16 一体感
あれからも呑気にやっております。
イオちゃん『転移』でアチコチ飛びまわるだけじゃなく、
たまに町の周辺の狩り場を幌馬車で回ってみたり。
もちろん、あの長旅での相棒の幌馬車ですよ。
うちのガレージ的な小屋に、ちょこんと置いております。
ただ、時々しか乗らないので、お馬さんの方は手放しちゃいました。
あのお馬さんは、今は町の共同牧場での暮らしを満喫中。
長旅の相棒が、共同牧場でのんびりしているところを見ていると、
なんだか、にゃんこカフェを思い出しちゃいますね。
お世話はお任せだけど、こっちのペースで触れ合えます、みたいな。
お馬さん仲間と一緒で幸せそうですし、こういうのもアリですよね。
生き物のお世話って、大変なんですよ、本当に。
「イオさんも、コレのお世話、毎日大変だよね」
何をおっしゃいますやら、メリシェラちゃん。
イオちゃんは、俺のことを死ぬまで面倒見るって誓ってくれたんだから。
俺も死ぬまでお世話されたいって誓ったし。
「まさに夫婦」
「私にはマネできないな」
メリシェラちゃんがそうしたいって思える日が来るまで、のんびり待てばいいよ。
成長速度は人それぞれだし。
「なんか上から目線でムカつく」
「ってか成長速度ってなんだよ」
いや、心の成長ですよ。
身体だなんてひと言も言ってないし。
「……ムカつく」
そういう心のざらつきを癒してくれるのも人生のパートナーなのです。
運命の人との出会いって、本当に素晴らしいものなのですよ。
「ちょっとイオさん」
「お宅のダンナ、なんか変なモノでも食べたんじゃないの」
「様子、おかしくない?」
「これが頑張った殿方に訪れるという賢者モード、かも」
「まあ、ほっといたらそのうち元に戻る、かも」
なんだか言いたい放題だね。
まあ、最近の俺、結構いろいろ頑張ってるし、
男としても成長してるよね。
あと、ゆったり紳士している男がみんな賢者モードってわけではありませんよ、イオちゃん。
ってか、いいよね、牧場。
お馬さんもお世話している人も、楽しみながらのんびりしてるって感じ。
リシェイナちゃんだっけ、この牧場のひとり娘さん。
お馬さんに乗ってイキイキお仕事してるよね。
「本当、楽しそうに馬を操ってるよね」
「ちょっと羨ましいかな、まさに人馬一体って感じがしてさ」
ホントだよね、お馬さんの動きに合わせて、イイ感じにリズミカルに揺れるんだよね。
いつまでも見ていたいよね、アレ。
「ちょっと、イオさん」
「賢者モードとやらは5分と持たなかったよ」
「煩悩丸出しだよ、お宅のダンナ」
「それでこそアマツさん」
「そして私はリシェイナさんルートを全力で解析中」
「本当、息ぴったしの夫婦……」




