの、冬樹――」
「――あっ、あの今日は凄く楽しかったですね!」
「……へっ? あっ、はい……」
そんな僕の様子に異変を感じたのか、再び少し躊躇いがちに問い掛けようとする彼女の言葉を遮る形で言い放つ僕。そして、当然ながらポカンとした様子の藤島さん……うん、ごめんね? ……ただ、少なくとも僕の方では嘘というわけでもなく――
「……その、本当に怖かった人もいるでしょうし、こんなことを言うと不謹慎かとは思うのですが……ジェットコースターが突如停止するという緊急事態に陥ったあの時が、実は本日一番楽しくて……」
「あっ、実は私もです! 事が事だけに、流石に言いづらいなあとは思ってたんですけど……よもや、先輩も同じことを思ってくれていたとは……本当に嬉しいです!」
「……そう、だったのですね」
そう、逡巡を覚えつつ伝えると、パッと瞳を輝かせ同意を示す藤島さん。何とも予想外な……いや、そうでもないかな。だって……実際、凄く楽しそうだったし。あの時の藤島さん。




