疫病神?
「……あの、すみません冬樹先輩。まさか、こんな散々な日になろうとは」
「あっ、いえ滅相もありません! そもそも、藤島さんが悪いわけではないですし!」
住宅街にひっそりと佇む、小さな公園のベンチにて。
そう、顔を俯かせて謝意を告げる藤島さんに少し慌てて答える僕。いや、本当に彼女が悪いわけじゃないし。
ところで、いったい彼女が何について謝罪しているのかというと……その、あのジェットコースターの停止トラブル以降も……まあ、色々とありまして。
さて、具体的なお話を少々――あの後、昼食は軽く屋台で済まそうという話になり一時間ほど並んでは、丁度僕らの前で売り切れ。急流すべりの列に並んでは、少し前のお客さんが中々に壮絶な喧嘩を始めアトラクションは一時中断。その後も大小様々なトラブルがあった後、挙句の果てに天気予報になかったはずの篠突く雨に一時避難――そして、今こうして木組みの屋根の下にいるわけで。、……うん、僕って疫病神かな?
……まあ、それはともあれ――
「…………ふふっ、はははっ」
「…………冬樹先輩?」
すると、大きく目を見開き僕の名を呟く藤島さん。まあ、そうなるよね。全く以て何の脈絡もなく、突如笑い出したのだから。我ながらほんとに気持ち悪い。……だけど――
「……いえ、すみません藤島さん。ですが……なんだか可笑しくって。たった一日――いえ、たった数時間でこんなにトラブルがって思うと……なんだか、ある意味凄く貴重な経験をしちゃったなって」
そう、未だ笑いを抑えられず告げる。彼女にとってはほんと散々な一日だっただろうし、僕のこんな態度はいっそう不快にさせてしまうかもしれないけど……それでも、なんか楽しくって――
「……ふふっ、なんですかそれ。でも……ありがとうございます、冬樹先輩」
すると、可笑しそうに微笑みそう口にする藤島さん。そんな予想外の反応に驚きつつも、ホッと安堵を覚える僕。尤も、感謝をしてもらえることなど何もしていないのだけど……まあ、今それを言うのは流石に野暮というものだろう。




